アニメJust Because!を誤読する4

 引きつづき、また過ちをおかしていきたいと思います。今回は第五話、第六話。年を越して、みんな気まずい雰囲気からのスタートです。頑張るぞい。

アニメJust Because!を誤読する1 - ななめのための。
アニメJust Because!を誤読する2 - ななめのための。
アニメJust Because!を誤読する3 - ななめのための。

■第五話 Rolling stones
 サブタイトルは直訳だと「転がる石たち」でしょうか。手もとの電子辞書にあるジーニアス英和辞典によれば「A rolling stone gather moss.」が「転石苔むさず」で、ふた通りの解釈ができる言葉のようです。音楽雑誌とは関係なさそうです。ちなみにリーダーズ英和辞典には「恋の相手を次々変えると真の愛は得られない」とあります。解釈はご自由にやっていきましょう。

 スマホのアラーム。一月五日金曜日の朝です(誤読1*1のとき、舞台は2015〜16年と推測していましたが、5日で金曜日なのは2018年ですね。やはり誤ってしまいました)。泉のスマホと部屋のアナログ時計とで時間が違いますが気にせずにいきましょう。目の下に若干くまが見えます。相馬はさらにひどいくまですね。というわけでこのふたりの「学校、行きたくねえ……」と暗い始業式のはじまりです。

 昇降口。「えのすい」グループでは馴染んでいた印象ですが、泉は相変わらずほかの生徒たちからすれば部外者です。夏目が前回のことを謝ろう思った矢先、赤縁眼鏡のクラスメイト(鈴木)が。
「なに、相馬でもいた?」「えっなんで?」「なーんだ、違うのか」「なに急に?」と戸惑う夏目ですが、鈴木は初詣のさい、相馬と森川のツーショットを目撃していました。そのときにおしゃれっぽいクラスメイト(佐藤)から夏目が相馬を気にしていることをはじめて伝えられたので(鈴木さんは鈍感)さっそく初日からぶち込んできたようです。

 廊下。しゃべっている相馬に気づいて、教室に入ることをためらう森川。そこに乾が声をかけてきます。第一話(終業式)で教室から出られなかったのとパラレルな演出です。相変わらず森川は他人が苦手なようです。
 この学校ではパーカーをブレザーの下に着込む女子は比較的多いようですが、ダッフルコートは森川だけですね。のちに察することができますが、要するに「おしゃれは我慢」みたいな風潮と思われます(森川さんはクラスでは地味な子に属しています)。
 教室に入ってきた夏目と森川は視線をあわせ、微笑みます。直接は声をかけないあたり、それぞれ違うグループに属しているがゆえの空気って感じが表れているようでいいですね。

 先生がやってきます。すこし暗い表情の森川。友人らとガチャを回していたっぽい相馬も、森川のほうから目をそむけているのがわかります。やっぱりお互い気まずいようです。泉は教室にいないためか、夏目は無表情。

 放課後。相馬は野球部の仲間と廊下を歩き、話題は受験へ。貼り紙には「大学」「短大」それぞれの進路がありますが、就職は見えません。相馬の父は亡くなっていましたから、団地住まいで、働き手は現状母親のみといったところでしょうか(祖父母はご健在です)。ふたりと別れたのち「いいよなあ、進学できるやつは先があって」と苦々しくこぼす相馬。彼には選択肢がなかったことが示されます。

 いっぽう夏目は日直の手伝いを終えたところで、クラスメイトから御守りをもらいます。ひとつは受験用、もうひとつは恋愛成就。「全然、よくないだろ、必死に受験を言い訳にしてさ」と泉の言葉がよみがえります。どっちつかずの状態でいた彼女にとっては、やはりキラーパスだったようです。とはいえ、これで泉に話すことを改めて決心するという動きがみられました。


 予行練習をしたのち、泉のいる自習室へ。ですが小宮と一緒にいるところを見て、思わず背を向けてしまいます(相馬への気持ちを小宮には話していないこともあるでしょうし)。といっても隠れるために職員用トイレに入れることができないあたり、彼女の間の悪さと不器用さは全力で加速していくいっぽうですね。結局、向こうにも気づかれている始末。いたたまれません。

