正‐情念小説としての『刀と傘 明治京洛推理帖』個人解説

刀と傘 (明治京洛推理帖) (ミステリ・フロンティア)

刀と傘 (明治京洛推理帖) (ミステリ・フロンティア)

 まだあまり情報が出せないのですが、来年1月の第三回文学フリマ京都にサークル「ストレンジ・フィクションズ」として参加させていただくことになりました。座長は名馬であれば馬のうちのネマノ氏さん(nemanoc (@nemanoc) | Twitter)です。追記などでさらに情報を加えられたらと思います。
 サッシ名は「異色作家短篇集リミックス」という小説競作がメインの創作誌なのですが、そちらで「伊吹亜門小特集(仮)」というのを組む予定です。


 さしあたり、その本誌の頒布に先立って、先月11月30日に発売された『刀と傘 明治京洛推理帖』を勝手に解説する文章を以下に書きました。本誌に載るかはわかりません。載ったらいいですね。たぶん2018年12月現在、世界で最も伊吹亜門について詳しく書いた文章になっていますので、ご興味ありましたらご一読いただけると幸いです。

 また一部作品について踏み込んで語っている部分がありますので、未読で気にする方は、いったん踏みとどまっていただければと思います。




以下本文





『刀と傘 明治京洛推理帖』(東京創元社)巻末に記された著者紹介によれば、伊吹亜門は「一九九一年愛知県生まれ。同志社大学卒。在学中は同志社ミステリ研究会に所属」とある。二〇一五年、当時若干二十四歳の若さで第十二回ミステリーズ!新人賞を授賞し、去る二〇一八年十一月にはじめての単書を上梓した。そこに収められた五つの短編は、そのどれもが幕末から明治に起きた歴史上の事実とフィクションを組み合わせた趣向の魅力だけでなく、本格ミステリという謎解きの枠組みを最大限に活かした、どこか哀しい余韻を残す佳品ばかりになっている。

 では、この才能豊かな作者はいったいどこからやって来たのか。本解説では伊吹亜門の来歴を探るとともに、その作品群に通底する魅力について語っていく。

 伊吹亜門という名がはじめて公的な場に現れたのは、おそらく二〇一一年に発行された同志社ミステリ研究会の機関誌『CHAMELEON vol.27』であろう。そこでは独立した作品はまだ載っておらず、一回生によるシェアワールド連作企画の一部と同大学の出身作家レビューという企画に寄稿しているのみだった。またこのときのペンネームは現在知られている伊吹亜門ではなく、伊吹亞門(ママ)だった。

 とはいえ、注目に値すべきはそのレビューだ。有栖川有栖『絶叫城殺人事件』(新潮文庫)という短編集に関する紹介・概評という向きであるが、その一千字にも満たない文章のうち半分近くを「雪華楼殺人事件」という一編に費やしている。「傑作中の傑作」としてそこに用いられたトリックについて語ったのち、伊吹はこうも記している。「そんな素晴らしいトリックさえ霞んでしまうくらい美しく、そして哀しい幕切れこそが真骨頂である」と。

 詳細について触れることは避けるものの「雪華楼殺人事件」は登場人物たちの心情の機微こそがその根幹を成している作品だ。つまり、まだプロとして筆を執る以前の伊吹は、すでにこの時点でのちの自作品に現れるようなモチーフ、すなわち「登場人物たちの心情の機微」そして「哀しい幕切れ」というものに並々ならぬ関心を抱いていたということになる。

 また、そののちも伊吹門は同サークル内で散発的に作品を発表している。現在われわれが読むことのできるものに関していえば、同志社ミステリ研究会のHP内*1で公開されている『かくれおん傑作選 二〇一二年度前期・後期』に収録された数作の掌編がそれにあたる。とはいったものの、作品それぞれの出来は巻末のコメントで本人自身が述べている通り「学生の書き散らした拙い小咄」の域は出ていない。

 ただ、それらにも見逃せない点はある。そのうちの一編「名前のない美術館」の作中では、G・K・チェスタトン『ブラウン神父の童心』(創元推理文庫)の収録作「折れた剣」に登場する有名な警句をアレンジしたものが用いられている。単純に見えた物事を逆説的に捉え、そこに隠れた裏の事象を見せるのがブラウン神父の得意とするところであるが、伊吹の作品ではその警句が登場人物の隠れた真意を引き出すために機能している。

 こうした登場人物の心を掘り下げていくような推理のアプローチは、現在の伊吹亜門作品にも多く見られることに疑いを差しはさむものはいないだろう。加えて述べておくと、この警句は形を変え『刀と傘』の冒頭を飾る「佐賀から来た男」にも登場している。作者のミステリに対する目配せは、このときから変わっていない。

 さて、こうしたミステリへの関心と登場人物の心情を描くことへの強い情熱は、二〇一五年に新人賞を授賞した「監獄舎の殺人」によって結実し、世間に広く知れ渡ることになる。のであるが、これより遡ること一年半ほど前、そこに登場するキャラクターや描写の雛形とでも呼ぶべき作品がひっそりと世に出ていたことにも触れなければならないだろう。

 それは二〇一三年発行の『CAMELEON vol.29』に収録された「明治探偵浪漫譚・外伝 亜風亭事件」のことで、A4サイズの会誌四〇ページ分にもおよぶ力作だ。このくらいの文量となると短編というより、中編サイズの作品といえる。

