だいぶ前に引っ越しをしていたのですが、ようやく最近になって身辺が落ち着き(ダンボール箱に入ったままの本たちの処理がある程度終わり)、読みたいテーマに沿って本を比較的手に取れるようになってきたので再開します。
黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集〈1〉ゴシック編 (新潮文庫)
- 作者: エドガー・アランポー,Edgar Allan Poe,巽孝之
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/03/28
- メディア: 文庫
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モルグ街の殺人・黄金虫―ポー短編集〈2〉ミステリ編 (新潮文庫)
- 作者: エドガー・アランポー,Edgar Allan Poe,巽孝之
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/04/25
- メディア: 文庫
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そういう創作上のパーツにされやすいポーであるけれども、とくに本格ミステリの場合は、引用どころか同じシチュエーションに挑戦する、という特殊な文脈が存在する。つまり、同じパーツ・舞台・状況などを使いつつ、まったく新しい形を見せること自体に価値が見いだされる。伝統芸能っぽいといえばそうであるし、だれがの発言か忘れてしまったけれど「器」にどう盛るか、という趣向それ自体が面白さになる。第nの解答といえば、多重解決ものという特殊ジャンルにすらなりうる。
けれども、もとになる特定の器として面白いのはなんだろうか、と考えだすと、割と難しい。特定の趣向として思い浮かぶのは「50円玉二十枚の謎」*1というシチュエーションであったり、「九マイルは遠すぎる」*2式の連鎖系推理だろうか。密室・誘拐・暗号など小ジャンルはあっても、さすがに細かい条件まで被らせてしまうと、独創的な展開に出来ない難しさがあるのだろう。縛りがきつくなりすぎて、発展性が見込みにくいのかもしれない。そう思っているうちに、ある程度の縛りが用意されているなかでも自由度があり、面白いのでは、と思うものがひとつあった。これまたポーである。「盗まれた手紙」だ。
- 作者: エドガー・アランポー
- 発売日: 2012/09/13
- メディア: Kindle版
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あらすじについては言うまい。探偵についても言うまい。じっさいにこれを受けて書かれたもので、有名なのは間違いなく、
- 作者: アーサー・コナン・ドイル,深町眞理子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2010/02/20
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- 作者: ウィルキー・コリンズ,中島賢二
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/03/14
- メディア: 文庫
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また未読ではあるけれども、ジョン・スラデックが「盗まれたバター」というタイトルの短編を書いている。翻訳はハヤカワミステリマガジンのみ。あのスラデックのことだからうまいことやってくれるかほんとうに残念な出来なのかはわからないけれども、HMMに掲載されたってことは間違いなくデュパンのパロディに違いない。既読のかたがいましたら情報提供してくださるとありがたいです。
- 作者: 坂口安吾
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1990/03
- メディア: 文庫
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- 作者: 天城一,日下三蔵
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2004/05
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- 作者: 清水義範
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2014/10/31
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- 作者: 法月綸太郎
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2013/02/08
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- 作者: 奥泉光
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/11/08
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- 作者: 蓮實重彦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/03/01
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ざっと調べたところでは「盗まれた手紙」を前提とした作品はこれくらい。「盗まれた手紙」は単純な隠し場所の思考パターンだけでなく、犯人/探偵の思考トレースおよび出し抜き、そして手紙じたいがもたらす影響力の問題……とじつはかなり面白い「器」であるように思われるので、さらなる作品が生まれ、また発掘されることを願いたい。