摂取記録

下半期よかったもの2024書籍編

みなさんあけましておめでとうございます。昨年はお世話になりました。というわけで年末まとめブログを年明けに発表ドラゴンになります。 なお、上半期については以下のリンクをご参照ください。下半期は集中的・体系的に読めなかった反省もあるのですが、と…

2024年に見たTVアニメまとめ

タイトルの通りです。わたしは過去に何年か『ベスト姉ヒロイン大賞』という企画を立てて年間ベストアニメを選んでいたのですが、維持コスト(時間と労力と感情)が足りず止まってしまったという経験があります。 近年異世界ものアニメがどんどん台頭している…

空気とウサギとテクストと:〈青春ブタ野郎〉シリーズを誤読する。

アリスは、なんだかとってもつまらなくなってきました。土手の上でお姉さんと並んですわっていても、なにもすることがないからです。お姉さんが読んでいる本を一、二度のぞいて見たけれど、さし絵もなければ会話もありません。「さし絵も会話もない本なんて…

君と破滅したくない物語:中西鼎『宮澤くんのとびっきり愚かな恋』、それからラノベと性愛の話。

宮澤くんのとびっきり愚かな恋 (電撃文庫) 作者:中西 鼎 KADOKAWA Amazon 「恋愛感情なんてのはね、一時の気の迷いよ。精神病の一種なのよ」 ――『涼宮ハルヒの憂鬱』より 恋愛感情についてラブコメが抱える巨大な問題、それは「めんどくさい」に尽きるかもし…

光と色と音と距離:『きみの色』について。

【※本記事では映画『きみの色』のネタバレを含みます。未見の方はご注意ください】 www.youtube.com タイトルの通りです。二回観ました。どちらも通常上映(IMAXではなく)。変な色味になってしまっている可能性を避けたかったので。ちなみに宗教的解釈など…

上半期よかったもの2024書籍編

時間たつの早すぎ、光陰矢のごとしワロタ。タイトルの通りです。やっていきましょう。コメントはあったりなかったりします。書籍編以外があるのかはわかりません。 特攻文学論 作者:井上 義和 創元社 Amazon 現代の女子高生がタイムスリップして特攻兵と恋愛…

なぜ古典を解くのかーー米澤穂信『氷菓』を再読するためのメモ。

タイトルの通りです。なんとなく思ったことをいくつかのトピックに分け、だらだら書いています。大したことは書いていません。とくだん資料等は参照していないので、どこかで既出の話題もあるかもしれません。 【※本記事は米澤穂信『氷菓』のネタバレを含み…

狐と狼のゲーム――『冬期限定ボンボンショコラ事件』についてのメモ。

【※本記事は『冬期限定ボンボンショコラ事件』および〈小市民シリーズ〉の内容に一部言及します。未読の方はご注意ください。】 冬期限定ボンボンショコラ事件 〈小市民〉シリーズ (創元推理文庫) 作者:米澤 穂信 東京創元社 Amazon 初っぱなから脱線した話…

きみはアニメ映画『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』の部屋を見たか?

タイトルの通りです。 電撃文庫『青ブタ』公式情報によれば、シリーズが完結するとのことで、めでたいね。アニメ化も最後までするのかな。待ってるね。 dengekibunko.jp 【注】本記事には、青春ブタ野郎シリーズ『おでかけシスター』『ランドセルガール』ま…

『千年女優』をあと何度も観直すためのいくつかのメモ。

???「千年女優を見たことがない? 初恋を経験したことがないならそれでいいけど」 【※】本記事はアニメ映画『千年女優』のネタバレを多数含みます。未見の方はご注意ください。 タイトルコール。ビデオの巻き戻しから入るのが示唆的である。 2月に再上映…

中西鼎『君が花火に変わるまで』感想。

タイトルの通りです。中西鼎『君が花火に変わるまで』読みました。 君が花火に変わるまで (メディアワークス文庫) 作者:中西 鼎 KADOKAWA Amazon 幼い頃に難病にかかっていたはずの子と高校で再会し、「付き合って」と言われる「ぼく」。しかし彼女の行動の…

印象に残った百合漫画2023

タイトルの通りです。じつは同様の企画記事を2019年にもやっていたのですがその後3年にわたって続けることができませんでした。どうしてでしょうか。答え:だめ人間なので。 人気作品?と思われるものは省きつつ、新作や今年に入って自分が読むようになった…

ぼくは幌田『またぞろ。』を読んで泣いた。

幌田『またぞろ。』とは? またぞろ。 1巻 (まんがタイムKRコミックス) 作者:幌田 芳文社 Amazon 留年生×3が送る人間へたくそ青春コメディ。 約1年間引きこもりだった殊は、春から2回目の高校一年生。病弱で同じく留年生の詩季、奔放でこれまた留年生の巴…

『アリスとテレスのまぼろし工場』メモ

※本記事は映画『アリスとテレスのまぼろし工場』のネタバレを含みます。未視聴の方はご注意ください 本記事の態度 ・『アリテレ』は岡田麿里的な作品の集大成だが傑作ではない ・『true tears』『凪のあすから』『あの花』『空の青さ~』『フラクタル』あた…

上半期よかった短編のはなし。

タイトルの通りです。え、もう八月なかばなのに上半期のはなしを? ブログはどんな自由な発想で書いてもいいので……。順不同、新作旧作問わずとりあえず記録用に書いておきます。 エルサ・モランテ「一日」 アンダルシアの肩かけ 作者:エルサ・モランテ 河出…