 あらすじは以下の通り。舞台は慶応元年(一八六五年)、前年に起きた第一次長州征伐は休戦協定で終わり、威信の回復をし損ねた幕府が再びの長州征伐をおこなおうと画策していた時期の京都。尾張藩公用方の鹿野師光は公家に対し絶大な影響力を誇っていた元大垣藩士の不二門小弐に接触し、朝廷内の風潮を征長反対に傾けようと画策していた。しかし不二門は無数の札によって目張りされた料亭の一室で殺され、その計画も潰えてしまう。当然ながら師光は謀殺を主張するものの、その下手人が密室から消えてしまっている以上、自害と考えるほかない状況だった――。というもの。

 まず目を引くのは「尾張藩公用方(ママ)・鹿野師光報告書」という文章が最初に付され、不可解な謎の詳細を端的に語るスタイル。これは『刀と傘』のうち四作と同じだ。またそれだけでなく、登場する鹿野師光なる人物の描写も「黒縮緬の羽織に鶏卵鞘の大小から一目で武家と分かるものの、その身丈は五尺程である。黒管笠を目深に被り、真夏の風に袂を膨らませながらちょこちょこと歩くその姿は、どこか森鴉を思わせた」とあり、いくつかの変更点はあるものの、それが「佐賀から来た男」冒頭部と重なっていることは明白だ。

 記述されている時系列にも注目したい。『刀と傘』は慶応三年からの出来事を描いた連作であるから、「亜風亭事件」は江藤新平と出会う以前の鹿野師光が遭遇した事件、いわゆるプレストーリーとでもいうべき立ち位置にある。結果的にではあるが、文字通りの「外伝」になっているわけだ。仮に、デビュー以前の作者がこれを意図的に狙っていたとするのであれば、さすがに脱帽するほかないだろう。

 では、ミステリ的な趣向についてはどうだろうか。メインの謎は前述した通りの密室。といっても舞台は完全に近代化する以前の日本であるから、その謎を練り上げた作者の苦労がうかがえる。加えて、「なぜ犯人がわざわざ密室を構成しなければならなかったのか?」という必然性にまで手堅く言及されており、やはりここにもミステリを書こうという心意気が感じられる。終盤の謎解きの場面では、最後の一ピースをはめることにより、探偵役が「なぜ他殺だと考えたのか?」ということへの論理的な種明かし(サプライズ)を用意してみせ、学生が書いた作品としては、かなり手慣れた印象がある。さすがに『刀と傘』収録作の水準には及ばないものの、作者が描こうとしているミステリ像のようなものが、その端々に見える出来になっている。

 そしてなにより、作中に流れている時代の殺伐とした空気感や、登場人物たちが抱くやりきれなさといったものは現在の伊吹作品にかなり近い。ゆえに「亜風亭事件」は鹿野師光というキャラクターにとってはもちろん、伊吹亜門という作家自身にとってもプリクエルと呼ぶべき作品といえる。

 ところで『刀と傘』に収められた作品を読んでいると、その謎の構成やメロドラマティックにさえ感じられる物語描写に、オーバーラップして見えてくるひとりの作家がいる。姓は連城、名は三紀彦。第三回幻影城新人賞でミステリ作家としてのデビューを飾り、その大胆な仕掛けと抒情性に満ちた作品群がいまなお多くのファンを抱えている直木賞作家だ。

 連城三紀彦『戻り川心中』(ハルキ文庫)の解説で巽昌章はその作品について、シナリオ作家志望だったという作者の経歴に重ね合わせ、次のように述べている。

「つまり、作者は一方で私たちをひきこまずにいないような劇的な場面を差し出しながら、それを包むひとまわり大きな真相を用意し、「カメラを引く」ことによってそれをあらわにしてみせるのだ」と。またとりわけその「花葬」シリーズと呼ばれる連作については、読者の抱く「心の働き」を利用して背負い投げをくわされるという意味で「反―情念小説」とでもいうべき存在だと規定している。

 とはいえ、筆者がここで述べたいのは、伊吹亜門の作品が連城作品とまったく同じ傾向にあるということではない。むしろ伊吹作品においては、あたかもその「カメラ」の取り扱いが、連城作品とはネガとポジが反転したかのような様相を呈しているのだ

 わかりやすいのは、『刀と傘』で唯一の倒叙ものである「桜」だろう。冒頭から臨場感たっぷりに描かれるのは、ひとりの女性が自身の練った一世一代の計画に従い、三名もの人間を確実に殺していくその様子だ。読者はそこから目を離せないどころか、物語が進むにつれ焦点を結んでいく彼女の過去に向け、ページと視線を進めていくことになる。

 そして謎解きの段階に差し掛かったとき、カメラは決して引くことはなく、むしろその焦点を合わせた一瞬にだけ、ようやくかすむように見えるひと握りの真意を拾ってみせている。その点にこそ、伊吹作品の特色はある。

 つまり伊吹作品は、連城作品と並べて語るのであれば「心の働き」にどこまでもフォーカスした「正―情念小説」といってよいつくりをしているのだ。

 だからこそ読者は、登場人物たちが抱くそのやるせなく哀しい想いに共感し、胸を打たれる。もちろん作中を彩る花のイメージがそこにいた登場人物の人生を象徴しつつ、謎解きの鍵として機能していることは言うまでもない。

