アニメ上の人間関係についての簡単な調査(2010年代アニメベスト語ろうのコーナー)

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でも大丈夫さ

誰も壊せないものがここに一つだけ

置いてあるから

          ――TRICERATOPS「2020」

 

2010年:『アマガミSS

 といっても最初はちゃんと、ぼくたちがほんとうに求めていたものはなんだったのかを考えなくちゃいけないだろうね。それは『けいおん!!』だったろうか。ほんとうに? あのころからずっと、ぼくたちは永遠が欲しかった。けれどそこに至るためには『たまこまーけっと』(2013)から『たまこラブストーリー』(2014)を経由しなければいけなかったはずだ。そう、だから2010年はまだそのときではなかったんだ。

STAR DRIVER 輝きのタクト』のマリノ/シズノ回は永遠にかなり近かったと思う。だって買ってきたアイスの味を見ずにあてるシーンからもう最高だったんだから。そんなミズノの初恋。そしてマリノの初恋。すべてが姉妹のあいだでつながっていると気づいたあの瞬間のうつくしさ。そしてもちろん、最後の船のシーンさ。正直これ以上はもう話したくないな。けれど人生という旅は続く。それが作品のメッセージでもあったし、あのころのぼくたちは黙ってそれにうなずくことしかできなかったんだ。

 だからその点において、『アマガミSS』はなにもかも完璧だった。なぜなら永遠が6+1つもあったんだからね。それこそぼくたちが欲しかったものだ。きみは森島はるかの後輩だったし、棚町薫の悪友でもありながら、中田紗江の友達のお兄さんでもあった。七咲逢の先輩だったし、桜井梨穂子の幼馴染でもあり、絢辻詞とおなじ委員を務めてもいたんだ。だれがそこに永遠なんてなかったといえるんだろう?

 

2011年:『UNーGO』

 『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』について語ることは避けられないと思うけれど「secret base~君がくれたもの~」という絨毯爆撃をしたことはやっぱり倫理的によくなかったと思うな。あれは永遠じゃない、ゼロ年代だよ。岡田麿里についてはどこかで真面目に話してみたいところだけれど、でもやっぱりあれはよくなかったと思う。唯一よかったと思うのは、めんまにつられて「おかえり」をじんたんが口にしてしまうシーンかな。あそこははとても人間的だった。

 とはいえ、Galileo Galileiというバンドがゼロ年代の邦楽ロックからドリームポップを経由してUS/UKの表現を吸収していったことのほうがずっと大事だよ。BBHFは素晴らしいバンドだし、新作アルバムの『Family』における視点の成熟についてもっと語るべきじゃないかい? えっ、さっさとアニメの話をしろ? そうだね。謝るよ。

『C』は面白かったアニメだと思うけれど、どうしても題材やストーリーの処理に難しさがあったよね。『東のエデン』(2009)が語れそうだったものをやっぱりここでも掴み損ねていたのかもしれない。なんだかいまでもそんな気がしてるよ。

 そう考えると『UN-GO』はどうみても上手かった。戦後を近未来に再設定したことも、原作の勝海舟をネットインフラの支配者に変えたことも、チープにみえる時代遅れのトリックを超能力バトルに組み替えたこともすべて天才的だった。それでいて探偵のオリジンさえ並行して語るんだから、じつにとんでもない話なんだ*1。最終話に現実が合流するのはちょっとどうだろうとも感じたけれど、それはそれで時代精神を語ろうという意思だったし、心に刻まれる部分はあったかもしれない。それは永遠のピースのひとつかもしれない。

 會川昇はあとで『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』(2015)も担当するけれど、あれは各話ごとのアクが強すぎたね。もちろん個別の話で好きだったものはあるけれど、生けるアニメ超人(≒辻真先)を題材にした小説版の完成度が高すぎたんだ。あちらのほうにこそ永遠があったとぼくは思うな。

 余談だけど『フラクタル』について触れようか。じつはあのアニメ、あの物語世界における後世の人間が主人公たちの人生を脚色してつくった映像作品だったという設定が『ダ・ヴィンチ』の連載版小説*2で語られていたんだ。だから、もしかしたらそうじゃないのかもしれない、という留保として見ることもできた作品としてもつくられていたんだ。

