2020-01-01から1年間の記事一覧

2020年ベスト姉ヒロイン大賞

少なくとも 姉は何かを失敗したことはなかったはずだ ――ゴブリンスレイヤー 前年に引き続き、本大賞アンバサダーを務めるゴブリンスレイヤーさん ベスト姉ヒロイン大賞とは、その年1月1日~12月31日までに発表されたアニメ作品(劇場作品も含む)のうち、姉…

【2021/1/14追記】あの森へ向かうために 彼岸泥棒a.k.a.見富拓哉(不)完全レヴュー

【追記】(2021/1/14) 昨年末にこの記事を公開した際、レヴューのできなかった作品について「情報求ム」となかば祈るような思いで書き残したのですが、このたび、とある心優しい方の目に留まりまして(!)、未確認作品について多くの情報(書誌情報のなか…

ミステリ系100冊リストをめぐる冒険

ミステリーのベスト表作りが楽しかったのは、せいぜい二十代の半ばくらいまでだ。その頃までは私的なリスト作りが、自分のミステリー観を他人に伝えるための、有効な表現手段になりうると信じていた。 ――法月綸太郎「ミステリー通になるための100冊(海外編…

2020年全般に聴いていた曲リスト(摂取記録:音楽編)

11月に入ってアマゾンミュージックがアップデートされて「最近マイミュージックに追加した楽曲」一覧がUIから削除されたのでプレイリストをつくって生活していない自分は絶望していたのですが、最近になってマイミュージック→フィルタ→並べ替え:追加した日…

『記憶SFアンソロジー:ハロー、レミニセンス』について

芥見下々『呪術廻戦』第106話より ・そんなSFアンソロジーは2020年11月現在、存在しない。 ・最近読んだ門田光宏『記憶翻訳者 いつか光になる』(創元SF文庫)がウェルメイドな記憶テーマのSFだった。ほかに記憶SFは存在するのか。たぶんある。 ・あらゆる読…

あなたの知らない(百合)について 島本理生「七緒のために」

中学生の私が放課後の美術室で絵の具のパレットを洗っていると、喧嘩中で口をきいていない友人が横にすっと立っている。彼女は黒々とした瞳でこちらをうかがいながら、折りたたまれたルーズリーフを渡してくる。それは開いてみると手紙で、なぜか上半分が切…

あなたの知らない(百合)について 村松真理「ソースタインの台所」

幻になってしまうかもしれない百合小説を紹介する。 けれども、これをただの百合小説として紹介するのには、ためらいがある。 村松真理「ソースタインの台所」は『文學界』2006年8月号に掲載された作品で、だからジャンルとしては純文学ということになる。た…

言語SF「グラス・ファサード」創作メモ

昨年、第三象限というサークルで頒布した同人誌『あたらしいサハリンの静止点』が先日、Amazon Kindleで配信開始されました。 あたらしいサハリンの静止点 (第三象限) 作者:織戸久貴,谷林守,千葉集 発売日: 2020/08/24 メディア: Kindle版 ありがたいことに…

凪のあすからを誤読するまとめ

「凪のあすからを誤読する」という全話レビューブログのまとめです。以下リンク。各話ネタバレがあります。ちゃんと見た人だけが見てね。約束。 saitonaname.hatenablog.com saitonaname.hatenablog.com saitonaname.hatenablog.com saitonaname.hatenablog.…

凪のあすからを誤読する19(25~26話)

残すところ2話となりました。思えば遠くへ来たものです。もうここまでくれば筆者はただの台詞を機械的に引用するパーソンになるしかないのですが*1、気を緩めずやってやりましょう。ついに感動のフィナーレだ! 第25話 好きは、海と似ている。 おふねひき前…

凪のあすからを誤読する18(24話)

前々回に引き続き前回も最高のエモが抽出されましたね。しかしそれも越えていくのが『凪のあすから』です。まだまだ展開は広がるぞ。今回もちさきの感情が早々に限界になり、彼女が限界になればむろん彼もダメージを受けます。では気合いを入れてやってやり…

凪のあすからを誤読する17(23話)

前回最高のエモが抽出されて呆然状態になってしまったかと思いますが、ついにここからは岡田脚本。本気でやってやらないと命を落とします。致死量のエモが襲ってきます。やってやりましょう。 第23話 この気持ちは誰のもの 汐留家の庭。晃と遊ぶまなかを見つ…

凪のあすからを誤読する16(21~22話)

前回は美海の感情を成長させた回で、その結果(?)ついにまなかにも変化が。そろそろ終わりまでのカウントダウンが入るところですが、まだまだ話は広がります。やってやりましょう。 第21話 水底よりの使い 前回の「キスして」から続きです。「ひーくん! …

凪のあすからを誤読する15(20話)

久々の単話更新です。前回はちさきの感情にフォーカスした回ですが、今回は美海です。彼女もまた複雑な感情を抱いています。やってやりましょう。 第20話 ねむりひめ 汐留家。まなかが戻ってきて一週間。まだ目覚めないままオープニングです。 放課後。ノー…

凪のあすからを誤読する14(18~19話)

ここにきて新展開、というほどではありませんが着実に話は進んでいる『凪のあすから』です。しかしキャラクターの配置や矢印の整理はまだ終わっていません。話はさらに広がっていきます。やってやりましょう。 第18話 シオシシオ 海に降り立った光、要、美海…