 相馬のグローブを見つけたのち、帰宅する泉。「学校どうだった?」という母親の質問に対して、黙って部屋に入っています。第二話では「どうって、普通」と同じ母の言葉に答えていましたから、複雑な心境が対比され、かえって雄弁に語られています。そういえば二話のときではそのあと親から相馬の親(の仕事)の話題が振られていましたね。こちらも対比によって想起させる演出のようです。

 最初に比べて泉の部屋は整理されていますが、ダンボールがひとつ。唯一の心残りがそこにしまわれているという比喩にも見えます。なかに入っていたグローブには相馬と同様「ラスト一球まで!」とふたりの絆が沈黙のなか、これまた雄弁に語られています。

 日曜日。相馬は泉とともに野球場へ。職場の先輩たちが草野球をしています。負けているところでヒットを打ちます。「ナイスバッティング進藤さん!」「よーし、続けよイシイ!(声がないのでEDのクレジット表記がありません)」それを見た相馬は「なんか……結構マジなんですね」*2「じゃないと楽しくないだろ」。


 夏目と森川はタリーズで会話。窓がぐるぐるしています。ふたりの迷っている心情の表れでしょうか。森川の持つカップの中身も、円を描くように「こういうこと、はじめてだったから。とにかくびっくりして。咄嗟に返事してて……」と揺れています。「でも、いまは、ちゃんと考えて返事しないといけなかったんだろうなって思ってる」その言葉とともに揺れがおさまります。


 さらに引いたカット。すこしだけうずまきが薄まっています。森川の身辺が語られ、話すことで自分なりに感情を整理しつつあることがうかがえます(背景のぐるぐるが意図的だとするなら素晴らしい演出ですね)。
「相馬に言ってあげたら? もう一度、ちゃんと返事したいって」(…)「相馬くん、話聞いてくれるかな……」「そこは……わかんないけど」とお互いに自信なさげな様子。そしてぐるぐる*3。進路については考えているものの、相馬に対してはまだ迷いがある森川です。

 草野球で活躍し、職場のひとたちと打ち解けつつある相馬に対し、夏目とバッティングしてしまった泉。バスのなかは冬特有の空気といいますか、画面全体に薄くもやがかかり、窓も曇っています。謝る夏目。「あの日もごめん。関係ないは言いすぎたと思う」「余計なこと言ったのおれだし、ごめん」「悪気があったわけじゃないでしょ」「……まあ」「じゃあ、なんで?」と、どこか腹の探り合いのような会話がつづきますが、降車ボタンでいったん遮られます。夏目が去ったのち「気づいてんのか、気づいてないのか、いまのあれ、どっちだよ……」と、状況を見通せなかったのは泉くん。夏目さんはそこまで考えていないようでした。


■第六話 Restart

 前回の最後に告白の返事をする決心とともにLINEを送った森川ですが、相馬は返事ができずにいます。自習室(物理準備室のたらいが見えますね)では、泉が問題を解いているところに小宮がやってきます。閉じた赤本は推薦の決まっている上叡大学ではなく、翠山学院大学(字面からし青山学院大学がモデルでしょう)。OPをはさんだのち、夏目の第一志望であることが小宮から指摘されます。

 おかずを奪い、代わりにからあげをお返しする小宮。胃袋をつかみに来ていますね。さらに煮物も。料理が得意なようです。そこに相談にやってくる相馬。お近づきになっていると勘違いし、否定する泉。落ち着いたところでLINEの返信をしていないことを語ります。小宮が手にしているのはミルクティー伊藤園)。泉くんはノートで赤本を隠しています。泉くんですね。