 連城作品との構造的類似は、『刀と傘』に収録されたほかの作品にも見出すことができる。では改めて、前述した「佐賀から来た男」を例に取ってみよう。

 この作品の謎は犯人あて、つまりフーダニットの趣向が取られているが、一読すれば明らかなように、その本領は犯人が指摘されたのちに語られる登場人物の動機、すなわちホワイダニットにある。そしてそこでは、なぜ維新志士は怪死を遂げたのか、という謎に対して両面からのアプローチが取られている。すなわち、被害者の想いと加害者の想い、それぞれに対するカメラのフォーカスだ。

 探偵役のおこなう推理によって読者の目の前に映し出されるのは、被害者に訪れた状況の「外部」に置かれた「ひとまわり大きな真相」だ。それに直面したがゆえにその人物は死ななければならなくなったのであるし、犯人もまた、被害者を殺さなければならなくなってしまう。そしてここでもカメラは引くことなく、その先にある一瞬の心の機微を切り取ってみせている。

 またここで強調しておきたいのは、この「ひとまわり大きな真相」に当事者が直面するという事件の構図が、連城三紀彦の「花葬」シリーズの一編「菊の塵」に酷似しているという点である。とりわけ「佐賀から来た男」における被害者の取った行動は、それを映し取ったかのようでさえある。

 作者がそれを意識的におこなってみせたかどうかはさておき、この類似は作品間の影響関係を語るうえでは見逃せないだろう。よくよく考えてみると、「菊の塵」に見える犯人像と「桜」の犯人像とがどこか重なって見えてくる気がするが、これは言い過ぎかもしれない。ともあれ、未読の方はぜひこのふたつの傑作を読み比べてほしい。

 最後にもうひとつ伊吹作品の特色について述べるのであれば、それは「時代」を切り取った小説であるがゆえに、避けられない運命が登場人物たちを待ち受けているということにあるだろう。

 とはいってもここで、ミステリーズ!新人賞の選評で法月綸太郎が述べたのと同じように「山田風太郎の明治物」を引き合いに出したいわけではない。作品タイトルに「明治」が入るのはおそらくそこへの目配せだと思っていいだろうが、それ以上にはっきりと見える部分がほかにあるからだ。

 つまり『刀と傘』は、江藤新平や鹿野師光といった人々が奔走する、いわば彼らの「青春時代」を切り取った小説としても読めるということだ。

 収録作を順に読んでいくにつれ次第にテーマとして浮かびあがってくるのは、このふたりの探偵役、江藤新平と鹿野師光のあいだに横たわる、避けがたい断絶の予感だ。彼らはふたりともそれぞれの信じる正義があり、そのために時代を、事件を駆け抜けていく。けれども、その立場ゆえにふたりは対峙しなくてはならなくなる。

 この構図はどこか、思春期の少年少女たちが否応なく遭遇する、人間関係における煩悶によく似ている。青春を駆けていく彼らの絆は、過ごしていく時間とともに強く結びつき、深まっていく。けれどもそのどちらか一方にとって許せないものに出会ったとき、そのつながりはいとも簡単に破綻してしまう。そして互いの胸中には、それでも共鳴し合っていた時期が幾度となくよみがえる。だからこそ苦しいし、どうにもならないことをより自覚しなければならなくなる。『刀と傘』において、このどうにもならなさは時代という避けられない運命として物語の糸を引くと同時に、ふたりの探偵役に対して牙を剥くことになる。

 だから、最終話を読み終えた読者の胸に去来するのは、青春のほろ苦さに似た感触といっていい。その味はおそらく、奇しくも伊吹亜門の選考に携わった米澤穂信の作品に通じてもいる。『さよなら妖精』(創元推理文庫)で描かれた、あのどうにもならない切なさをそこに重ねて浮かべてもいいだろう。

 あるいは、そのもの哀しい犯罪たちに、連城三紀彦が描いてみせた抒情的でありながらも妄執的ですらある情念の在りようを見て取ってもいい。「花葬」シリーズの末尾を飾る「夕萩心中」には、次のような一節がある。

 情死事件というのは、現世では愛を成就できない男女が来世に夢を託した結果起きる事件である。さまざまな事情で結ばれることのない二人が、死を最後の絆としてたがいの心を結ぼうとするものである。


『刀と傘』という五つの連作で映し出されたドラマとは、あたかも人々がひそかに結んだ「最後の絆」が推理によって鮮やかに解かれるさまであり、そこに切り取られた、ままならない「青春時代」の一瞬にほかならない。

 ゆえにその点において、伊吹亜門は連城三紀彦の後継者であり、同時に米澤穂信のような優れた青春ミステリの後継者でもあるといえる。


 そしてそのカメラが新しい場面を撮りはじめるのは、そう遠くないはずだ。


夕萩心中 (光文社文庫)

夕萩心中 (光文社文庫)

さよなら妖精 (創元推理文庫)

さよなら妖精 (創元推理文庫)

接種記録

ウンベルト・エーコの小説講座: 若き小説家の告白 (単行本)

ウンベルト・エーコの小説講座: 若き小説家の告白 (単行本)