凪のあすからを誤読する13(16~17話)

なかなか複雑な展開を見せている『凪のあすから』ですがまだあと10話もあります。着実に、油断せずやってやりましょう。今回からまた岡田脚本ではなくなります。だからといって気の抜けないのがこのアニメです。よそ見していると刃物で刺されます。 第16話 …

凪のあすからを誤読する12(15話)

前回の衝撃的な語りのマジックからつづいて、今回は展開編ともいえる話です。 引き続き岡田脚本。やってやりましょう。 第15話 笑顔の守り人 ちさき。時計を見ると夜の11時。前話の巴日が8時ごろという言及がありましたから、かなりの時間が経っています。…

凪のあすからを誤読する11(14話)

やってきました、第2部です。第2部? 見た人はもうわかりますよね。というわけでやってやりましょう。後編スタートの14話です。岡田脚本。 第14話 約束の日 雪を踏みしめる足音。見たことあるような、けれど違う顔。ちさきです。坂から振り返り、海を見ま…

凪のあすからを誤読する10(12~13話)

謎の全話レビューブログも2桁の大台に入りました。このペースで続けていければいいですね。5月中の完走ができたらうれしいです。今回もやってやりましょう。12話は久々の岡田麿里脚本回です。13話はちょうど半分です。 第12話 優しくなりたい 美海のアップ…

凪のあすからを誤読する9(11話)

一日開けただけなのに不思議と長い時間が経ったように感じますね*1。この記事を毎回追って読んでいる人間がいるのかわかりませんが引き続きやっていきます。やってやりましょう。 第11話 変わりゆくとき というわけで今回も告白でオープニングです。髪をまと…

凪のあすからを誤読する8(10話)

前回いたたまれなくなりましたが(毎回そうなっていませんか)、今回もやっていきましょう。ついに話数が2桁に突入しました。といってもまだ半分も行ってませんが……。 第10話 ぬくみ雪ふるふる 前回のいたたまれないシーンから巻き戻してスタートです。開幕…

凪のあすからを誤読する7(9話)

というわけで続きです。今回も例にもれずいたたれなさがやってきます。これぞ『凪のあすから』です。やっていきましょう。 第9話 知らないぬくもり 前回のぬくみ雪が積もった地上。あかりと光は引き続き至の家で暮らしています。「地上に降ったりするんだな…

凪のあすからを誤読する6(7~8話)

というわけで続きです。 第7話 おふねひきゆれて おじょしさまが完成しました。オープニングです。 アイスをおごりたがる先生。「つーか先生、今日はアイスさみーよ、プールも中止になったんだぜ」前回に続いて寒さに関する発言が出ています。 「おふねひき…

凪のあすからを誤読する5(6話)

前回感動のフィナーレを迎えたような気がしましたが、物語は続きます。今回は輪をかけてつらいエピソードが盛りだくさんです。めげずにやっていきましょう。最後には感動が待っています。 第6話 巴日のむこう 縫い物をしているまなか。水着です。海村の人間…

凪のあすからを誤読する4(5話)

まだ5分の1にも到達してませんが続きです。今回は岡田脚本の台詞回しパワーが遺憾なく発揮される第一の盛り上がりでもあります。むろんパワーだけでなくテクニックもちゃんとあるのが見えてきます。盛り上げていきましょう。 第5話 あのねウミウシ 朝。台…

凪のあすからを誤読する3(4話)

本日2回目の更新。気合い入れていきましょう。 第4話 友達なんだから 前回衝撃の事実が明らかになってからの4話です。小学生たちの名前は美海(みうな)にさゆ。協力体制になるかと思いきや姉のことを思い出し、「美海みてーな卑怯なやり口は嫌いだ」と去…

凪のあすからを誤読する2(2~3話)

というわけで続きです。やっていきましょう。 第2話 ひやっこい薄膜 朝。呪いが解けたまなか。魚は「またね」と外へ去っていく。そしてうろこ様のもとに行き、「呪い、ますか?」と問いかけます。彼女の膝にはまだタオルが。 OP開けて教室。紡は呪いが解け…

凪のあすからを誤読する1(1話)

【注意!】このアニメには思春期の中学生のいたたまれなさが大量に含まれています! 心臓の悪い方、心の弱い方、感情の矢印が重ならないことに果てのない悲しみを覚える方は気をつけてください! というわけで本編です。知り合いにとりあえず4話まで見せたと…

凪のあすからを誤読する0(準備編)

担当作品のすべてを見たわけではありませんが、岡田麿里脚本にはなんとなく一長一短のある気がしていて、たとえば思春期の少年少女たちと性的なモチーフを執拗にくっつけようとする傾向は、面白さよりもむしろ執念めいたなにかを感じとるときがあり、素直に…

『さあ今から未来について話そう』についてのメモ

SF作家 瀬名秀明が説く! さあ今から未来についてはなそう 作者:瀬名 秀明 発売日: 2012/10/05 メディア: 単行本(ソフトカバー) 2012年に出版された本で、先日『ポロック生命体』が出たのに合わせて読んだ。帯文には「SFはどのように未来を想像してきたか…