上の記事のつづきです。
1月13日のコミックシティ大阪118でノベルゲーム(ジャンル的には学園ものギャルゲー)を頒布します。
タイトルは『夕日が海に沈むまで』
サークル名は〈留年ソフト〉です(サークル構成員が全員留年経験者なので)。
スペース番号は〈6号館A も46b〉です。
パッケージは以下の通り。
わたしは、劇中BGMを担当しました(「ななめの」名義になります)。
つきましては開発中のスクリーンショットと劇中の使用楽曲を併記して、セルフライナーノーツ(および開発日記)的なものをやっていきたいと思います。なぜかというと水月陵センセーが担当したゲームだと音楽鑑賞モードで作曲の経緯が載っていることがあって、それが好きなんですよね。だからわたしもやろうと思いました。
※要はコンポーザーの目線からゲーム本編の雰囲気をさらっていく感じです。
メインヒロイン①:城ヶ崎マリー
ゲームのヒロインはふたり。そのうち片方(パッケージヒロイン)が城ヶ崎マリーというキャラクター。主人公の水木純也とはクラスメイトという関係になります。
とはいえ彼女の言動は妙に天然で、それゆえか、ほかのクラスメイトたちとのあいだに微妙な壁をつくっています。純也はひょんなことからマリーと出会い、彼女が「ふつうの女の子」として周囲に馴染めるよう手伝ったり、勉強の面倒を見るようになります。
いわゆる発注的には、不思議系・天然系ヒロインということで、ギャルゲーとしては一時期流行ったタイプですね。味覚がどこか狂っているのも伝統。ですのでわざとテンポや音をはずすような曲を中心につくりました。存在がギャグ担当に近い部分もあり、主人公とのズレた掛け合いが多く、そこが見どころになると思います。
マリー用につくられた曲はなぜか多くて、これなんかもそうです。一部のメロディは『リトルバスターズ!』の名曲、「えきぞちっく・といぼっくす」(能美クドリャフカさんのテーマ)からインスパイアされたものですね。だいぶ変えてますが。こういう引用も楽しんでプレイしていただけたらうれしいです。ほかにも沢山インスパイアされてる曲はあるので。
メインヒロイン②:水木夕
もうひとりのメインヒロインは水木夕。主人公・水木純也の姉にあたります。生徒会長。美人。そして姉。姉です。出来る姉。パーフェクト姉。過保護姉。
こちらのルートでは純也は急遽、生徒会の庶務として、忙しい姉のサポ-ト(要は学園祭の準備やその他もろもろの雑務)を請け負うようになります。当初は行く先々で「生徒会長の弟」として認知されていますが、持ち前の知識と推理力で目の前にあらわれる難問を解決していきます。ストーリーはマリーのルートにあったコミカルな雰囲気から一変し、ミステリ風味になります。
発注としてはとりあえず「姉っぽさを出せ」といわれた記憶があります(姉っぽい曲とは?)。彼女の場合、生徒会長という役柄が設定にあったので、規律ある雰囲気をピアノの高音部のメロディで出しつつ、その裏で鉄琴を鳴らし、見えない部分でちょっと背伸びしているイメージを意識しました。
生徒会のメンバーたち
生徒会に関わることで、純也はほかの生徒会メンバーたちと行動をともにするようになります。彼が生徒会に入ってまず起きたのは、文化祭における美術部の展示物のタイトルがなぜか空欄のままで、パンフレットが作成できないという問題。
スクリーンショットに映っているのはその生徒会メンバー。朝比奈日向(画面左)と草薙拓哉(画面右)。終始口の悪い女子と終始言動がチャラい男子のコンビ。なんだかんだバランスがいい印象があります。放課後、主人公を含めた三人で問題の元凶である美術部員の家を訪ねることになります。
生徒会に関して、特にテ-マなどの発注はありませんでした。とりあえずミステリの捜査パートとしても放課後の一幕としても使える曲が欲しかったので、つくった記憶があります。使用楽曲のなかでは、おそらくいちばん最初に完成した曲です。ギターの音を刻むように出すことで一歩一歩足を前に進めていくイメージ。
冒頭に学校のチャイムのようなメロディが入るのは『キミキス』の二見瑛理子さんのテーマがそのような導入だったから以外の理由はないです。
美術部のエース:沢村ゆい
タイトルを提出しない問題の人物、美術部の沢村ゆいです。キーパーソンではありますが、その真意を簡単には教えてくれないため、純也たちは右往左往することになります。その詳細はゲーム本編をプレイしていただければと思います。
