上半期よかったもの2024書籍編

 時間たつの早すぎ、光陰矢のごとしワロタ。タイトルの通りです。やっていきましょう。コメントはあったりなかったりします。書籍編以外があるのかはわかりません。

 

 現代の女子高生がタイムスリップして特攻兵と恋愛する映画の予告編で出演キャストが「こういう人たちがいてくれたおかげで今の日本があるんだな」みたいな発言をしていて映画館でぎょっとしたのだが、じつはこうした考え方はここ二、三十年でどんどんソフィスティケートされてきたものである、という話が語られている。

 

 

 

「ブレスシャドー」、「古の協約」がよかった。

 

「十五までは神のうち」今年ベストSFミステリではないでしょうか。ウェブでも読めます。

www.webmysteries.jp

 

www.webmysteries.jp

 こちらもウェブで公開されているけれども、「4W/Working With Wounded Women」は作者が近年くり返し扱ってきたモチーフの発展系としてとてもよかった。

 

 わたし個人の経験にもとづくのであれば、興味ある人とない人とでいつも隔たりを感じる分野がフェミニズムであるが、以下の長濱よし野氏による竹村和子論はその入口として有用だとおもう。『フェミニズム』はその目的に対して言葉そのものが持っている矛盾を抱えつづけているが(そしてそれは外部の人間からも容易に指摘されうるし、忌避されてもいるが)、それでもなお言葉を手放さずにいることを拾い上げている。

note.com

 

 

 

 サイバーパンクってもはや過去にしかないのかもしれん。

 

 

 坂崎かおる「あたたかくもやわらかくもないそれ」めちゃくちゃよいゾンビ百合。

 

 なつかしジュブナイルの感じがする。ふつうの特殊設定やSFミステリではしないくらいの細かい検討がよかった。本格ミステリ作家にもこのくらいやってほしい。

 

 ループ系SFミステリにおいてトリックよりもギミック的解決をおこなうのはひとつの道な気がする。インディゲーム的想像力。

 

 めっぽう面白いいっぽうで、高学歴中年男性が持っているおれより頭のいい女しか興味ないぜって欲望が全面的にお出しされているのにはだいぶ面食らった。

 

 ベタベタだけどマフィアのボスが死ぬ前に宗教的救いを求めちゃうの好き。シリーズ的には唯一色が違う感じだけれども。

 

 MF文庫Jがこういうストレートな青春もの出してくれるとは思ってなかった。

 

 かいぶつが、あらわれた。

 

 まだ三巻までしか読めてないが、メタラブコメ的な人間玉突き世界における高度なミステリをやっている。友崎くん、千歳くんの系譜でありつつも別のルートを開拓している。

 

 ポスト震災ラノベ。さりげない記述のなかに刻印されることについて。

 

 榊林銘は、多くの国内ミステリ作家が「特殊設定でどのような謎解きができるか」を検討しているのに対して、唯一「特殊設定はどのような物語演出を含みうるか」までを考えている作家かもしれない。

 

 おれはまだこの境地には至れない……。

 

 これについてはいっぱい書いた。

saitonaname.hatenablog.com

 

 たとえば多くの〈日常の謎〉について、主人公・語り手の発見した謎は探偵役の推理によって回収・収束され、世界はひとつの像を結ぶことでこれまで見えてきたものの更新をはかろうとする。けれども『セント・アグネスの純心』において、探偵役の背景にある(キリスト教的な?)祝福に包まれた、調和した世界観と語り手の世界は最後まで一致せず(なぜなら語り手の背景にはピストルズが流れつづけている)、しかしコンフリクトを起こすわけでもない。世界はゆるやかにつながっている。わたしがミステリとして本作にかけたいものがあるとすれば、そのような態度だと思う。ということをもうちょっと長い文章で今後書くと思います(早口

 

 

 

 2024年上半期ベストです。文学と戦争の記憶を文学としてリミックスしながら語ろうとしてもなお、足りない。あまりにも足りなすぎる。

 

 はるしにゃん氏まわりの話についてはほぼ同時代の京都にいた人間としていろいろと考えてしまう。「ちっちゃな頃から逆張って、15で批評と言われたよ」。

 

 激重幼馴染百合の傑作。

 

 どんどん虚無を書くのが上手くなっている。天井が見えない。

 

www.shinshindo.jp 時間スケールがかなりよかった。

 

  さすがに現代日本のつよつよ楽器店創業者が多すぎる。

 

 なにもかもが上手すぎる。

 

 なにもかもがずるすぎる。

 

 わたしは一時期神戸に住んでいた。とはいっても、高校までは関東にいたせいか関西という土地で暮らし育ってきた人と感覚を共有することはとてもむずかしかった(震災を境に多くの建物は入れ替わってきたから過去にはアクセスできないし、自分がその名残を見つけるのはたとえば小さな公園のすみにある慰霊碑くらいだった)し、神戸にいたころは仕事で忙しくてその土地や人のことを知る機会もほとんどなかった、と改めて思う。巻末の「ライフヒストリーを読み広げるためのブックリスト」や口述記録の方法に関する資料もありがたい。

 

www.chosyu-journal.jp

 今年の2月に京都大学でおこなわれた公開セミナー「人文学の死――ガザのジェノサイドと近代500年のヨーロッパの植民地主義」はわたしもYOUTUBEでリアルタイム視聴していたのだけれど、橋本伸也先生の以下のことばはかなり自分にもヒットするものであったと思うので、引用する。

 橋本 日本は「ホロコースト問題」が大好きな国だ。ホロコースト関連の本を出すとすごく売れるので出版社は出したがる。

 

 じっさいは去年の雑誌掲載時に読んでいたのだけれど、いちおう貼る。2024年のわたしたちはほぼみんな戦争を知らない世代だろうけれど、暴力のことならそこらへんの高校生でも知っている。

 

 まだエデン条約編で止まってるし、アニメも全話見れてないけども。

物語のオタク、ツムギ(ワイルドハント芸術学院)。

 以上、50冊(たぶん)。読みたいのに読めない本ばかりがたまっていくね。みなさんも上半期ベストブログの更新を忘れずによろしくお願いします。それでは、よき下半期読書ライフを……。以下はおまけの上半期のプレイリストです。ほな……。

 

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