超人幻想 神化三六年 (ハヤカワ文庫JA)

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2012年:『モーレツ宇宙海賊

 ところで『夏色キセキ』を見ていないならすぐに見たほうがいい。なぜならこれは夏休みのはじまりから終わりまでを描いたジュブナイルで、たしかに中学生だったころのきみは大切な友達との約束を破っていたに違いないし、空も飛べていたはずで、もしかしたら風邪を引いていたかもしれない。そしてきっと旅をしていた。あのころ、奇跡くらいなら売ってしまえるほどにあったはずなんだ。この物語はたしかに永遠ではなかったかもしれないけれど、でもそこに触れている瞬間はあった。あれはそういうアニメだったんだよ。

 そしてもうひとつ語るなら『あの夏で待ってる』かな。きみは知らないかもしれないけれど、じつは2012年には夏が2回もあったんだ。こちら側の夏で、ぼくたちは先輩を主演女優に据えた8ミリ映画を撮ろうとしていた。嘘みたいに懐かしい季節だった。けれど青い髪の女の子を泣かせたことだけはやっぱりよくなかったと思う。それは永遠であってはならなかったんだ。決して。絶対にね。

 結局、ぼくたちが最後まで笑っていられたのは『モーレツ宇宙海賊』だった。なぜって、これはとてもクールな作品だったからだ。宇宙海賊が一種の興行であるというミスマッチのようなベストマッチ。しかもそこでの金品巻き上げと保険会社による裏の結託というしたたかなビジネス感。なにより電子戦に重きを置いた戦闘スタイルで、なにもビームで撃ち合うことだけがSFじゃないってことをヴィジュアルで語る面白さがあったね。キャラクターたちの生き生きした姿も期待感を持たせてくれた。なにより毎週見るアニメはふつう楽しいものだっていう大切なことをこの作品はしっかり思い出させてくれた。だってその気持ちは永遠だと思いたいからね。

 

2013年:『ゆゆ式

きんいろモザイク』第一話はとてもファンタスティックだったね。この企画が単話オールタイムベストであればまっさきにランクインするじゃないかな。九条カレンの”Don't worry! Maybe we don't speak same language, but we can communicate as long as we try to listen to each other's hearts!”という台詞には個人的に何度も勇気をもらったよ。ありがとう。これはもともと漫画原作にはなかった台詞だったのだけれど、その在り方はちゃんと通底するテーマして互いにつながっているとぼくは思う。

 まあ、そうだね。たしかに『ガリレイドンナ』はあまりよい脚本ではなかったかもしれない。ただでさえすくない1クール内で2回もおなじイベントが繰り返されるという大きな問題はあったけれど、エネルギー資源が一部に占有されている社会というのはとても魅力的な題材だった。あそこに出てくる京都の街並みは現実とSFと合いの子になっていてそういう描写も面白かった。それに片理誠によるノベライズはとてもよいジュブナイルSFになっていたこともここでは伝えておきたいな。

境界の彼方』はラブコメをしながら別軸で最強にならないといけなかった姉の話をやるという点では稀有なアニメだった。なにせ2012年ベスト姉ヒロイン大賞受賞作だよ。えっ、知らないって? まあ、知らなくてもいいけど、姉は重要なファクターじゃないかって話さ。あとはそうだね、『てさぐれ!部活もの』も味のあるいいアニメだった。あれをアニメといっていいのかはよくわからないけれど、でもやっぱりアニメだったよね。

 けれどいちばんは『ゆゆ式』だった。5話を見て彼女たちを嫌いになれる人間なんてそうそういないくらいには永遠があった。もちろん情報処理部の面々は年を取っていくけれど、でも永遠はそこにあったって不思議と感じられるアニメなんだ。あの紫色に暮れる夕方をいつもぼくたちが思い出しているのは、だからきっとそういうことだったんじゃないかなって考えるよ。

ガリレイドンナ 月光の女神たち

ガリレイドンナ 月光の女神たち

 

 

2014年:『グラスリップ

中二病でも恋がしたい!戀』は、一期より二期のほうがずっと面白いアニメだった。なぜって七宮智音というとてもキュートな女の子が特別な存在感を放っていたから。彼女はピンクの髪をしていたけれど、ちゃんと染めているのかもしれないって思わせてくれるくらいには豊かな質感のある子だったんだ。そういう子を大事にしたいってきみも思わないかい?