「はっきり」させるため、グラウンドに出て一打席勝負を挑む泉。第二話と同様、それぞれの視線がマウンドに注がれていきます。バットを振る相馬を見て、消しゴムを取り出す夏目。やっぱり日常的に持ち歩いているようでした。夏目さんですね。
 立ち止まっている夏目の前を駆け抜けていく小宮。彼女はいつでもまっすぐです。「じゃあおれもはっきりさせる」と宣言する泉に、一瞬驚く小宮。これまでずっと三年生たちを(ファインダー越しに)観察しつづけていた彼女にも変化のきざしでしょうか。

 バットが球を弾く音。「ずいぶん飛んだ。ホームランってやつ?」「……いまのはファール」と夏目。もしかすると、彼女は相馬に近づきたくて野球のルールを憶えた可能性がありますね。ほんとうに夏目さんですね。


 ファールを打ちつづける相馬を見て、駆け出していく森川。走り方が運動が苦手な女子って感じですね(吹奏楽部は肺活量を増やすためランニングしているとかは野暮です)。彼女の姿は第二話で校内を走った相馬と好対照です。たどり着いた先には返したはずのトランペットが。進学を機に捨てようとしたものを、もう一度手に取ります。前回相馬が捨てていたグローブと相似形を描くような演出ですね。

 写真部の部室。泉を映した画像を見ながら「まっすぐばっかり投げるから……」とつぶやく小宮。どこかもやもやした表情です。第三話では「黙って変化球投げてくるやつ」だったわけで、本気で勝負に出ていた泉くんでした。

 相馬が告白に失敗した場所に、今度は夏目がやってきます。「前から言いたいことがあって……」と相馬に渡すのは、例の消しゴム。「代わりの返そうと思って。ずっと忘れてたっていうか……」という言葉から、おそらくはおなじメーカーのものを探して買い、けれど渡せずにまた買って……というのを中学のときからくり返し、ジンクスというか御守りのように使っては持ち歩いてきたことが察せられます。夏目さんはほんとうにどこまでも夏目さんですね。


「とにかく、そういうことだから」と言って去る夏目に対し、どういう状況がわからないものの隠れている森川。その後バスのなかで「もしかして夏目さん……」と概ね察したようです。そのタイミングで相馬からの「遅くなってごめん。もう一度話したい。」と返事。困る森川。

 二日後。あからさまに避けられている相馬。そして泉に対してわざと引いてみる小宮。そこに顧問がやってきます。「お前、なんで写真部にそんなこだわんの?」という言葉に一瞬びくりとします。「べつにいーじゃんなんでも。とにかく、そういうことだから!」と夏目とおなじ自己完結系の言葉を告げて去っていきます。こういう台詞の使いまわしは、鴨志田一先生らしいですね。


 ファミレスで単語のチェックをする夏目。単語を使った心情の反映は前にも出てきました。さっきのドヤ顔が目に浮かびます。クラスメイトは「告ったんじゃないの?」「えっ」「美緒の気持ちはお見通しなのさー」と鞄にくくられた御守りが映ります。恋愛成就。明日はセンター試験です。

 願書を提出しに行く泉。親には伝えていないようです。「御中」をちゃんと書くのが泉くんの律儀さをかもし出していますね(御中を書かないからといってはねつけらるかどうかはわかりませんが)。

 乾にフォローしてもらうかたちでようやく会った相馬と森川。この川辺は第三話とおなじところでしょうか(正確にはわかりませんが)。第二話で流れた「in unison」を吹く森川。全国的に統一されているのかはわかりませんが、高校野球ではバッターごとに応援楽曲が違うと聞いたことがあります。だとするなら、ふたりをつなげるのがこの曲といえなくもないですね(じっさい、この演奏をしている森川を見て惚れたわけですし)。ということでいったん和解です。

 そして最後は雪の降りはじめるなか、小宮を背負っている泉を偶然に発見し「なんで……」と間の悪さには定評のある夏目さんでお別れの時間です。また次回お会いしましょう。

アニメJust Because!を誤読する5 - ななめのための。

*1:アニメJust Because!を誤読する1 - ななめのための。

*2:もしバッターの名前が「石井」ならある意味、今回のサブタイトルにかかっている感じになります。

*3:こちらでも「石(意志)」が「転がって」いるという解釈ができたら面白いですね。