雑記

『千年女優』をあと何度も観直すためのいくつかのメモ。

???「千年女優を見たことがない? 初恋を経験したことがないならそれでいいけど」 【※】本記事はアニメ映画『千年女優』のネタバレを多数含みます。未見の方はご注意ください。 タイトルコール。ビデオの巻き戻しから入るのが示唆的である。 2月に再上映…

中西鼎『君が花火に変わるまで』感想。

タイトルの通りです。中西鼎『君が花火に変わるまで』読みました。 君が花火に変わるまで (メディアワークス文庫) 作者:中西 鼎 KADOKAWA Amazon 幼い頃に難病にかかっていたはずの子と高校で再会し、「付き合って」と言われる「ぼく」。しかし彼女の行動の…

『記憶ミステリアンソロジー:だれかがいた庭』について

須藤佑実『夢の端々』より。 幼いころのことだ。だれかが数分前までいたような、あるいはずっと前に歩み去ったような庭を見たことがある。 そこには見知らぬ――しかし不思議と親しみさえ覚えることができる――人々の息づかいが感じられ、優しい風と緑に包まれ…

SF&ミステリ系サークルでの上映会リスト20作を考える

タイトルの通りです。 上映会の図(とめきち『すわっぷ⇔すわっぷ』より。) 先日、京大SF研さん主催?で同年代の大学SF研究会サークル複数がスペースで話しているのを聞きました。 実情としては、作品の数が多かったり、入手難易度が高かったりするために、…

ぼくは幌田『またぞろ。』を読んで泣いた。

幌田『またぞろ。』とは? またぞろ。 1巻 (まんがタイムKRコミックス) 作者:幌田 芳文社 Amazon 留年生×3が送る人間へたくそ青春コメディ。 約1年間引きこもりだった殊は、春から2回目の高校一年生。病弱で同じく留年生の詩季、奔放でこれまた留年生の巴…

映画は夢というか悪夢である――『フェイブルマンズ』感想

「スピルバーグの自伝的作品」ということを念頭に入れる。 www.youtube.com これはたぶん、夢という名前の悪夢についての物語だ。 具体的な理由とまではかたまっていないが、自分のなかでは、長年ずっと映画礼讃映画というか、”映像の力を信じろ”系の作品に…

ジェフリー・フォード「創造」を誤読する。

タイトルの通りです。先日、個人的に参加している読書会で「創造」が課題短編となり、数年ぶりに再読しました。そこで考えたことを忘れないうちにメモしておきます。 【※本記事では、ジェフリー・フォード「創造」の内容に言及します。未読の方はご注意くだ…

百合短編小説レビュー企画『名づけられなかった花たちへ』をはじめます。

タイトルの通りです。今回は企画をはじめるための、ながーーーい告知*1のようなものになります。あるいは企画の第0回といってよいかもしれません。 合計で約16,000字あります。ながい。 要するに、以下は前提を共有するために書いた「百合」に対する個人的な…

わたしをつくった百枚のアルバム

好きだった歌が響かなくなったな 誰のせいでもない 僕のせいでもないんだろう ――Galileo Galilei「夏空」 タイトルの通りです。Spotifyをぺちぺち貼ってもいいんですが、聴けないアルバムもあるので、基本はアマゾンリンクです。数年前に十年以上溜めていた…

百合文芸5に「ガールズ・サーチライト」を投稿しました。

案の定、ブログの更新頻度が落ちている。ので、とりあえず告知というか報告です。 www.pixiv.net 内容としてはタイトルの通りです。第五回百合文芸小説コンテストに投稿しようと一週間まえにネタを思いついたのですが、時間がなく、もともと完成済みの原稿を…

依井貴裕『歳時記(ダイアリイ)』/『夜想曲(ノクターン)』

原稿が忙しくなって雑記を書いている余裕がどんどんなくなっている。でも余裕をなくしたらおしまいなのでとりあえず思考の整理がてら書くことにする。水族館のはなしはまた今度落ち着いたら書きます。 依井貴裕『歳時記(ダイアリイ)』 歳時記(ダイアリイ) …

カレーと拳銃と水族館をめぐる断片①

だいたい前日になって翌日の予定を突発的に決めようとすることはあっても、一週間以上前からぜったい日曜日はこうするぞ、と構えていることはかなりすくない。友人とのはずせない予定があるならともかく、自分自身のことについては自分がよくわかっている。…

Bluetoothイヤホンを使い始めた、そして今日も古本市に行く。

博『ゆめくり』第四巻より。かくありたい。 イヤホン:TaoTronics TT-BH07MK2 ちょうど一か月ほど前に、Bluetoothイヤホンを買った。昨年までイヤホンジャックのあるiphone 6sを買い換えたくなくて使いつづけていたが、iOSのヴァージョン更新に伴い使えなく…

ひらりさ『それでも女をやっていく』ほか

引き続き雑記。つづけられたらいいのだけれど、なんか忙しさを理由にしてだんだん書かなくなっていく未来が見える……。 ひらりさ『それでも女をやっていく』 それでも女をやっていく 作者:ひらりさ ワニブックス Amazon このWEB連載を知ったのはもう終盤にさ…

北村薫『雪月花 謎解き私小説』を読んだり、オーディブルを聴き始めたりした。

Twitterを主な生息地にしているとアカウントが凍結などにより『星のカービィ スーパーデラックス』のセーブデータになることが発覚したのがここ一週間あまりのことだったので、今度こそ(いったい何度目なんだ……)ブログ、というか雑記を頻繁に書いていくべ…

吉川良太郎全短編レビュー(仮)