 思い返してみると、この年はクールなアニメに恵まれていたのかもしれないね。『シドニアの騎士』、『ピンポン THE ANIMATION』、『ガンダム Gのレコンギスタ』。とりわけ『ノーゲーム・ノーライフ』のジブリール戦は最高だったからベストにあげたい気持ちもよくわかるな。

 もちろんキュートなアニメもあった。『ハナヤマタ』に『普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。』。後者は数多くある綾奈ゆにこワークスのなかでもちゃんと語っておくべき作品じゃないかな。回を重ねるごとに彼女たちの歌唱が上手になっていくというのもよい質感があって天才だったね。

 それに『天体のメソッド』。ぼくたちがなくしたものはあのアニメのなかにあったんだ。ふたたび友情を結んだ彼女たちが墓参りで1話をまるまる使う小さな冒険になっていることもよかったし、最終話のラストシーンがいちばん最初のPVにつながっている趣向は素晴らしい永遠の表現だったよ。そうそう、『SHIROBAKO』も山あり谷ありの素晴らしいアニメだったよね。

 そういったアニメのなかでいちばんを決めるのは難しいけれど、ここであげておくべきなのは『グラスリップ』じゃないかな。ついていけなかったという人が多いのは知っているけれど、あれは普遍的かつ抽象的なテーマ、つまり「唐突な当たり前の孤独」を扱ったゆえだったし、それに失敗していたというのはたぶん違う。だってそう思うのは、きみが彼や彼女の孤独を理解したいと思っていなかったからだろう? そういう部分も含めての孤独と共鳴だったんだ。それにTVアニメとは思えないほどに陰影の表現に優れていたことも触れないと。ああいう映像が劇場作品でなくてもできたってことをぼくたちはいま一度思い出しておくべきなんだ。結局、永遠を手に入れるっていうのはそういうものの先にあるんだって改めて思うべきなんだよ。

 

2015年:『城下町のダンデライオン

『山田くんと七人の魔女』は原作の途中までだったけれど、いちばんいいところで区切ったという点ではラブコメとしてバランスのよい作品になっていたよね。バランス感覚といえば『響け!ユーフォニアム』の実写的カメラ演出もよかった。「そして、次の曲がはじまるのです」という台詞、あれはいま思うと連続テレビドラマを意識した手法だったと大いに感じるよ。

ユリ熊嵐』を見て泣いてしまった人は多いだろうけれど、あれはもう一種の神話だったね。ああいうお話の語り方が許されるってことは歓迎するべきだ。けれど永遠の在り方かというと難しいところかもしれない。『Charlotte』も10年代のお話としては難しいって思ってしまうところはあるかな。でも「ロックじゃねえ、ポストロックだ!」はオタク的な話法としてよかったといまも感じているよ。もちろん彼女が聴いていたのがどちらかというとオルタナロックだったという点を除くなら、という話だけれどね。

 とどのつまり、ぼくたちは毎週アニメを見てよかったと心の底から思いたいだけだったんだ。思い切り笑って、泣けて、そのあと気持ちよくベットに倒れ込んで眠りにつけるアニメ。だからそういうことを考えると『城下町のダンデライオン』に落ち着くってことにならないかい? そう思わないのはべつにいいけれど、ぼくたちならきっとわかってくれるはずだよ。『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』についてはさっきも言ったからいいかな。

 

 2016年:『アイカツスターズ!