 テクストの意図についてのある推測が妥当なものであることをどのように証明できるのでしょうか。唯一の方法は、ひとつの一貫したまとまりとしてのテクストにその推測を照らし合わせて検証してみることです。(…)テクストのある特定の部分の解釈は、それがおなじテクストのほかの部分によって裏付けられる場合のみを妥当と認められる(もしほかの部分によって反証されるようであれば、その解釈は却下されなければならない)という考え方です。このような意味では、テクスト内の一貫性こそが、読者の制御不可な衝動を制御しているのです。

薔薇の名前』や『前日島』の創作秘話などが主な内容であるけれども、読者にとっての権能(もしくは制限)について述べている上記引用部分についてはいろいろと考えなくてはいけないなあ、と最近おもっています。

姉ミステリ十戒(試論)

ただの個人的なたわごとです。
世界に(本格)姉ミステリが広がることを求めて。
といっても完璧な姉ミステリは存在しません。最強の姉ミステリはいまだ決まっていない。


■1、姉は物語の当初に死んでいなければならない。
 世界のルールです。これ以上に明確なテーゼはないでしょう。当事者と死者とのあいだにおける位置エネルギーの違いこそが正しい姉の像を結ばせてくれるのです。


■2、探偵過程において、姉の超自然的能力と常人的能力を明確に区別しなければならない。
 姉は天才であっても凡才であっても構いませんが、視点人物の主観と客観性は語りのなかできちんと線引きするべきです。


■3、姉には当事者の知らない秘密がひとつ以上なくてはならない。
 姉に必要なのはある種の神秘性(特異性)であり、それが捜査の過程ではがれようと、はがれなかろうと魅力的な姉に通じることこそが重要です。


■4、未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する技術を姉に用いてはならない。用いる場合は、論理的説明を省いてはならない。
 SF姉ミステリは存在してもよいでしょうが、やはりロジックがスィングしなければアクロバットではないでしょう(©都筑道夫)。


■5、欠番。
 元ネタが現在は人種差別的な色あいを含む可能性があるため、欠番扱いです。


■6、探偵は、姉に関する偶然や第六感によって事件を解決してもかまわない。
 天啓とはすなわち神の言葉に触れることであり、姉はその点では中間領域の存在者*1です。本格ミステリとしておかしくとも、それは「偶然の審判」(©アントニイ・バークリー)である限りにおいて、姉ミステリとしては成立します。


■7、登場人物を騙す場合を除き、姉自身が犯人であってはならない。
 被害者≒犯人は1に反します。それでは姉クライムノベルといったものになりかねません。


■8、読者に提示していない手がかりによって姉を推理してはならない。
 姉ミステリは魅力的な姉を描くことがその本質ではありますが、あくまでフェアプレイに徹していなければその魅力を十二分には見せられないでしょう。


■9、“弟(妹)役”は自分の価値観を全て読者に知らせねばならない。
 彼ないし彼女の考え方こそ、物語における必要条件となります。ただし、それが「判断」であるかは、ここでは明言すべきではないでしょう*2


■10、姉の双子・一人二役の可能性は予め読者に知らされなければならない。
 姉の複数性について、つまり可能(姉)世界の複数性についてです。分析哲学*3について詳しく述べるべきではありませんが、素朴な可能性としての姉、すなわち様相実在論は、今後の姉ミステリの分野開拓において非常に有益となる理論であることは間違いありません。こんにちのメタ言語的世界観における姉解釈は確実に姉フィクションの領域を広げうるでしょうし、それを裏付ける理論として、すでに志村貴子は姉妹を描いています*4



■姉ミステリ(およびフィクション)の一例

 収録作の「青密花」が死んだ姉の話。 被害者が双子の姉(フォーチュンの姉ではなく、登場人物たちの語りによって姉の実像が結ばれている)。
日影丈吉全集〈5〉

日影丈吉全集〈5〉

「戯れに死は選ぶまじ」(「オネエサマは、そういうひとだったと思います」が姉)。 メインヒロインそっちのけで何故姉が最強にならなくてはいけなかったのか、を語る上で完璧な姉アニメ。ミステリではない。
グリザイアの果実 -LE FRUIT DE LA GRISAIA- - PSVita

グリザイアの果実 -LE FRUIT DE LA GRISAIA- - PSVita

 天才の姉がいかに死んだかを語るルートは姉ミステリ。
しあわせだったころしたように

しあわせだったころしたように

 死んだ姉の話。
沙羅は和子の名を呼ぶ (集英社文庫)

沙羅は和子の名を呼ぶ (集英社文庫)

 収録作「オレンジの半分」が姉ミステリ。死んではいない。
狩久探偵小説選 (論創ミステリ叢書)

狩久探偵小説選 (論創ミステリ叢書)

 収録作「落石」が死んだ姉ミステリ。
繭の夏 (創元推理文庫)

繭の夏 (創元推理文庫)

 スリーピングマーダー姉ミステリ。



 みなさまの姉ミステリ情報を心よりお待ちしています。

*1:キリスト教におけるメッセンジャー≒天使

*2:なぜなら姉を殺したのが彼ないし彼女である可能性は最後まで検討されるべきだからです。

*3:http://www.csun.edu/~vcoao0fk/%E3%83%AB%E3%82%A4%E3%82%B9%E8%A7%A3%E8%AA%AC.pdf