【※】本記事は文学フリマ京都7にて頒布したコピー本「吉川良太郎全短編レビュー(仮)」を一部改訂した再録です。(仮)がついているのは、ほんとうに全短編なのか、ちゃんと調べきった自信がなかったのと、深夜のテンションでつくったため、作業時間もすく…

『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』が試みた、しかし誰にも知られていない小さな演出について。

【※】本記事は『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』への致命的なネタバレを含みます。未見の方はご注意ください。 『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』がその前作であるTVシリーズを含め、画面の中に描写されているオブジェクトが比喩的な、…

タイトルは裏切ることからはじまっている――『ケイコ 目を澄ませて』感想

www.youtube.com 映画館の環境に依っている部分も多いので一概にはいえないのですが、冒頭の数分を観ていて、これはコミュニケーションの、とりわけ齟齬にまつわる部分をするどく描いた物語かもしれない、と思いました。そう一言に還元してしまうことは当然…

2022年よかった音楽を振り返る(アルバム/EP10選&単曲10選)

タイトルの通りです。 こいつ最近振り返りしかしてないな。 2022年になってAMAZON MUSIC unlimitedからSpotifyに切り替えましたが、移行がほんとうにめんどくさかったのでもうぜったいしたくないです(手動で千枚以上のアルバム検索と登録をぜんぶやった人の…

2022年読んでよかった本(百合・シスターフッド・フェミニズム・クィア・その他編)

2022年末まとめ記事をちょっとずつ上げていこうと思います。忙しいので不定期になるかもしれませんが、とりあえず百合・シスターフッド・フェミニズム・クィア・その他からはじめます。昨年いちばん考えたいと思っていたところだったので。 岩川ありさ『物語…

『ぼっち・ざ・ろっく!』でギターをはじめたい人のための覚え書き

陰キャならロックをやれ!!!! ーーはまじあき『ぼっち・ざ・ろっく!』初版帯コメント 目指せ、ギターヒーロー。 【※】このブログは『ぼっち・ざ・ろっく!』を見て、ギターをはじめようと思った人に向けて書いています。 はじめに まず一言。 ぜったい1~2万…

For RIKKA ZINE vol.1 Theme : Shipping(rejected)「宇宙移動美術史のために」

linktr.ee SF書評家・翻訳家の橋本輝幸さん主催による同人誌『RIKKA ZINE』vol.1 のテーマ「Shipping」の公募に送り、リジェクトをいただいたものを改稿して以下に載せます(もともと8000字規定でしたが、改稿の過程でオーバーしました)。 よければお暇潰し…

Kaguya Planet果樹園SF選外作品「時間のかかる密室」

virtualgorillaplus.com 上に応募していたのですが選外になり、どうしましょうかと思っていたところ、 https://t.co/sVtOj1si7Q — VG+ (バゴプラ) | SFメディア (@vagopla) 2022年10月11日 のスペースで最初に講評をいただいたので、せっかくのことですし、…

あなたの知らない(百合)について 曹麗娟「童女の舞」

台湾セクシュアル・マイノリティ文学[3]小説集――『新郎新“夫”』【ほか全六篇】 (台湾セクシュアル・マイノリティ文学 3) 作品社 Amazon その年の夏、私たちは十六歳で、南台湾で一番暑い街にいた。バスがアクセルを踏んだとき、彼女はその前方に駆けてきた。…

(新)本格ミステリの罪とはなにか――北山猛邦『月灯館殺人事件』を誤読する

【本ブログ記事では北山猛邦『月灯館殺人事件』の内容への言及があります。ご注意ください。】 月灯館殺人事件 (星海社FICTIONS) 作者:北山 猛邦 星海社 Amazon わたしたちがおこなっていたのは、ほんとうに「伝言ゲーム」だったのでしょうか。 北山猛邦『月…

2022年上半期よかったものブログ

タイトルの通りですが、まともに生きていないので、本と音楽くらいしか言うことがない。そのときそのときで面白いものはブログに適宜書いていましたが。そちらが見たい場合は、いい感じに遡ってくださると助かります。やっていきましょう。 安井高志歌集『サ…

2022年上半期に映画館で観た映画感想メモ

タイトルの通りです。年末になって思い出すのがかなりめんどくさい、という問題がありさっさとやっておく。基本は原稿作業とかのあいまにリフレッシュ目的で観に行っているので、タイミングを逃したりすることがかなりあった。『マイスモールランド』と『犬…

第4回百合文芸小説コンテストでpixiv賞をいただきました。

ご報告です。 ふだんならFANBOXのほうでお伝えするのですが、現状ではあまり積極的に使う気持ちにもなれませんでしたので、こちらのブログのほうでご報告いたします。 以下リンク。 www.pixiv.net www.pixivision.net www.pixiv.net というわけで、自分の書…

ケンイチくんシリーズ再読メモ①「メンツェルのチェスプレイヤー」

・大学時代に感銘を受けた〈ケンイチくんシリーズ〉を読み直したい。 ・得るものがあるかはわからない。 ・ほんとうはネット上に作者が公開していた『デカルトの密室』参考文献リストをチェックしたいが、消えてしまっているのでわからない。 ・自分の知識は…

終わらない解釈ゲーム――小川哲「スメラミシング」を誤読する

あなたは今、わたしがどういう意味でいったのか、といわれましたね? ――エラリイ・クイーン『ダブル・ダブル』(青田勝訳) 鯨庭『言葉の獣』より ※【注意】本記事は小川哲「スメラミシング」のネタバレを含みます。 文藝 2022年夏季号 河出書房新社 Amazon …