 素晴らしかった作品といえば『魔法つかいプリキュア!』だね。必殺技シークエンスが長尺になる後半にかけてはやっぱり各話の進み方がよくなかったけれど、それを補ってあまりあるテーマ性だったよ。彼女たちがお互いの手を握った回数はたぶんこの年のアニメでいちばん多かったことは間違いないね。

ハイスクール・フリート』はいいアニメだったけれど、そう思ったのはじつはOVAを見終わってからだったんだ。船上生活とクラス内コミュニケーションを並行でやるってことはいったいどういうことなのかという概観がそこまでいかないと掴めなかったからだね。けれど最近になって最初から見直してみて、これはとても丁寧なアニメだったってことが改めてわかったんだ。

灼熱の卓球娘』は上矢あがりの才能の物語として最高だったし、原作にあったポテンシャルをこれでもかと引き出してくれたという部分もポイントが高かったね。なにより音楽がよかった、卓球らしいテンポ感とスピード感がそのまま音として伝わってくるというのはとても素晴らしい体験だったよ。劇中歌の「V字上昇Victory」はバンドアパート・リスペクト楽曲としてアニメ史に刻まれるべきだろうね。

 ひいき目になっている自覚はあるけれど『アイカツスターズ!』は100話のうちほとんどすべてが面白いという稀有なアニメだったよ。『アイカツ!』という3年半のスケールをもった作品のあとでなにかを語ることは難しいはずなのに、それに応える強度で才能や個性、勝負における明暗の話をやりつづけた。

 負けるとはどういうことなのか、勝ちたいと思うことはどういうことなのか。夢を叶えたいと思うこと。進み方がわからなくなること。ステージへの怖れ。『アイカツスターズ!』は基本キュートでポップな作品だけれど、そういう暗い欲望との向き合い方を真摯に描こうとしていた作品でもあったんだ。あと最終話が旅立ちでもあるというのも完璧だった。永遠っていうのはああいうことなんだと思えたんだ。

 それに2016年は『魔法つかいプリキュア!』と『アイカツスターズ!』が同時に百合を押し出したという点でも記念すべき年だったと思うな。『フリップフラッパーズ』もあった。もしかすると、2016年は百合がアニメ市場に大きく広がってきた年だったのかもしれない。もちろんその前から百合はいっぱいあったけれどね。これは個人的なただの実感だよ。


雀が原中学卓球部/V字上昇Victory

 

2017年:『Just Because!

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』もいいアニメだったね。数年に一度、ああいうのを見つけると心が落ち着くっていうのかな、ぼくたちにも帰る場所があったんだって思える気がするんだ。そういう意味では『メイド・イン・アビス』もいいアニメだった。総集編映画まで見に行ったけれど、やっぱりリコの腕のシーンは10年代ベストに入れたいくらい最高にラディカルな声だったよ。それになによりもナナチはキュートだ。

 だからほんとうはこれ以上ないっていいたいくらいなんだけれど、『少女終末旅行』もクールだった。OPとEDの楽曲もよかった。だってあのEDの映像だよ。生きるのは最高だったよね。そう口にできるのはすごく大切なことなんだっていまならよくわかる。

 ぼくたちにとっては『ゲーマーズ!』もいい作品のひとつだ。色調もポップだったし、人間関係の絡ませ方はとてもひねくれていてじつに好みだったね。現代ものラブコメアニメはコメディを忘れがちだけれど、これはしっかりコメディを抑えていた点でよかったんだ。それから『アリスと蔵六』もよかったと思うな。キャラクターの生活や考え方があって、外連味があって、なにより生き方の話だ。最終話の『不思議の国のアリス』の引用は見ていて泣きそうになったくらいさ。

 でも2017年は『Just Because!』だったかな。冬の質感がちゃんとアニメになっていたってことがとても大きい。なんていうのかな、すこしだけ空気が白いんだ。それにキャラクターの細やかな描写もほんとうによくつくりこまれていた。だからいつまでも見ていられるアニメだったよ*3。これについては一時期ちゃんと考えようと思っていた時期があって、よかったら以下のリンクを読んでほしいかな(結局、途中で止まってしまったのだけれど)。

saitonaname.hatenablog.com

 

 2018年:『あかねさす少女』

ウマ娘 プリティダービー』は勇気をくれるアニメだった。小川哲が「ひとすじの光」というスペシャルウィークの系譜の話をしていたけれど、だいたいあれが面白く読めたのは『ウマ娘』で知識を仕入れていたからだし、とりあえずOPの映像を見てピンときたきみは見たほうがいいと思う。走り方にもしっかり重量感があって、そういう部分でもすごくつくりのいいアニメなんだ。

