2022-01-01から1年間の記事一覧

「エラリー・クイーンに(再)入門するための三冊」

【※以下の文章はクラシックミステリ同人誌『Re-ClaM』Vol.3の特集「クラシックミステリ(再)入門」に掲載された文章です。 このたび、『靴に棲む老婆』が越前敏弥先生により新訳され、紹介した三冊がすべて新刊で買えるようになったため、ゲリラ的に掲載い…

『ぼっち・ざ・ろっく!』でギターをはじめたい人のための覚え書き

陰キャならロックをやれ!!!! ーーはまじあき『ぼっち・ざ・ろっく!』初版帯コメント 目指せ、ギターヒーロー。 【※】このブログは『ぼっち・ざ・ろっく!』を見て、ギターをはじめようと思った人に向けて書いています。 はじめに まず一言。 ぜったい1~2万…

For RIKKA ZINE vol.1 Theme : Shipping(rejected)「宇宙移動美術史のために」

linktr.ee SF書評家・翻訳家の橋本輝幸さん主催による同人誌『RIKKA ZINE』vol.1 のテーマ「Shipping」の公募に送り、リジェクトをいただいたものを改稿して以下に載せます(もともと8000字規定でしたが、改稿の過程でオーバーしました)。 よければお暇潰し…

『ユリイカ2022年11月号 特集=今井哲也』に「解題」を寄稿しました。

www.seidosha.co.jp タイトルの通りです。 『ユリイカ2022年11月号 特集=今井哲也』に「主要作品解題」ということで、今井哲也先生の主要な漫画作品(一次創作、商業アンソロ、同人など)を整理したコーパスを書かせていただきました。2022年10月現在ではお…

Kaguya Planet果樹園SF選外作品「時間のかかる密室」

virtualgorillaplus.com 上に応募していたのですが選外になり、どうしましょうかと思っていたところ、 https://t.co/sVtOj1si7Q — VG+ (バゴプラ) | SFメディア (@vagopla) 2022年10月11日 のスペースで最初に講評をいただいたので、せっかくのことですし、…

第9回創元SF短編賞大森望賞「夏の結び目」を公開停止いたします。

お知らせです。内容はタイトルの通りです(リンクは公開時の記事)。 saitonaname.hatenablog.com 第9回創元SF短編賞大森望賞「夏の結び目」を公開停止いたします。 停止するに至ったのにはさまざまな要因が含まれますが、もっとも座りのよい言い訳としては…

あなたの知らない(百合)について 曹麗娟「童女の舞」

台湾セクシュアル・マイノリティ文学[3]小説集――『新郎新“夫”』【ほか全六篇】 (台湾セクシュアル・マイノリティ文学 3) 作品社 Amazon その年の夏、私たちは十六歳で、南台湾で一番暑い街にいた。バスがアクセルを踏んだとき、彼女はその前方に駆けてきた。…

(新)本格ミステリの罪とはなにか――北山猛邦『月灯館殺人事件』を誤読する

【本ブログ記事では北山猛邦『月灯館殺人事件』の内容への言及があります。ご注意ください。】 月灯館殺人事件 (星海社FICTIONS) 作者:北山 猛邦 星海社 Amazon わたしたちがおこなっていたのは、ほんとうに「伝言ゲーム」だったのでしょうか。 北山猛邦『月…

2022年上半期よかったものブログ

タイトルの通りですが、まともに生きていないので、本と音楽くらいしか言うことがない。そのときそのときで面白いものはブログに適宜書いていましたが。そちらが見たい場合は、いい感じに遡ってくださると助かります。やっていきましょう。 安井高志歌集『サ…

2022年上半期に映画館で観た映画感想メモ

タイトルの通りです。年末になって思い出すのがかなりめんどくさい、という問題がありさっさとやっておく。基本は原稿作業とかのあいまにリフレッシュ目的で観に行っているので、タイミングを逃したりすることがかなりあった。『マイスモールランド』と『犬…

第4回百合文芸小説コンテストでpixiv賞をいただきました。

ご報告です。 ふだんならFANBOXのほうでお伝えするのですが、現状ではあまり積極的に使う気持ちにもなれませんでしたので、こちらのブログのほうでご報告いたします。 以下リンク。 www.pixiv.net www.pixivision.net www.pixiv.net というわけで、自分の書…

ケンイチくんシリーズ再読メモ①「メンツェルのチェスプレイヤー」

・大学時代に感銘を受けた〈ケンイチくんシリーズ〉を読み直したい。 ・得るものがあるかはわからない。 ・ほんとうはネット上に作者が公開していた『デカルトの密室』参考文献リストをチェックしたいが、消えてしまっているのでわからない。 ・自分の知識は…

終わらない解釈ゲーム――小川哲「スメラミシング」を誤読する

あなたは今、わたしがどういう意味でいったのか、といわれましたね? ――エラリイ・クイーン『ダブル・ダブル』(青田勝訳) 鯨庭『言葉の獣』より ※【注意】本記事は小川哲「スメラミシング」のネタバレを含みます。 文藝 2022年夏季号 河出書房新社 Amazon …

ストフィクVol.3連動企画『ゲームミステリアンソロジー:総あたり殺人事件』について

文学は人を傷つけるための道具じゃねえ、おれとアンソロジーバトルで勝負だ! 瀬戸川 ぼくも『深夜の散歩』から変わったと思いますね。それまでにも、ゲーム小説としての探偵小説の楽しさを語る文学者は何人かいましたけれど、(…) ――「ハヤカワ・ポケット…

教養でなく、新入生にすすめる国内ミステリ20冊

みなさんにはこう言われる先輩になってもらいたいと思います。 タイトルからして教養主義じゃん、という突っ込みはおそらく成立するでしょうが、知り合いに「4月だから初心者向けリストを書け」といわれたので書きます。わたしはミス研を卒業してもうだいぶ…

ジョナサン・レセムの短編を読む

参考(翻訳作品集成):https://ameqlist.com/sfl/lethem.htm 銃、ときどき音楽 作者:ジョナサン レセム 早川書房 Amazon ジョナサン・レセムという名前と出会ったのは十年くらい前の古本屋だったように思います。タイトルは『銃、ときどき音楽』。 コミカル…

推理小説と〈偶然〉という回路について

国木田独歩も『運命論者』の中で甲が「僕は運命論者ではありません」といったに対して乙をして「それでは偶然論者ですか」と詰問させている。この詰問は単なる皮肉にすぎぬもので、運命と偶然が畢竟、同一のものであることが前提されている。 ――九鬼周造『偶…

2021年ベスト姉ヒロイン大賞

少なくとも 姉は何かを失敗したことはなかったはずだ ――ゴブリンスレイヤー 前年に引き続き、本大賞アンバサダーを務めるゴブリンスレイヤーさん ベスト姉ヒロイン大賞とは、その年1月1日~12月31日までに発表されたアニメ作品(劇場作品も含む)のうち、姉…

真実は非情に揺れつづける――『由宇子の天秤』感想

www.youtube.com アーチャーは、ときにはアンチ・ヒーローにさえなりかかる主人公(ヒーロー)である。行動的な人間ではあるが、彼の行動は、主として他者の人生の物語を寄せあつめ、その意味を発見することに向けられている。彼は、行為する人間というより…