2023-01-01から1年間の記事一覧

百合短編小説レビュー企画『名づけられなかった花たちへ』第3回:三島由紀夫「春子」

本記事は百合短編小説レビュー企画『名づけられなかった花たちへ』の第3回です。 前回の記事は以下になります。読まなくても本記事の内容は読めます。 saitonaname.hatenablog.com 【※ただし今回につきましては三島由紀夫「春子」の内容に深く言及しますので…

百合短編小説レビュー企画『名づけられなかった花たちへ』第2回:梨屋アリエ「つきのこども」

本記事は百合短編小説レビュー企画『名づけられなかった花たちへ』の第2回です。 前回の記事は以下になります。読まなくても本記事の内容は読めます。 saitonaname.hatenablog.com 第2回:梨屋アリエ「つきのこども」(『プラネタリウム』講談社文庫 収録) …

映画は夢というか悪夢である――『フェイブルマンズ』感想

「スピルバーグの自伝的作品」ということを念頭に入れる。 www.youtube.com これはたぶん、夢という名前の悪夢についての物語だ。 具体的な理由とまではかたまっていないが、自分のなかでは、長年ずっと映画礼讃映画というか、”映像の力を信じろ”系の作品に…

ジェフリー・フォード「創造」を誤読する。

タイトルの通りです。先日、個人的に参加している読書会で「創造」が課題短編となり、数年ぶりに再読しました。そこで考えたことを忘れないうちにメモしておきます。 【※本記事では、ジェフリー・フォード「創造」の内容に言及します。未読の方はご注意くだ…

第2回星々短編小説コンテスト一次通過作品「彼女のチケット」

昨年末にささっと書いていた小説が一次通過していました(最終には残りませんでした)。発表するあてもないのでここに置いておきます。お暇つぶしにどうぞ。 www.hoshiboshi2020.com 第2回「星々短編小説コンテスト」の募集テーマは〈映画〉でして、そういえ…

百合短編小説レビュー企画『名づけられなかった花たちへ』第1回:田村俊子「惡寒(さむけ)」

本記事は百合短編小説レビュー企画『名付けられなかった花たちへ』の第1回です。 前回の記事は以下になります。読まなくても本記事の内容は読めます。 saitonaname.hatenablog.com 第1回:田村俊子「惡寒(さむけ)」(『田村俊子作品集・1』『田村俊子全集 …

百合短編小説レビュー企画『名づけられなかった花たちへ』をはじめます。

タイトルの通りです。今回は企画をはじめるための、ながーーーい告知*1のようなものになります。あるいは企画の第0回といってよいかもしれません。 合計で約16,000字あります。ながい。 要するに、以下は前提を共有するために書いた「百合」に対する個人的な…

わたしをつくった百枚のアルバム

好きだった歌が響かなくなったな 誰のせいでもない 僕のせいでもないんだろう ――Galileo Galilei「夏空」 タイトルの通りです。Spotifyをぺちぺち貼ってもいいんですが、聴けないアルバムもあるので、基本はアマゾンリンクです。数年前に十年以上溜めていた…

百合文芸5に「ガールズ・サーチライト」を投稿しました。

案の定、ブログの更新頻度が落ちている。ので、とりあえず告知というか報告です。 www.pixiv.net 内容としてはタイトルの通りです。第五回百合文芸小説コンテストに投稿しようと一週間まえにネタを思いついたのですが、時間がなく、もともと完成済みの原稿を…

依井貴裕『歳時記(ダイアリイ)』/『夜想曲(ノクターン)』

原稿が忙しくなって雑記を書いている余裕がどんどんなくなっている。でも余裕をなくしたらおしまいなのでとりあえず思考の整理がてら書くことにする。水族館のはなしはまた今度落ち着いたら書きます。 依井貴裕『歳時記(ダイアリイ)』 歳時記(ダイアリイ) …

カレーと拳銃と水族館をめぐる断片①

だいたい前日になって翌日の予定を突発的に決めようとすることはあっても、一週間以上前からぜったい日曜日はこうするぞ、と構えていることはかなりすくない。友人とのはずせない予定があるならともかく、自分自身のことについては自分がよくわかっている。…