三ツ星カラーズ』はまだ日本にも国産ノワールができるんだっていう証拠になった意味でとても興味深い作品だったね。それに運行が休止になってしまった上野動物園のモノレールをアニメにしたという史料的価値もある。きっと十年後、二十年後になってより評価されていく作品になるんじゃないかな。賭けてもいいけれど、いずれ上野のどこかしらの資料館でこの作品はずっと流されるようになるだろうね。

 国産ノワールであれば『となりの吸血鬼さん』についても語らないといけないね。ヴァンパイアの女の子をトランクに入れて運ぶという7話のシナリオは『ぼくのエリ 200歳の少女』のラストシーンの引用だし、ほかに「インタビューウィズヴァンパイア」という副題の話もある。つまりこうした作品群の先にある関係性を描こうという態度なんだ。この先もアニメノワールから目が離せないよ。

 ストーリーの面白さでいえばベストはたしかに『宇宙よりも遠い場所』だけれど、それでもやっぱりぼくたちは永遠が欲しかった。だから『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』のほうをあげたくなるな。

 けれど永遠の見方についていえばもうひとつ『あかねさす少女』があったからね。これはつまるところ彼女たちの人生の在り方という意味でまさしくジュブナイルだし、もうひとりのわたしの話であり、世界の終わりの話でもあり、姉という贖罪の話でもあった。後年も語られる傑作かっていったら違うかもしれない。でもすごくいい作品なんだ。2018年ベスト姉ヒロイン大賞受賞作であり、2018年で影膳をお姉ちゃんが食べるアニメは『あかねさす少女』だけだった。あのとき、あの瞬間にしか見れなかった作品。つまりそういうことなんだよ。

嘘と正典

嘘と正典

 

 

2019年:『グランベルム』(暫定)

BanG Dream! 2nd Season』は正直いって化けた作品だったよ。一期もそれなりに面白かったわけだけれど、彼女たちの人生という時計の針をすこし進めた先でやることをちゃんとやっていたからね。そういう永遠とは違う在り方でもいいんだなって教えてもらえた点ですごく感謝してるんだ。そうだね、山吹沙綾さんにはちゃんと幸せになってもらいたいかな。

『ひとりぼっちの〇〇生活』は素晴らしくキュートなアニメだったね。事前に告知されていたキャラクターデザインを原作と比べたときは若干の不安もあったけれど、1話の冒頭を見た瞬間にそれが杞憂だとわかったから。とても嬉しかったんだ。あのカラオケ店の外でぼっちが号泣するシーンはほんとうに胸が痛かったよ。正直、さっき話した『メイド・イン・アビス』のシーンに比肩すると思ったね。それから『まちカドまぞく』もキュートでハードな演出がとてもよかった。OP楽曲「町かどタンジェント」は今年のベストアニメソングだ。

 おそらく2019年のダークホースは『ぬるぺた』で、現在7話まで進んでいるところだよ。簡単にいうと、これは死んだ姉を妹が機械によってつくりなおすという未来のおとぎ話だ。世界はどことなく不安定で、姉は最初から死んでいて、妹は宇宙でひとり孤独を思い出す。そういう物語。ぼくはとくに3話の死んだ姉にむかってポアンカレ予想の面白いところを話すシーンがお気に入りなんだ。あの瞬間にはたしかにぼくたちの望む永遠があったとつよく思うね。

 放送が終わっている作品であれば『グランベルム』がいちばんかな。第1話で主人公がそこまで料理がうまくないのに、クラスメイトに弁当をつくってるシーンの意味が次の話で語られたときはすこし息が苦しくなった。けれどドビュッシーピアノ曲に合わせて戦うロボットはうつくしかったし、なによりラストには永遠があった。ぼくたちはいつもそういうものを探していた。だから胸を張って2019年のベストはこれだっていえるよ。

 

 というわけでこれまであげた作品を並べてみるよ。

 こうしてみると改めて選び方がボンクラって感じがしてくるのはどうしてなんだろうね。まあその直観は正しいんだけれど。といってもランキングなんてその場の雰囲気で変わるから、すべては有限性のあとでぬるぺたみたいに不安定なんだ。2010年代ベストOPは「せーのっ!」(ゆゆ式)でベストED「More One Night」(少女終末旅行)で決まりだね。終わるまで終わらないよ。もしかするとそれって永遠かもしれない。

