なんだか近隣でアニメのオールタイムランキングを語るのがはやっているようなので便乗することにします。といってもほぼゼロ年代以降ですね、世代的に。
■10位 氷菓 第18話 連峰は晴れているか
せんじつメフィスト賞を受賞した作者がこれを見ていたそうなので立派な古典となりつつあるのでランキングに入れようと思いました。仮に、子供の論理と大人の論理というのものが存在するのであれば、日常を舞台にしたミステリにおいてそのふたつを同時にかつ克明に描いた作品はこれ以外にないような気がします。「よかった、覚え違いではなかった」からゆっくりとずれていく個人(つまりは探偵)の視点が子供のままでいられない、という成長そのものになっているのが白眉ですね。謎そのもの、というよりはスタンスの問題ですが。また推理にあたって過去の新聞記事をあたる、というのはある意味高校生にできる最大限の捜査であって、このシリーズらしさ、という点でもとても地続きなよさがあると思います。
■9位 LAST EXILE
当時からラピュタのパクリだのスターウォーズなんだのといった話はあったような気がしますが、わたしが受けたセンスオブワンダーはたしかにここにあったような気がします。わけのわからないルールによって縛られ、人員をランダムに減らしていくだけの駒取りゲームのような戦争描写、燃料によって汚染された川が暗闇で青白く光る様子、孤独な運び屋、隠れた王族。古代につくられた巨大な建造物。そしてスペースオペラ的な壮大なエンディング。どれをとってもワクワクする要素に満ち溢れています。
■8位 雲のむこう、約束の場所
さすがにセカイ系と村上春樹的な部分をつなげようとするお話はほぼ(賞味期限がすぎたのか)なくなった感がありますが、ゼロ年代にあったセカイ系的なものに対する自己批評的な作品といったらこれ以外にはないわけで、SFアニメで量子論てきな部分を扱いつつそれなりにしっかりとまとめているということは10年代もすで終わろうとするなかでちゃんと語っていくべきなんじゃないかと思うのですがいかがでしょうか。ギャルゲーっぽいヒロイン像や、内省的な主人公に対するアレルギーは仕方ないんじゃないかとは思いますが……。それでも世界のよくわからないルールを一手に引き受けるヒロインであったり、最果てというものがあるのかもしれない、ということに対する名状しがたい望郷感といったものはまぎれもなくイノセンスでしょう。といっても、なにかの企画で監督作品がとりあげられるさい、だいたいこれがまず最初に外されるのはSFである所以なのだろうな、とは思ったりしています。映像的にエポックであるか、といわれると、特にいうことはないような気はしています。
■7位 夏色キセキ
夏というのはそれだけでひとつのジュブナイルてき題材たりうるわけですよね。そういうなかで見放された作品は数多くあるわけなんですが、わかりやすい男女の恋愛模様でお茶を濁すわけでなく、あくまでその時期であることに対してつよい意味付けをしていたという点から(結局はその部分が全体を通さないとわかりにくく見放されてしまったのかもしれませんが)改めて見てもらうべき作品ではないかと思います。
中学時代という幼い夏に起きうるであろうエピソードにすこし・ふしぎ的な食感を与えつつ語られていく丁寧さは目を見張るものがありますし(なにしろ起きるふしぎな出来事が毎回変わっていくのがこのアニメの面白さですから)、その積み重ねを見ていくわれわれも結果的にまたひとつの夏を終わらせることになるんですね。そういう作品っていいですよね。よくないですか? えっ、いまならアマゾンプライムで全話見れるっていうんですか、じゃあみましょうよ、いますぐ、いまから、あるいは明日から!!
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■6位 普通の女子高生が【ろこどる】やってみた。
アイドルアニメはこの数年でおそろしいほどに群雄割拠の時代を迎えていますが、そのなかでも異彩を放っていたのはこの作品ではないでしょうか。地方都市の役所による活動が基本となっているため、いわゆる華々しい活躍そのものは描かれないものの、そういった舞台に普通の子がどのように変化を与えていくかが描かれます。ユニットの曲よりもあとから出てきたゆるキャラの楽曲のほうが早く出てきたり(じっさいに作中のBGMバリエーションも多い)、ライブをするごとにだんだん歌がうまくなっていくといった演出はほかになく、ファン層に愛されている作品だと思います。天才百合脚本家である綾奈ゆにこによる作品解釈と作風がしっかりとかみ合った作品でもあり、シリーズ構成を務めたバンドリ!やきんいろモザイク、フリップフラッパーズなどが比較的有名ですが、こちらの作品も一度見ることは大切ではないかと思います。彼女のエッセンス的なものは確実にここにある気がしています。
■5位 Just Because!