*4:わがままちえちゃん (ビームコミックス)

第9回創元SF短編賞 大森望賞受賞作を公開いたします。【2022/9/15 公開を停止いたしました。】

 

 2018年6月11日発売の『ミステリーズ!Vol.89』に第9回創元SF短編賞の選評が掲載されています。私事で大変恐縮ではありますが、このたび織戸久貴(おりとひさき)名義の拙作「夏の結び目」が大森望賞を受賞いたしました。この場をお借りして、選考委員の皆様がたに心から御礼申し上げます。


 また大変ありがたいことに、拙作を読みたい、といった声もうかがうことがありました。公的な(出版物としての)発表の機会はおそらくないと思われますので、これを機に拙作をPDFにて公開したいと思います。ただし、応募時にあった誤字・脱字を修正し、また読みやすさの観点から、一行アキだった場面転換を三行アキにアステリスク(*)を加えたものに変更しています。


 フォーマットは文庫サイズとA4サイズそれぞれをPDFで用意いたしました。内容に変わりはありません。お持ちの端末に合わせて下記のリンクから閲覧・ダウンロードしていただければ幸甚です。

【2022/9/15 更新。本作品は公開を停止いたしました。】


 また、選評は『ミステリーズvol.89』のほか、『年刊日本SF傑作選 プロジェクト:シャーロック』(創元SF文庫)にも掲載されるとのことです。こちらもご確認いただければ幸いです。

アイカツフレンズ!を誤読する。8話

※本記事は、『アイカツフレンズ!』の作品内容について、細かく言及することを目的としています。

8話 みおのCM大作戦!

トップアイドルとして、世間から注目が集まっているみお。
世界的に有名なクリエイターから声がかかり、マカロンのCMに抜擢される。
しかし、いざ撮影がはじまるとびっくり!CMの楽曲は、マカロンのイメージとはかけ離れた「音頭」!?
みおは期待された通り、このCMで「ビックバン」を起こすことができるのか?

脚本:久尾歩 絵コンテ:布施木一喜・五十嵐達也 演出:京極尚彦 演出助手:大島克也 作画監督:橋口隼人・コスモ

以上、ホームページより。

■これまでのアイカツフレンズ!
みおの語りでスタートします。
これまで語りは主人公のあいねがずっとやってきていましたが、はじめてみおが担当しています。
W主人公であるということがだんだんとはっきりしてきました。


■アバン
・きまぐれオンエアラジオ
→エマ、舞花、みおの三人がパーソナリティを担当。
→聴取者のリクエストによって担当者が決まるようです。
→まだ人気のすくないあいねは出番なし。割と意外な演出ですね。
→のちほど描写されますが、自宅でラジオ放送を聴いているようです。

・一瞬リクエストメールの文面が映ります。

→どうやら、みおのファンが、彼女が変わったことを感じているようです。
→あいねとの出会いがみおに変化をもたらしたことは、6話でも語られていました。
→とはいえ「もしかして恋!? だったらどうしよ〜!?」ではありませんよ。
→むしろそれ以上の可能性が高いのでは。

・「ダイヤモンドフレンズカップ」について
→ラジオネーム「きゃるるんるん」さん。
→おそらくは、ももね(あいねの妹)ですね*1
→舞花「一年の締めくくりにおこなわれるフェス」
→エマ「アイドルユニットつまりフレンズのなかから、その一年間のナンバーワン、ダイヤモンドフレンズを決める大会」
→前話の誤読時に軽くふれましたが、カレンとミライが優勝した大会のことです。
→みおが目指しているのも、このダイヤモンドフレンズです。
→みお「そろそろフレンズを組む相手、探さないとね」

■Aパート
・みおの住むタワーマンション

→テレビ画面が鬼のように大きいですね。何インチなんだ…。
→見るからに裕福な家庭ですね。いまだに登場していない親の職業が気になるところです。
→舞花「みおちゃんの家に行ってみたーい、って言ったの、たぶんあいねがはじめてよ」
→エマ「ちょっと近寄りがたい雰囲気あったもんね」
→ずばずばと言われています。

・あいね「たまきさんはフレンズを組むにはまだまだだって」
→舞花「ダイヤモンドフレンズカップに出場するにはまず、フレンズを組んで」
→エマ「ふたりでフレンズドレスをつくって」
→みお「優勝狙うなら、それだけじゃ足りない」
→「ベストフレンズレアドレスも必要よ」
→さらっとあたらしい用語が出てきました。おそらく能力値の高いドレスなのでしょう。

・みおの部屋。
→オープニングの冒頭にも出てきた場所ですね。
→本棚には図鑑や百科事典が並んでいます。豊かな教養。
→壁には色彩のある抽象画。どこかモンドリアンを彷彿とさせます。彼女のルーツが垣間見えます。
→エマ「パソコン使えるの?」
→みお「これで動画をアップしているんです」

→おすすめのチャンネルにはラブミーティアがサジェストされています。
→つまりみおはふだんからカレンやミライの動画をくり返し見ているということが察せられます。芸が細かい。

・みおのオタクグッズコレクション
みお「どれから見る?」
→「ここからここが雑誌の切り抜き」
→「あっ、ライブDVDと出演したテレビの録画も全部あるから言ってね!」
→「きょうは思う存分、ラブミーティアについてをみんなと語れてうれしいな!」
→全力投球のムーヴ。いいと思います。
→舞花とエマは若干引いていますが、あいねは物怖じしません。