 

 

補遺・映画作品編

2010年『イヴの時間』は実質の総集編だけどあまり観ていなくてほかに推したいものがなかったんじゃないかな。心から謝るよ。

2011年『マルドゥック』2作目はカジノだし、やっぱり入れておかないと。

2012年『おおかみこどもの雨と雪』があったけれど、いまだにうまく消化できた気がしていないんだ。3Dで観た『009 RE:CYBORG』は個人的には面白かったと思うよ。でもあれはアフター『東のエデン』の文脈がないとよくわからない作品だったね。

2013年『陽なたのアオシグレ』っていう早見沙織ヴォイスの女の子に絵をほめられる小学生の話があったけれど、これが『ペンギン・ハイウェイ』につながってほんとうによかったといまは思うよ。『かぐや姫の物語』はちゃんと観に行ったと思うけれど映像の暴力性としては『言の葉の庭』がいちばんかな。

2014年『アルモニ』がベストかなって思ったけど『イヴの時間』と監督が被るし、現代ナイズトされた『思い出のマーニー』も質感がよかったんだ。『劇場版 アイカツ!』はアイドルのたどり着く結論としてはものすごいところへ行ったと思うけれど、これはアイカツを全話見た人の感想だから信用できないかな。『輝きの向こう側へ』についてはいつか記事を書いたくらいには傑作だと思ってるよ。

2015年『劇場版 境界の彼方 -I'LL BE HERE- 未来篇』はTVシリーズで語り切れなかった姉の話をやっていたというすごい作品だよ。まあでも、ぼくはだれともこの作品の感想を交わしたことはないけれどね。

2016年『君の名は。』も『映画 聲の形』もあったけれど『劇場版 アイカツスターズ!』はたった1時間でやれることをしっかりとやり抜けた、奇跡のような作品だったんだ。だってぼくはあの映画でもう一度ちゃんと小説を書こうって、人生をやり直そうって思えるようになった。それから『ゼーガペインADP』に『この世界の片隅に』、『きんいろモザイク Pretty Days』。ほんとうに素晴らしい一年だったね。

2017年『夜は短し歩けよ乙女』といい、湯浅政明イヤーだったことは間違いないかな。とはいえ『ヤマノススメ おもいでプレゼント』があったことは記憶しておくべきだ。あと『ノーゲーム・ノーライフ ゼロ』も機械少女がクールな映画だったよ。

2018年『あさがおと加瀬さん。』と『リズと青い鳥』はどちらも心の奥に響く作品だった。どちらも素晴らしい靴音が聞こえていたことがポイントだね。あの音はぼくたちの知っている永遠そのものだったと思うな。だからもうすぐ公開の『フラグタイム』もとても楽しみで仕方ないんだ。あれも永遠についての話だからね。

2019年『海獣の子供』は最高にDOPEでILLな映画だった。『グリザイア:ファントムトリガー THE ANIMATION』もクールだった。損傷した腕の骨を即座につないで相手の予測できなかったパンチをやるのはまるで格闘漫画の技じゃないか。それから『空の青さを知る人よ』。これは姉アニメ映画史に残る作品だろうね。永遠とは遠いけれど、それでもよい作品だったことには違いないよ。 なにより『天気の子』だね。これはあまりにも凶悪だった。あれでもうぼくたちは強制的に、2020年に進むべきだって教えられてしまったんだから。

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 だから、次の10年もたくさんアニメを見ていたいよね。


Aiobahn - 動く、動く [Future House, Girls' Last Tour Remix]

 

 

 

 

 

*1:UN-GO episode:0 因果論』のこと。劇場版かつ前日譚がTVシリーズの放映中に劇場公開された。それゆえ最終話を見る前に観てもよいし、最終話を見たあとでも観てよいつくりになっている。

*2:フラクタル/リローデット」のこと。連載はまとまって本にはなってはいない。

*3:見通すだけなら7周した。個別のシーンならもっと多く見た気がしている。