久々の単話更新です。前回はちさきの感情にフォーカスした回ですが、今回は美海です。彼女もまた複雑な感情を抱いています。やってやりましょう。
第20話 ねむりひめ
汐留家。まなかが戻ってきて一週間。まだ目覚めないままオープニングです。
放課後。ノートをふたつ取っている美海。「光、まなかさんのことでもっと取り乱してるのか思ったけど、割と前向きじゃん?」とさゆ。とにかく動いているようです。
海に潜っていますがうろこ様は見つかりません。まなかを見つけたときよりも水温は下がっている、と要。海神様が関係しているのかどうか。ちさきも潜っているようです。濡れたちさきの姿に頬を染める光と要。中学生ですね。安易にサービス担当にされてしまうちさき。
下校する美海とさゆ。「なんかさ、せっかく同い年になれたんだし、もっと色々できたらいいな、って思って……それでみんなの輪に近づけたらもっともっといいな、って……」とさゆ。ふたりが5人の輪に入りたいと思っているのは以前から語られていましたね。
やはり見つからないうろこ様。光、要、美海の3人は17時に流れるおふねひきの歌を聞きます。そしてなにか思いつく光。漁協に行って協力を仰ぎます。
紡の家に戻ってきたちさきと要。風呂の準備は終わって、入れ違いに出ていく紡。それを見て「ほんとまどろっこしいな、お前ら」と教授。傍から見てもそう感じられるようです。
汐留家。漁協の人に歌の録音を頼んだことをあかり経由で聞く美海。「そうなんだ……」と浮かない顔の美海。帰ってきた光につい「このまま目覚めなかったら」と口にしてしまい、怒らせます。
悪夢を見る光。翌朝からもうろこ様を探しに出て、学校では寝ています。
放課後の図書室。「自分の気持ち押し付けるやつって最低だよねえ」とさゆ。はっとする美海。
「わたし、ずっと考えてたんだけど、王子様がよくするじゃん? 眠ってるお姫様にキス。してみればいいと思うんだ、誰かが眠っているまなかさんに」とさゆ。
「な……キ、キスって……」
「変な話じゃないよ? 誰かへの強い思いって、なにかを大きく変えちゃったりするんじゃないかなって」
「強い思い?」
「そういうの持ってる人いるじゃん? たとえば光とか」
そこで光に人工呼吸をしたことを思い出す美海。「で、でも根拠とかなんにもないのに、そんなキスとかよくない!」自分のことを棚に上げていますし、光のキスが取られることを本能的に嫌がっていますね*1。「美海、まなかさんのこと、ほんとは目覚めてほしくないみたい」とさゆ。その言葉にショックを受ける美海。
夜。おふねひきの歌をまなかに聞かせますが、効果はありません。そこに晃が突進してきたカセットプレイヤーが倒れます。その後、髪を梳かした美海をまなかと間違える光。倒れます。熱があるよう。
翌日。布団で体温計を温めて嘘をつく美海。「みうもお熱?」と晃。「うーん。ま、そういうことにしておいてやるか」とあかり。見抜かれています。
学校。「光のやつ、無理しちゃってさ。わたしも美海もみんないるのに」とノートを3人分取ろうとするさゆ。まなかのぶんはもともと美海が取っていたようです。手伝う要。
「光には休むなって言ったくせに」とズル休みをしてしまった美海。光の看病が目的だったようです。そのあと、まなかの顔を拭いているとプレイヤーが目に入ります。巻き戻し。再生。すると昨日晃がぶつかったあとの声が録音されています。「うろこ様、探しに行かなくちゃなんねぇんだ……俺が目覚めさせんだよ……俺が……」
(光は、どこまでもまっすぐで、まぶしい。それはきっとまなかさんへの思いがそうさせていて、それに比べて、わたしは……わたしは……)
電話。紡から。しかしそこで泣く美海。「美海。いまから出てこられるか?」
熱が引き、目覚めた光。「気持ちはわかるけど、ちょっとは周りも頼んな」とあかり。「まなかちゃんのこと思ってるのあんたひとりじゃないんだから」「わーってるよ」「どうだか」そこでノートに気づく光。
桟橋。美海と紡。美海はコーンポタージュで、紡はみかんジュース。子供が飲みようなみかんジュース。「ほんとう、俺ってわかりにくいんだな」と紡。「鹿生のやつらって、気持ちがあふれてて、それっていいな、って、ずっと思ってた。お前もな」「わたしはどうかな。きっとよくない。光たちとおんなじじゃないから」と美海。「わたしだけ、まなかさんへの気持ち、同じじゃない」
「俺も、あいつらが目覚めなきゃいい。正直そう思ってた」
「え?」
「ちさきが、俺の前からいなくなる気がして、怖かった。でも結局、目覚めたときはうれしかったよ」
「うれしい?」
「おかしいだろ。でも、うれしかったんだ」
「怖いけど、うれしかったの?」
「そうだ」
「わたしも、うれしくなれるかな?」
「美海は、ふたりとも大切だから苦しいんだろ。光も向井戸のことも」
「わたし、うれしくなりたい。心からよかったって、言えるようになりたい」
紡は自分の言葉でちゃんと美海に語りかけるのでほんとうにいいやつですね。ふだん言葉のすくない人間が多弁になる理由としては年下相手を慰めるためというのがきちんと挿入されているのが偉い。
というより紡は美海の理解者でもあったことがこのシーンでよくわかります。いつ、どのタイミングで彼女の好意を知ったのかは明示されていませんが*2、このふたりは好きな相手に好きな相手がいる同士でもあります。それぞれが持っている感情を語り合うのは青春ですね。ビリヤードではない関係*3なので穏やかでもあります。
夜。ノートについてまなかに語りかける光。やってきた美海に「こいつ、起きるよな」「うん、起きるよ。きっと」それからさゆに聞いた話を伝える美海。「とにかく、キスして」それから慌てる美海。「まなかさんにしてあげてってことで!」光も中学生なので恥ずかしくなって声を上げます。しかし「ひーくん、女の子そんなに怒っちゃだめだよ!」と声。まなかです。
というわけでついにまなかが目覚めて今回はエンディングです。これまででもそうでしたが、今回もキャラクターが自分の感情と向き合っていくことでお話が進んでいます。大展開というよりはゆっくりと着実に、といったところですが。
いっぽうでキャラクターのこじらせ具合についてはまた今回も大きく深まっています。当初、美海は自分の感情を優先していましたが、紡との会話を経て、好きな人が他人とキスするのを許すようになりました(字面にするとこれはこれでかなり歪んでいやしませんか)。とはいえちさきのように、まなかのことを好きな光を好きでいることを考えるかどうかについては今後の見どころといえます。
目覚めたまなかにそれぞれのキャラクターはどう思うのか。うろこ様は見つかるのか。世界はどうなるのか。引き続き見てきましょう。
続く。