第4回百合文芸小説コンテストでpixiv賞をいただきました。

 ご報告です。

 ふだんならFANBOXのほうでお伝えするのですが、現状ではあまり積極的に使う気持ちにもなれませんでしたので、こちらのブログのほうでご報告いたします。

 以下リンク。

 

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 というわけで、自分の書いた本格百合(死体埋め)ミステリ「綺麗なものを閉じ込めて、あの湖に沈めたの」が第4回百合文芸小説コンテストにて「pixiv賞」を受賞いたしました。

タイトル「人生おちこぼれフルーツタルト」(2022年、夏製作)

 本選考に携わった方々、また、拙作をお読みいただいた方々にここでお礼申し上げます。賞と名のつくものをいただくのは、第9回創元SF短編賞以来ですので、実に4年ぶりのこととなります。え、4年? そのあいだなにしてたんですか。いや、なんというか、特になにもできないまま横になって壁や天井を見つめたり、虚空に向かって「ごめんなさい ごめんなさい」と謝るなどしていました。

だいたいこんな感じでした。

 嘘です。ちょくちょく公募新人賞に投稿して、いろんな段階(一次、二次、最終など)で落ちるなどしていました。

 すこしだけ作品の経緯をご説明させていただくと、「綺麗なものを~」はもともと自分の所属している同人サークル〈ストレンジ・フィクションズ〉のCOVID-19チャリティー企画同人誌『夜になっても遊びつづけろ よふかし百合アンソロジー』のために書き下ろしたものです。

 ついでに自分が表紙イラストや扉絵の八割を描きました。頑張りました。

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 また、この同人誌は現在も絶賛配信中で、「綺麗なものを~」含め、いろいろなよふかし百合作品が読めます。売上金はすべて〈ストレンジ・フィクションズ〉が国境なき医師団に寄付するというルールになっています。

 だいたいですが、ここ一年ほどの寄付総額は9万円ほどになりました。すごい金額です。お読みいただいたみなさまに厚く御礼申し上げます。

 こういった経緯もあり、おそらくですが「綺麗なものを~」は自分の作品のなかでも最も多くの方に読まれたものになったと思います。そういう意味でも特別な作品になりました。重ねてお礼申し上げます。

昨年描いたこの扉イラストとも、ここまで長い付き合いになるとは思いませんでした。

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以下、宣伝

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 新作情報です。自分の所属しているサークル〈ストレンジ・フィクションズ〉では現在、新刊を予約販売しております。「特集:ゲーム小説」となっております。自分はゲーム小説に関するコラムを二本(架空競技SF、盤上ゲーム)と、犯人当てバトル小説を書き下ろしました(約200枚)。

 以下、拙作「瞬きよりも速く」より、印象的なシーンを一部引用。

「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 お互いに頭を下げる。犯人当ては礼にはじまり礼に終わる。

 犯人当ての公式戦において、当士(とじ)の視線はセンサによりリアルタイムでモニタリングされている。これは二〇一一年のネット観戦の開始から導入された技術であり、表向きは不正を防ぐためであるが、同時に対局中の当士の思考過程を追うことにも一役買っている。

 そしてその技術が、ある記録をここに残している。

 船戸衿(ふなとえり)四段(当時)は登場人物一覧と見取り図、冒頭十二行を読んだのち、そのまま印刷された問題用紙をめくって文章を飛ばし、最終頁の末尾十一行を確認した。

 その後しばらく宙を見つめ、鉛筆を取り、解答用紙に文章を書きつけて、

「解けました」

 と、宣言した。

 ふつう、プロの当士はアリバイ表を書かない。

 これは詰将棋解答選手権でアマチュア棋士が盤と駒を使っていい理由、つまりハンディとは明確に意味が異なる。純粋な推理にかける時間の問題だ。

 犯人当ての対局においては、推理に必要な最低限の持ち時間が用意されている。けれども対局者がどちらもおなじく正答を出した場合、勝者となるのは先に推理を提出した当士である。もちろん問題内容にもよるが、このルールの関係上、早指し勝負になってしまうこともすくなくない。こうした競技上の背景があるため、いちいち手書きのアリバイ表をつくるのは大幅なタイムロスになってしまう。

「プロ当士は、脳内推理盤をつくれるのが最低レベル」

 などとは、よく言われていることだ。出題された文章をいち早く読み込みながら、同時に複数人のアリバイを頭のなかで立体的に並列処理していく。そのうえで推理の深度が問われるのがこの犯人当てという世界なのだ。

「いまさら形作りですか」

「すみません、支倉五段。気が変わりました」

「変わった?」

「ええ。これからあなたが解いた謎を、否定します」

 途端、相手の目が大きく開かれる。

「まさか」

「その通りです。わたしは作者の想定していない〈第二の真相〉を推理します」

 ドキドキしてきましたか? してくれたら幸いです。

 新刊の予約数には上限がありますので、なるべく早いうちにお買い上げいただくと後悔することもないと思われます。ここで一句「いつまでも あると思うな 同人誌」。

 販売プラットフォームについてはこれを読んでいらっしゃる方のなかにも思うところがあると思いますが、さすがに事前に告知していたものを頒布の直前に変更することもできなかったため、今回はこちらで販売対応させていただいております。ご了承ください。

 最近はなにかと暗いニュースが多く、つらい気持ちになることが多いですが、拙作がすこしでもあなたに寄り添える作品であれたらよいと思います。改めまして、このたびはほんとうにありがとうございました。今後とも応援よろしくお願いいたします。

 以下は関連リンク。

saitonaname.hatenablog.com

 

余談

 せっかくなので「綺麗なものを閉じ込めて、あの湖に沈めたの」のイメージ楽曲プレイリストをSpotifyにて作成しました。オタクなので。半分くらいはほんとうに執筆中に聴いていたものです。とりわけ「星屑のインターリュード」の素晴らしい歌詞がなければ、間違いなくこの作品は生まれなかったと思います。読後などにお聴きいただけると、きっと楽しみが増すかと思います。

open.spotify.com


www.youtube.com

「夜になっても遊びつづけろ 背景画」(2021年、春製作)