「沢村のテーマ」の作成にはかなり手間どった憶えがあります。キャラクター自身の根っこにある部分は幼く可愛げのある印象なのですが、彼女に関するストーリーは後半部に進んでからでないと明かされないため、そのすべてを出すというわけにもいかず……といった感じで。ローファイな音色のキーボードと後半に鳴る鉄琴が彼女本来の子供っぽい気質をあらわしているイメージです。といっても劇中で流れる回数は片手の指の数よりも少ないんですが……。ほかの場面でも流してもらえるようスクリプターとディレクターに頼んでみます。
推理パートに流れる楽曲たち
推理パートに流れる曲は発注がないものについてはそれなりにこだわっています(なぜならフリー音源にミステリ用の楽曲はほとんどないので)。
比較的ある時期までミステリの劇中に流れる曲といえば『かまいたちの夜』っぽく高く短い音がメロディアスに鳴っているイメージでしたね。ドラマ『TRICK』のテーマとかはまさにその典型でしょう。ネットに転がっているフリー音源にもその影響下にあるものは割に多いと思います。
ピチカート(ヴァイオリンの弦をはじく奏法)は音でコミカルな表情をつくりやすいので、日常系アニメなどにもよく使われている印象があります。『けいおん!』の次回予告に流れる曲(「Have some tea?」)とか(ポンッポンッと跳ねるように聞こえてくるのがそれです)。「聞き取り~」はピアノとピチカ-トで音のブロックをつくり、一歩ずつ証拠を積み重ねていくイメージにしています。
いっぽう「すいすい~」は冴えたひとことを突きつける感じです。『逆転裁判』シリーズほど情熱的ではありませんが。ちょうどこれをつくろうと思ったときにfox capture plan『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない Original Soundtrack』収録の「忍者ごっこ」(かえでのテーマ曲?)を聴いてたので、そのリズムが元になっています。さすがはお兄ちゃん、ブタ野郎だね。
演劇部員たち:橘と七瀬
美術部の事件をなんとか片づけたのち、純也は生徒会と演劇部が文化祭でおこなう劇にも(なかば強制的に)参加するはめに。当然、演劇部の面々とも顔を合わせることになるわけで、そこにいる人々とも接するようになります。
キーパーソンは生徒会と演劇部を兼任する橘京香(画面上)とその演劇部の後輩にあたり、橘に憧れる七瀬奈々子(画面下)。純也はふだんから推理小説を読むこともあり、脚本家志望の七瀬の書いた作品を読んで感想を求められる一幕も。そんな演劇部と生徒会合同による練習が佳境に近づくにつれ、彼女たちのあいだに隠された確執を垣間見ることになります。
そして本番直前には大きなトラブルが発生。純也は今回もその解決にいそしむことに。
「七瀬のテーマ」はだれよりもヒロインらしいテーマ曲になっているのでは、と思います(メインヒロインではありませんが)。
わたしがコンポーザーをやるにあたって、やっぱりキャラひとりに一曲ずつテーマが(ギャルゲーの伝統的に)ほしいなと思うわけで、作中キャラのなかでも優しい性格を設定されているのが七瀬以外にいなかったため、柔らかいメロディラインをここぞとばかりに出しています。
作中でも言及されますが、七瀬と朝比奈は仲が良い設定です。「朝比奈のテーマ」は押しの強いその性格に加え、女の子らしさも出そうということで木管楽器を使っています(勝手な偏見)。七瀬のほうにも木管が入っていますね。あと橘のテーマもつくりたかったんですが、忘れました。
ただ、演劇の練習中に流れる曲(「課課題題」)は橘をイメージしています。力強い声(ヤジ)が舞台に向かって飛んでくるイメージ。
メインテーマ
最後に、タイトル画面で流れる曲です。ストーリーについては今回頒布する本編(文化祭まで)だけでなく、その後の話などもライターから聞いていたので、それを加味してつくっています。テーマは姉弟のあいだにある見えない思い、絆ですね。確固たるものではなく、空気みたいな、触れることのできないもののような。
タイトル用に流す曲は数パターンつくっていて、意図したわけではないんですが、なんとなく心地よいメロディを拾っていったら全音階(全・全・半・全・全・全・半)を逆に下っていくようなコードになったこの曲が採用されました。作曲や理論についてはまったくの素人なのでよくわかっていないんですが、すとんと腑に落ちていく感じがありますね。つくるときもそこまで悩まなかった記憶があります。
ほかにもゲーム内では、タイトル曲をアレンジしたものや、おなじメロディを曲によってちがったアプローチで反復させているものがありますので、実際にゲームをプレイしながら「おっこれはさっきの曲のアレンジだな」などと思っていただければ幸いです。
おまけ
デバッグ中の風景です(キャラクターに浮遊能力はありません)。
それでは1月13日(日)、インテックス大阪でお会いできればと思います。