さくら荘のペットな彼女や鉄血のオルフェンズでアニメ制作にも携わってきた鴨志田一がすべての脚本をやってのけるという偉業を成し遂げた記念碑的作品です。特筆すべきなのはどこまでもなされる絵コンテの反復であったりキャラクターの細かい演技などまで取り込んでつくられた演出で、8割がたの話数の絵コンテを担当している小林敦監督も今度の活躍が見放せないと思います。アニメだからこそできるカメラワークといい、細かな演出については下の記事に載せているので、気になった方は読んでください。完璧本気になりましょう。個人的に2017年最も面白かった群像劇だと思います。
アニメJust Because!を誤読する1 - ななめのための。
■4位 人狼 JIN-ROH
押井守と今敏関連作品はあげないつもりだったんですが、傑作だったので仕方ないと思います。沖浦監督なのでセーフ、みたいな。特にいうことはないんですが、やっぱり月のシーンはしびれてしまいますね。人類のセキュリティホールを狙い撃ちしてくるような演出ですし、仕方ないと思います。仕方ないんだ。
■3位 イヴの時間(配信版)
劇場版のほうではありません。アンドロイドの服が変わることにさえ伏線がある緻密な脚本やカメラワークはいまみても惚れ惚れしますし、ミステリがすきな子で見てないなら見る以外の選択肢はないんじゃないでしょうか。セクサロイド回の二転三転する演出は初見時、最高に脳によかった記憶があります。どこでなにを映すかという作り手側の情報コントロールによって見ている側がハックされる感覚をどこまで味わいましょう。あとなにより配信版は姉がいいんです。とても。とても、いい。
■2位 劇場版機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-
いわゆるお祭りてき劇場版の一種なわけなんですが、TVシリーズでやってきたこと(結構エグい)の対価を払いつつ、登場人物たちの"その後"というのをどう描けばよいのか、というテーゼへのアンサーでアンチテーゼでありメルクマールになった作品ではないでしょうか。正直これ単独で見た場合にどうなるのかは経験したことがないのでわからないのですが(ほとんどキャラの来歴に対する説明がない代わりにそういう視聴者を代弁するキャラは存在する)、TVシリーズで逃げてばっかりだった主人公がほんとうに逃げられなくなったときにどうなるのか、という点でとても思い切りのある復讐モノになっていて、アンチヒーローからダークヒーローになって行く流れを一本でつくりあげているというのがとてもいさぎよいし、かっこいいんですね。主人公の乗るロボット(の構造)がその心情を代弁しているというのも、とても魅力的だと思います。
■1位 青い花 Sweet Blue Flowers
せんじつ数人に1・2話を無理やり見せることしたのですが、わたしを含め全員の息が止まるという稀有な体験をしました。実質これが11話までつづくので作劇としては天才の域なのではないでしょうか。惜しむらくは現在ネット配信などでは見られないことでしょう。志村貴子という天才の仕事を映像にするにあたって、いかに間をうまくつくるのか、というのはTVシリーズでやるにはなかなか難しいと思うのですが、それが見事にできているのですから一見の価値はあると思います。第一話の黒塗り画面で「ごめんね」が入ってく瞬間とか、いまでもぞっとしますし、当時三巻までしか原作がなかったわけですが、それをうまく構成してひとつのシリーズにする手腕もとても素晴らしく、どのキャラもほんとうに動きにムラがなくて、群像劇であることを何度も感じます。というわけでマスターピースです。
以上、10作でした。
■その他選外(順不同)
・アイカツ!(および劇場版)
・アイカツスターズ!(および劇場版)
・きんいろモザイク Pretty Days
・serial experiments lain
・灰羽連盟
・今敏作品すべて
・イノセンス(押井守)
・ゆゆ式
・デジモンテイマーズ
・灼熱の卓球娘
・UN-GO
・リズと青い鳥
・劇場版 響け!ユーフォニアム〜届けたいメロディ〜
・∀ガンダム
・ブレンパワード
・日本橋高架下R計画
・BPS バトルプログラマーシラセ
・宇宙よりも遠い場所
・THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!
・夜明け告げるルーのうた
・アリスと蔵六
・苺ましまろ
・三ツ星カラーズ
・紅 Kurenai
・四畳半神話体系
etc...