ウォルター・テヴィス『クイーンズ・ギャンビット』、BOSS DS-1X(Distortion)

雑記はつづける意味があると思うのでつづけている。いまのところ二、三日に一回ペースだけど、月末は忙しくてそんなこと言ってられないかもしれない。 ウォルター・テヴィス『クイーンズ・ギャンビット』 クイーンズ・ギャンビット(新潮文庫) 作者:ウォル…

Bluetoothイヤホンを使い始めた、そして今日も古本市に行く。

博『ゆめくり』第四巻より。かくありたい。 イヤホン:TaoTronics TT-BH07MK2 ちょうど一か月ほど前に、Bluetoothイヤホンを買った。昨年までイヤホンジャックのあるiphone 6sを買い換えたくなくて使いつづけていたが、iOSのヴァージョン更新に伴い使えなく…

ひらりさ『それでも女をやっていく』ほか

引き続き雑記。つづけられたらいいのだけれど、なんか忙しさを理由にしてだんだん書かなくなっていく未来が見える……。 ひらりさ『それでも女をやっていく』 それでも女をやっていく 作者:ひらりさ ワニブックス Amazon このWEB連載を知ったのはもう終盤にさ…

北村薫『雪月花 謎解き私小説』を読んだり、オーディブルを聴き始めたりした。

Twitterを主な生息地にしているとアカウントが凍結などにより『星のカービィ スーパーデラックス』のセーブデータになることが発覚したのがここ一週間あまりのことだったので、今度こそ(いったい何度目なんだ……)ブログ、というか雑記を頻繁に書いていくべ…

『百合小説コレクション wiz』の著者紹介文の作成協力をしました。

タイトルの通りです。 百合小説コレクション wiz (河出文庫) 作者:深緑 野分,斜線堂 有紀,宮木 あや子,アサウラ,小野 繙,櫛木 理宇,坂崎 かおる,南木 義隆 河出書房新社 Amazon 『百合小説コレクション wiz』の著者紹介ページをちらっと。代表作を並べるので…

吉川良太郎全短編レビュー(仮)

【※】本記事は文学フリマ京都7にて頒布したコピー本「吉川良太郎全短編レビュー(仮)」を一部改訂した再録です。(仮)がついているのは、ほんとうに全短編なのか、ちゃんと調べきった自信がなかったのと、深夜のテンションでつくったため、作業時間もすく…

『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』が試みた、しかし誰にも知られていない小さな演出について。

【※】本記事は『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』への致命的なネタバレを含みます。未見の方はご注意ください。 『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』がその前作であるTVシリーズを含め、画面の中に描写されているオブジェクトが比喩的な、…

タイトルは裏切ることからはじまっている――『ケイコ 目を澄ませて』感想

www.youtube.com 映画館の環境に依っている部分も多いので一概にはいえないのですが、冒頭の数分を観ていて、これはコミュニケーションの、とりわけ齟齬にまつわる部分をするどく描いた物語かもしれない、と思いました。そう一言に還元してしまうことは当然…

2022年よかった音楽を振り返る(アルバム/EP10選&単曲10選)

タイトルの通りです。 こいつ最近振り返りしかしてないな。 2022年になってAMAZON MUSIC unlimitedからSpotifyに切り替えましたが、移行がほんとうにめんどくさかったのでもうぜったいしたくないです(手動で千枚以上のアルバム検索と登録をぜんぶやった人の…

2022年のお仕事、書いたもの、その他告知

あけましておめでとうございます。タイトルの通りです。 昨年はいろいろ書いて、かたちになったりならなかったりしました。そのまとめ記事になります。今年もたぶんかたちになったりならなかったりするかと思います。なにとぞよろしくお願いします。 『ユリ…

2022年読んでよかった本(百合・シスターフッド・フェミニズム・クィア・その他編)

2022年末まとめ記事をちょっとずつ上げていこうと思います。忙しいので不定期になるかもしれませんが、とりあえず百合・シスターフッド・フェミニズム・クィア・その他からはじめます。昨年いちばん考えたいと思っていたところだったので。 岩川ありさ『物語…