・小学生時代のみお


→スターハーモニー学園の制服を着たカレンとミライ。
→みおが同様にスターハーモニーのアイドル科に入学した理由はここでしょうか。
→みお「カレンさんもミライさんも、ふたりがフレンズを組む前から知ってたし」
→「ひとりひとりがすごく輝いていた。でも」
→「フレンズを組んだふたりを、ラブミーティアをはじめて見たとき」
→「人生で最高にビビッと来たの!」

・エマ「わたし、みおちゃんに訊きたいことがあったんだ」
→「あのさ、みおちゃんはどんなフレンズを目指してるの?」
→「もしかしたら、わたしたちとフレンズを組むことになるかもしれないし」
→「どんな相手か聞かせてよ」
→みお「わたしの目指すフレンズ…」
→あいね「…」


→その問いに対し、即答せず考えるみお。
→そして、言葉にならないが、声をもらしながらそれを見つめるあいね。
→真剣な表情の舞花とエマ。
→今回は冒頭からそうでしたが、みお、舞花、エマの三人と、あいねのみという3:1の構図が多いですね。
→いまのところ、あいねにとってアイドル活動は友達をつくることと同義ですから、その違いが暗に示されているとも言えます。それがどのように変化するかは想像できませんが。
→そしてたまきからの着信による中断。
→CMのオファー。

ムッシュ=ザックバラン
→みおいわく「尊敬するクリエイターさん」だそう。
→ラブミーティアのPVも手掛けている。
→おそらく動画を見たり、記事を読んだりしてみおはその情報を手に入れた、ということでしょう。

・チョコミント味のマカロン
→コンビニで大々的に売り出す商品。
→みおの食レポ「スイーツ界のルネサンスですね!」
ムッシュ「あなたはこのマカロンを完璧に理解している」
→どういうこっちゃ。


■Bパート
・マカロン音頭
→どういうこっちゃ。
→そしてCMの撮影へ。
→天才。

・たまき「でも、なんで最初のかっこいいCMじゃあ駄目だったのかしら?」
→みお「このマカロン、コンビニで売る商品だって言ってましたよね?」
→「子供からお年寄りまでたくさんの人が来る」
→「でもマカロンって馴染みがないし、すこしお高そうなイメージがありませんか?」
→直接の言及はありませんが、エマのいう「ちょっと近寄りがたい雰囲気」ともオーバラップしているように聞こえます。
→そういう点で、ムッシュの采配はやはり的確だった、ということでしょうか。
→そして、なにかを思いついたみお。


・PCの画面を見つめながら考えているみお。
→そこに舞花とエマが。
→手伝いを申し出たようです。

・スターハーモニー学園の中庭。
→今度は「みおちゃーん!」とあいねが。
→みお「人数が多ければ多いほうがいいの」
→あいね「じゃあアイドル科のみんなにも参加してもらおうよ!」
→エマ「知ってた? あいねちゃん、もうアイドル科の全員と友達だよ」
→ひと月あまりで三学年制覇。底知れなさを感じます。
→今回あいねの動きがあまり見られないようでしたが、水面下ではかなり活躍していたようです。3:1の構図が活きています。

・鳴り響く鐘。
→みおとあいねが出会い、重なると時は刻まれるんですね。

・女子学生「みおちゃんで検索してみよう」
→三日で百万再生。つよい。
→舞花「今年の流行語大賞、イケるんじゃない?」
→みお「みんなのおかげよ、ほんとうにありがとう!」
→まぶしい笑顔。
→あいねはこれまでのストーリーで何度も「ありがとう」と口にしていましたが、みおが言うのは珍しいですね。
→つまり「ありがと⇄大丈夫」ですね。
→そしてまた強調される3:1の構図。
→あいね「はいはーい! あたしも!」
→「フレンズは組めないけど、アイカツ頑張りまーす!」


■ステージ楽曲「6cm上の景色」
・ドレスはネオコンビネーションコーデ

→やっぱりモンドリアンっぽさのある演出ですね。

・みお「異なるものの組み合わせで、あたらしい可能性が無限に広がる」
→「わたしはそのことに、なにより魅力を感じるんです」
→こういった複数のものを混ぜていくという姿勢は前話で出てきた明日香ミライの「チガカワ」の発想にちかいですね。

→EDでもみおの視線のさきにはステージに立つミライがいます。
→みおにとってのルーツがここにあるのであれば、どう超えていくのかが気になるところです。

・みお「まるでラブミーティアを見てるときみたいに」
→(…)「想像をはるかに超えていく」
→「そうだ。わたしの目指すフレンズもおなじ」
→「ふたりで、ビッグバンを起こせる相手…」
→「それが、わたしの求めるフレンズ…!」

3話のときも感じましたが、みおが中心になる話の脚本は、伏線というか、筋のようなものがかなり明確に打ち出されている印象がありますね。両方とも、おなじ久尾歩という脚本家さんによるものですので、そういった癖かもしれませんが、理論派のみおらしさが出ていていいと思います。今回は動画を使うといった彼女のならでは手腕の活きた演出でした。


