幌田『またぞろ。』とは?
留年生×3が送る人間へたくそ青春コメディ。
約1年間引きこもりだった殊は、春から2回目の高校一年生。
病弱で同じく留年生の詩季、奔放でこれまた留年生の巴、
マイペースで遅刻癖の留年予備軍・楓とともに送るスクールライフは、
普通とはちょっと違ってちょっとイイ。
上記はアマゾンのあらすじ紹介の引用です。
幌田『またぞろ。』(芳文社)は今年3巻で完結した4コマ漫画です。ぼくはこれを泣きながら読みました。ほんとうに、すごく、心から、泣きました。
なぜならば、ここにはぼくのようなひとたちがたくさんいて、ついぞその経験を分かち合うことのできなかった自分の戻らない青春を思い出したからです。ちなみにぼくは大学留年や無職を経験したことがあります。なんなら雇用保険の認定日をすっかり忘れて危うく一か月ぶんの文化的な生活を失いかけたこともあります。
どういうことでしょうか。ここで大阪ハローワークのQ&Aを参照してみましょう。
Q3.認定日にハローワークに行かないとどうなりますか
A.認定日に来られないと基本手当は受けられません。理由によっては認定日を変更できる場合がありますが(「受給資格者のしおり」P18)、その事実がわかる証明書類が必要です。
詳しくは雇用保険課審査給付係へ事前にご連絡ください。
Q4.認定日を忘れていた(過ぎてしまった)
A.やむを得ない理由(「受給資格者のしおり」P18)以外の理由により認定日に来なかった場合、失業認定が受けられません(不認定となります。「受給資格者のしおり」P17参照)ので早急にご来所ください。(基本手当の支給時期が遅くなりますが、受給期間内(*)であれば給付日数が減ることはありません)
(*)受給期間とは、原則、離職日の翌日から1年間です。受給資格者証第1面の「18.受給期間満了年月日」をご覧ください。
要するに決まった日に決まった場所に行かないだけでそれなりのお金が一か月間もらえなくなり、大変なことになります(ふつうの社会生活が営める人にはそれができますが、ぼくにはそれができませんでした)。
そうです。ぼくは生活がへたくそな人間です。
あなたは生活がへたくそですか? でしたらこの漫画はとてもおすすめです。
ちなみによく比較されるのは同じく芳文社からアニメ化された篤見唯子『スロウスタート』ですが、こちらの主人公はとある理由から一年おそく高校に通うことになりますが、劣等感や疎外感はあれど、彼女が問題の原因とは言いがたいところがあります。もちろんこちらも面白いアニメですのでおすすめです。
留年は孤独とのたたかいである
いま、これを読んでいるみなさんがどのくらい留年を経験しているかはわかりませんが、留年生というのはふつう少数です。
よく「勉強ができるひとはできないひとの気持ちをわからない」といったクリシェがありますが、裏を返せば「留年ができないひとは留年をしてしまうひとの気持ちがわからない」ということでもあります。
このように留年生はマイノリティにならざるをえないため、周囲の不理解や蔑みにさらされるだけでなく、できない自分をつい否定しがちなメンタリティで生きています。
いつも孤独で、傷ついている人。それが留年生という存在です。
とはいえ、『またぞろ。』の特殊性は、その孤独な留年生3人(+α)がひとところに集まってスクールライフを過ごすというところにあります。彼女たちはおなじ苦しみを分かち合うことができる。どの人間も孤島ではない(※ジョン・ダンの詩)ように、どの留年生も孤独ではない(泣けるポイントその1)。
わかるなあ~~~~~(糸井重里)。
こう、やっちゃうんですよね。自律する能力がない。目覚まし時計とかそういうシステムで回避できるとか、そういうことじゃないんですよね。
また、ほかにもわかるポイントはあって、巴の同級生が留年を知ったときの反応などもおなじく起こることが多いやつです。こう、自分のことなんですが、どっか他人事に捉えてしまう感じもそうですし、それに対して周りがめちゃくちゃ親身になってくれてなんなら怒ってしまうあたりとかですね(泣ける3)。
と、ここまで書いてきて、「わたし留年経験者じゃないし……」とかえって疎外感をおぼえてしまったそこのあなたにも朗報です。ちゃんとぴかぴかの(まだ)留年してないキャラクターも登場します。ナチュラルクズホスピタリティに満ちている漫画ですね。ありがとうございます。これで明日も生きていけます。
留年生の気持ちを理解してほしい
何度もいうように、留年生は孤独な旅人(※エレファントカシマシの曲)です。世間の影からは逃げられないし、ちゃんとした人間にはなりたいんですよね。でも、ここまでくると頑張ってどうにかなるとかそういうこととはたぶん違うんじゃないかって思うんですよね(ろくろ)。
だってほかの人みたいに頑張れてたら、こうはなってないわけじゃないですか。
わかりますか??? だって留年ってみんな深刻に捉えるから、当人としてはもうなるべく笑ってもらえるようにヘラヘラするしかないんですよ(ろくろ2)。
ちなみにこんな感じで、まあダメダメなんですけど、だめだめであることを認めつつてきとうに生活をするしかないじゃないですか~~という態度でいたら自分は家族に数時間ほど電話でガチ説教されて一週間くらい凹むなどしました。
とはいえ、この漫画のいいところは、そういうヘラヘラ駄目人間を描きつつ、やっぱり他人の留年をいたわることのできる留年生がいるということです。それにつきます。
ちなみにぼくは留年後、同期の友達が卒業して孤独な一年を過ごしたのですが、そのころ、自分が頭を打って気絶して倒れているあいだ、だれもこちらに見向きもせず、その横でその友達がみんなでそろってワイワイ人生ゲームを遊んでいる悪夢にうなされたことがあります。
いまになってこそ笑い話として紹介できますが、当時、孤独なワンルームで目がさめたときはほんとうにつらかったです。いまでも単位が足りない夢は2、3ヵ月に1回ペースでみます。
みんなも足元と取得単位数には気をつけてゆるやかなスクールライフをすごそう! そして『またぞろ。』を買って、泣いたり笑ったり、なるべくはまわりのひとを困らせたりしないようにしていきましょうね!!
留年しそうな/していた/している人におすすめのまんがたち。
どんな島も孤島ではないように、ぼくたちもまた孤独ではない。
ーーところでわたしってどうしたらいいですか?
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エンディング:空中ループ「風のファンファーレ」