凪のあすからを誤読する9(11話)

 一日開けただけなのに不思議と長い時間が経ったように感じますね*1。この記事を毎回追って読んでいる人間がいるのかわかりませんが引き続きやっていきます。やってやりましょう。

第11話 変わりゆくとき

 というわけで今回も告白でオープニングです。髪をまとめる姿を見せているあたり、ちさきにとって要が恋愛対象と思っていなかったことがうかがえますね。

 ちさきの両親にもご挨拶。「別に、答えが欲しいわけじゃないんだ。ささやかな、抵抗みたいなものだから」と要。そして外へ。

(のちのちになって考えてみれば、その日の要とちさきは、たしかにどこかおかしかったような気がする。)と、光のモノローグ。しかし気づくまでには至りません。同様にまなかも自分のことでいっぱいいっぱいだった様子です。それからの出来事もダイジェストで語られます。そして青年会。冬眠のタイミングはおふねひきの日と重なるようです。

 アパートで朝食を摂るあかり、至、美海。美海はやはり不安をぬぐい切れていないようです。学校に行く美海。婚姻届け。式をあげるつもりはないあかり。「こんなご時世だし、父さんとか呼んでもきっと来ないし」しかし至は「でも、だからこそちゃんとしたほうがよくないかな」。灯に認めてもらうことを考えています。

 教室。胞衣の水分補給を汐鹿生から指示されています。光はめまいを起こし、4人は水場へ。涼しいとはいえ季節は夏のはず、ですが空や空気の色調は冬に似たそれになっています。すぐに乾く胞衣。

 またまなかと同様に、冬眠したときに同時に目が覚めるのかどうかについて、光も思い至ったようです。「ぼくらが同じ時間を過ごせるって保証されてるのは、いまだけなんだ。刹那的な気分にもなるよね」と要。はっとするちさき。

 そこにやってくる紡。給食について。「俺、食う」と教室に戻っていく光。それを追いかけるまなか。「わたしも食べる! だって、やだよ、このままなんて。眠って、起きたら全部変わっちゃってるかもしれないって……」拒否されたときのことがまだ記憶に新しい光ですが、「しゃーねえな……来いよ」とぶっきらぼうに返します。世界が輝く。光相手には初ですね。おめでとうございます。

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少女漫画か(10話ぶり3度目)。

 その一連の会話を見守っていた3人。「やっぱりまなかは走るのが上手いね」と要。「足は遅いくせに、ときどき置いてかれちゃう」とちさき。

 サヤマート。冬眠によって売上が伸び悩んでいます。人口がどのくらいかはわかりませんが、鴛大師も村ですので客の何割かが減ったとしたら確実に大打撃ですね。

 店の脇に美海とさゆ。「どっか行け」「行けっつってんだろ、継母!」いい台詞。駆けていくふたり。ガムを拾い、「ありがとね、でもわたしの行く先はもう決まってるよ」とあかり。そこに漁協の青年部の人が。

 漁協。光に頭を下げる大人たち。おふねひきをやってほしいそうです。それを見て「あのね、光」とあかり。

「この人たち、いままで鼻で笑ってたくせに、いざ不漁や凶作の兆しが見えてきたら、あんたたちに乗っかろうとしているの。すっごく虫のいい話だから、あんたは怒って断ったっていいのよ。でもね、もし可能なら引き受けて。地上はもうわたしの大事な場所なの」

 最後には「お願いします」と頭を下げるあかり。姉は指針を示すものですからね。実に堂々とした言葉です。それを受け入れる光。

 社殿。うろこ様に地上での出来事を伝えます。「じゃがのう、おふねひきをやってもなにも状況は変わらんぞ」いじわるな返しをするうろこ様。しかしそこで頭を下げる光。「頼むよ。地上を救ってやってくれよ。お願いします。あいつらを……」キレてばっかりいた光が成長しています。じっさいに大人や姉が頭を下げたのを見て、学んだのかもしれません。とはいえうろこ様には地上をどうこうする力はないとのこと。

 海辺。「俺、なんて言やいいんだよ……みんなあんなに頑張ってくれて……」と光。対して「あんたは頑張ったよ。大丈夫、みんな知ってるから」と頭をなでてやるあかり。「姉ちゃん……」自然と光も呼び方がむかしに戻っていますね。積み重ねがあるから活きる姉描写。そして「あのね、光。あたし、考えてたことがあるの」

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姉を描くことに余念がないアニメこと『凪のあすから』。

 紡の家に集まる人々。そこであかりが「おふねひきと、わたしたちの結婚式を一緒にやっていただけないでしょうか」と提案します。おふねひきに意味がないことは周知になっているようですが、「とりあえずなんでもいいから試してみたいの」。そしてその提案は、あかりの冬眠を願う美海に向けられたものでもあります。

「でも、もうわたしの人生には美海と至さんが必要なの。ふたりがいないなら、生きてる意味がないのよ。だからごめんね。わたしは、絶対、どっかいかない。美海と同じ場所で、同じ時を生きていくわ」

 その言葉を聞いて泣いて謝る美海。さらにあかりはつづけていいます。「なにもしないで、みんなと別れるの、嫌だから」はっとする5人。晴れ間が覗きます。みなが賛成し、おふねひきはどんどん大掛かりになっていきます。

 造船所で準備をした夕方。眠っているあかりと美海。ちさきはひとりつぶやきます。

「すごいですよね、憧れます。ううん、あかりさんだけじゃない。光も、まなかも、頑張って変わろうとして、ちゃんと変わって、周りまで変えはじめている。要もきっと。あかりさん、わたし、光に告白します。駄目かもしれないけど、でももう、なにもしないまま、変わらないままで終わりにできない。わたしも、そう思うから」

 長かったちさきの停滞もようやく解消される気配を見せて、今回はここでエンディングです。キャラクターのそれぞれの立ち位置が整理され、だんだんとお話が畳まれる予感が出てまいりました。とはいえ今回フィーチャーされたのはどちらかというあかりで、これまでの展開で至と話していた「ちゃんとする」の回答を婚姻届や結婚式として出してきたというかたちです。

 そういう意味では今回はつなぎの話という雰囲気がありますが、次回はぼくたちわたしたちのシリーズ構成岡田麿里が帰ってきます。震えて眠りましょう。きっといたたまれなくなるでしょう。そうだ、きっとそうに違いない*2

 

 

続く。

saitonaname.hatenablog.com

*1:鷺宮『三角の距離は限りないゼロ』の最新刊を読んでいたので更新をしなかった。

*2:まだ見直していないので細部を忘れている。