そして次回はあいねのプレミアムレアドレスが登場するのかどうか。ファンミーテョングというアプローチになるようです。
スターズでは10話のときに大きな壁がありましたし、あいねにとっての壁になることは間違いないでしょう。
彼女がどう戦っていくのか、誤りつつも見届けていきたいと思います。
カロンモチロン進化論。

*1:星宮いちごの弟であるらいちは、ライチンゲールという名前でラジオメールを送っていましたね。

アイカツフレンズ!を誤読する。7話

※本記事は、『アイカツフレンズ!』の作品内容について、細かく言及することを目的としています。


7話 ミライへ続く道


ラブミーティアのミライからの指名で、あいねはドラマ『アイドルは魔女!』のゲスト出演が決まった。
練習を重ね、完璧にセリフを覚えたはずなのに、ミスを連発してしまう。
そんなあいねを外に連れ出すミライ。ミライ流の励ましとは!?

脚本:千葉美鈴 絵コンテ:米田光宏 演出:米田光宏 作画監督:西島加奈・渡辺舞

以上、ホームページより。



 今回も誤っていきたいと思います。

 第7話は憧れの先輩キャラのひとり、明日香ミライさんが中心となるストーリーのようです。ホームページのキャラ紹介によれば高校二年生。ということは中学二年のあいねやみおからすればかなりのお姉さんですね。十代における年齢差はそれだけで年上を大人にみせてくれます。

「ダイアモンドフレンズカップ」という耳慣れない言葉が載っていますが、おそらくこれが、アイカツフレンズにおけるトップアイドルを決める大会なのでしょうか。また、スターハーモニー学園の卒業生とありますから、無印やスターズのように高等部があるわけではないようですね。今後、このあたりの掘り下げがあるのかもしれません。

 というわけでちょっと奇抜なお姉さんキャラ、明日香ミライとは何者であるのか、誤読していきましょう。


■アバン
・夜の倉庫街。
→麻薬取引現場でしょうか。明言はされていませんが、地味にヘヴィーなネタですね。
→月を背負ってミライの登場。
→なにとはいいませんが、オマージュっぽいですね。
→組員っぽい人々は猫になりました。にゃーん。この落差。リアリティがぶっ壊れています。
→「この世に悪がある限り、アイドル魔女は今日も往く!」

・画面が引き、スマホに表示されていた映像だということがわかります。
→そういえばこれまでのシリーズでは空中に映像が投影されていることが多かったのですが、こちらはノーマルに現代技術といった感じですね。
→みお「一見子供向けかと思いきや、深いテーマで大人も夢中になっちゃう大人気の連続ドラマ!」
→実質アイカツシリーズへの言及のようなものですね。

・『アイドルは魔女』の主演、明日香ミライについて。
→みお「やさしくて、とっても綺麗で」
→あいね「つよくて、芯があって」
→「「カリスマアイドル魔女!!」」

・そしてドラマへのゲスト出演が決まります。
→相変わらず早い展開ですね。たった二分半です。

■Aパート

・あいね「あたしがドラマ…でもどうして?」
→たまき「主役のミライのご指名よ」
→「この前、ラブミーティアのMCのオーディションがあったでしょう」
→「そのとき、あいねを見て、なにか感じるものがあったそうなの」
→さりげないですが、こう、お仕事がつながるっていいですね…。ほんとうに…。

・みおの演技指導を受けるあいね
→緊張ですぐ不自然になってしまうあいねい比べて、芸歴のあるみおは慣れています。
→さらにエマ、舞花も登場。
→エマはアクション映画の主演経験あり。見る限りかなり体幹がよさそうですね。
→そして舞花はミュージカルのヒロイン経験あり。
→蝶乃舞花を演じる美山加恋さん自身もミュージカル経験があるようです*1。このあたりは脚本の妙といったところでしょうか。

・車のなかで会話をするラブミーティアのふたり。
→カレン「でも、演技未経験なんでしょう」
→ミライ「あいねちゃんにお願いする役って、とってもワクワクする役なんだ」
→「あいねちゃんの顔が思い浮かんじゃった!」


・撮影当日、車から登場するみお。
→みお「説明します、たまきさんが急なトラブル対応で〜たまたまオフだったわたしが同行することになりました」
→前話の「あいね、来ちゃった」*2を思い出すムーヴですね。
→たぶん合流前にまた練習してたんじゃないでしょうか…自分のキャラに合うように…。今回みおは演技もできることがわかりましたし、その説が高まります。
→いや、じっさいはふたりの会話の通り「あいねのことが心配」で「ミライさんに会えるのがうれしい」のでしょうが…。

・撮影現場に案内するみお。
→やはり慣れていますね。
→対して、驚いたり、興味津々のあいねです。

・一発オーケーを出すミライ。
→南野監督「なんのなんの〜」
→わかりやすいノリのキャラですね。

・あいねを紹介するみお。
→「あの、きょうはよろしくお願いします」
→先に声をかけるあたり、先輩としての行動がとれています。



・マネージャーらしく、進行表を手にとってやってくるみお。
→みお「あいね、最初の撮影はみんなで特訓したシーンよ」
→あいね「…」
→みお「特訓どおりやれば大丈夫。頑張って」
→あいね「…」
→けれども、優しいみおの言葉は届きません。そのまま撮影に突入し、NGがつづきます。