映画は夢というか悪夢である――『フェイブルマンズ』感想

「スピルバーグの自伝的作品」ということを念頭に入れる。 www.youtube.com これはたぶん、夢という名前の悪夢についての物語だ。 具体的な理由とまではかたまっていないが、自分のなかでは、長年ずっと映画礼讃映画というか、”映像の力を信じろ”系の作品に…

依井貴裕『歳時記(ダイアリイ)』/『夜想曲(ノクターン)』

原稿が忙しくなって雑記を書いている余裕がどんどんなくなっている。でも余裕をなくしたらおしまいなのでとりあえず思考の整理がてら書くことにする。水族館のはなしはまた今度落ち着いたら書きます。 依井貴裕『歳時記(ダイアリイ)』 歳時記(ダイアリイ) …

カレーと拳銃と水族館をめぐる断片①

だいたい前日になって翌日の予定を突発的に決めようとすることはあっても、一週間以上前からぜったい日曜日はこうするぞ、と構えていることはかなりすくない。友人とのはずせない予定があるならともかく、自分自身のことについては自分がよくわかっている。…

ウォルター・テヴィス『クイーンズ・ギャンビット』、BOSS DS-1X(Distortion)

雑記はつづける意味があると思うのでつづけている。いまのところ二、三日に一回ペースだけど、月末は忙しくてそんなこと言ってられないかもしれない。 ウォルター・テヴィス『クイーンズ・ギャンビット』 クイーンズ・ギャンビット(新潮文庫) 作者:ウォル…

ひらりさ『それでも女をやっていく』ほか

引き続き雑記。つづけられたらいいのだけれど、なんか忙しさを理由にしてだんだん書かなくなっていく未来が見える……。 ひらりさ『それでも女をやっていく』 それでも女をやっていく 作者:ひらりさ ワニブックス Amazon このWEB連載を知ったのはもう終盤にさ…

北村薫『雪月花 謎解き私小説』を読んだり、オーディブルを聴き始めたりした。

Twitterを主な生息地にしているとアカウントが凍結などにより『星のカービィ スーパーデラックス』のセーブデータになることが発覚したのがここ一週間あまりのことだったので、今度こそ(いったい何度目なんだ……)ブログ、というか雑記を頻繁に書いていくべ…

タイトルは裏切ることからはじまっている――『ケイコ 目を澄ませて』感想

www.youtube.com 映画館の環境に依っている部分も多いので一概にはいえないのですが、冒頭の数分を観ていて、これはコミュニケーションの、とりわけ齟齬にまつわる部分をするどく描いた物語かもしれない、と思いました。そう一言に還元してしまうことは当然…

2022年よかった音楽を振り返る(アルバム/EP10選&単曲10選)

タイトルの通りです。 こいつ最近振り返りしかしてないな。 2022年になってAMAZON MUSIC unlimitedからSpotifyに切り替えましたが、移行がほんとうにめんどくさかったのでもうぜったいしたくないです(手動で千枚以上のアルバム検索と登録をぜんぶやった人の…

2022年読んでよかった本(百合・シスターフッド・フェミニズム・クィア・その他編)

2022年末まとめ記事をちょっとずつ上げていこうと思います。忙しいので不定期になるかもしれませんが、とりあえず百合・シスターフッド・フェミニズム・クィア・その他からはじめます。昨年いちばん考えたいと思っていたところだったので。 岩川ありさ『物語…

(新)本格ミステリの罪とはなにか――北山猛邦『月灯館殺人事件』を誤読する

【本ブログ記事では北山猛邦『月灯館殺人事件』の内容への言及があります。ご注意ください。】 月灯館殺人事件 (星海社FICTIONS) 作者:北山 猛邦 星海社 Amazon わたしたちがおこなっていたのは、ほんとうに「伝言ゲーム」だったのでしょうか。 北山猛邦『月…

2022年上半期よかったものブログ

タイトルの通りですが、まともに生きていないので、本と音楽くらいしか言うことがない。そのときそのときで面白いものはブログに適宜書いていましたが。そちらが見たい場合は、いい感じに遡ってくださると助かります。やっていきましょう。 安井高志歌集『サ…

2022年上半期に映画館で観た映画感想メモ

タイトルの通りです。年末になって思い出すのがかなりめんどくさい、という問題がありさっさとやっておく。基本は原稿作業とかのあいまにリフレッシュ目的で観に行っているので、タイミングを逃したりすることがかなりあった。『マイスモールランド』と『犬…

ケンイチくんシリーズ再読メモ①「メンツェルのチェスプレイヤー」

・大学時代に感銘を受けた〈ケンイチくんシリーズ〉を読み直したい。 ・得るものがあるかはわからない。 ・ほんとうはネット上に作者が公開していた『デカルトの密室』参考文献リストをチェックしたいが、消えてしまっているのでわからない。 ・自分の知識は…

終わらない解釈ゲーム――小川哲「スメラミシング」を誤読する

あなたは今、わたしがどういう意味でいったのか、といわれましたね? ――エラリイ・クイーン『ダブル・ダブル』(青田勝訳) 鯨庭『言葉の獣』より ※【注意】本記事は小川哲「スメラミシング」のネタバレを含みます。 文藝 2022年夏季号 河出書房新社 Amazon …

ジョナサン・レセムの短編を読む

参考(翻訳作品集成):https://ameqlist.com/sfl/lethem.htm 銃、ときどき音楽 作者:ジョナサン レセム 早川書房 Amazon ジョナサン・レセムという名前と出会ったのは十年くらい前の古本屋だったように思います。タイトルは『銃、ときどき音楽』。 コミカル…