・休憩中

→みお「ご迷惑をおかけして、申し訳ありません」
→あいね「すみません!」
→あいねより先にみおが言葉を出すのがいいですね。
→言葉遣いの違いはありますが、しっかりと頭を下げるあいね。
→もしかするとお店のお手伝いのなかで学んだのかもしれません。

・控室
→あいね「台詞は全部憶えているのに…」
→みお「練習しよっか? わたしが相手になるよ」
→相変わらずみおは優しい言葉をかけますが、ナーバスになっているあいねには届きませんね。
→このあたりが、まだお互いのことを理解しきってはいない、という部分なのかもしれません。
→みおは自分にできるケアをしようとしますが、それがあいねにとってうまくはたらくわけではないことに、自覚していないようです。
→そこに「やっほー」と気さくな雰囲気でやってくるミライ。
→ミライ「ちょっと、あいねちゃん借りていい?」


■Bパート
・撮影スタジオの外
→あいね「あの、外出てもいいんですか?」
→ミライ「わたしたちのシーンは夕方から撮ることになったから、大丈夫」
→根回しがいいですね。

・カフェにやってきたふたり。
→ミライ「ここのスイーツはおいしいだけじゃなく、チガカワなんだな」
→「チガカワ」という言葉に合わせて曲調が変わっています。変化そのものがわかる演出ですね。

→あと何気ないですが、ケーキにフォークを差し込んだあとにその表面に生地やチョコレートがつくのいいですね。細かい。
→あいねはオレンジジュース、ミライはコーヒーでしょうか。ここも細かな違いですね。
→あいね「あっ、ふつうと違って可愛いから、チガカワ?」
→ミライ「ピンポーン! そういうのってワクワクするよね?」

・ミライ「トモスタに写真のせよっと」
→トモスタグラム。この世界におけるインスタグラムのようなものでしょう。
→フォロワー八百万…強者ですね…。


・場面は変わって、川沿いの道へ。汽笛の音。

→ここでようやくミライの私服の全身がしっかりと映ります。
→ちょくちょく映っていましたが、カメラの位置を下げている*3のは印象的ですね。
→左右非対称の色をした脚が、目を引きます。
→ミライ「ねえ、次はあれに乗ろっか」
→あいね「水上バス?」
→トモスタを活用しているだけあって、写真を撮りまくっているミライ。
→3話でぶれぶれの写真を撮っていたみおとは対照的ですね。
→ささやかですが、これも対比でしょう。ホビーを使っているのがニクい演出です。


・ミライはさらにあいねを連れまわします。

→ミライ「ミルキージョーカー。わたしがミューズを務めるブランドのお店だよ」
→ここで、ミライはあいねにリボンをプレゼントします。
→ミライ「じゃあ、あいねちゃんの衣装に追加しちゃおう」
→あいね「いいんですか?」
→ミライ「うん。わたし、スタイリストも兼任してるから」

・ミライ「ドレスやアクセサリーって自分を高める大切なもの」
→「自分のそばでいちばんの味方になってくれる存在だもん」
→あいね「そっか! 友達ってことですね!」
→得心した様子のあいね。うれしそうです。カード≒ドレスも友達。1話のメッセージがつながっています。


・またここで、ようやく明日香ミライの本質めいたものが見えてきました。
→左右非対称なデザインの服といい、人にモノを分け与えて元気づける行動といい。
→つまり、サーカスの道化師(ジョーカー/クラウン)ですね。
→みおは言葉であいねをケアしようとしていましたが、それに対してミライは行動の人です。
→道化師は言葉をしゃべりませんから、こうして、あいねを連れまわすことにこそ意味があるということです。
→よく自分でつくった風船を子供分け与える姿が道化師にはありますが、それがドレスになっています。


・撮影スタジオに戻ってきたふたり。
→あいね「あの、ミライさん。あたしのこと、励ましてくれようとして…?」
→ミライ「そう思う?」
→あいね「違うんですか?」
→「さあ?」とはぐらかすミライです。道化師は多くを語りません。

・みおと合流したあいね。
→みお「トモスタ見たよ」
→「もう、人の気も知らないで…」と今回積極的にかかわることのできなかったみおです。
→トモスタは、ミライにとっての友達アルバムのようですね。
→「ドーンと来い!」といつもの台詞も出るようになりました。


・改めて本番
→ミライ「気づいてないのね、あなたこそ、アイドル界に奇跡を起こす存在なのよ」
→意味深な言葉ですね。ドラマチックアイロニー


■ステージ楽曲「アイデンティティ
→ドレスはバニーパレードコード。
→ミライ「可愛いだけじゃない、チガカワなドレス!」
→サーカスの曲芸や舞台を思わせるつくり。
→道化師のような帽子も見えますね。
→「わたしは異色」「違っていいんだ」
→そういうわけで、明日香ミライというキャラクターの本質と先輩らしさが垣間見える回でした。


・ドラマ放送
→地上波と思われます。
→トモスタ。いいね!が「25,806件」ついています。
→あいねの人気がどんどん上がっていくということで、これから忙しくなりそうです。
→また、あいねの友達アルバムもこうしてアップグレードしていくようですね。

次回はCM。湊みおさんがまた頑張るようです…。
彼女には最高にハッピーになってほしいですね。

どんなビッグバンが起きるのか、気になりつつ次回もまた誤っていきたいと思います。チガカワ。