というわけで続きです。
第7話 おふねひきゆれて
おじょしさまが完成しました。オープニングです。
アイスをおごりたがる先生。「つーか先生、今日はアイスさみーよ、プールも中止になったんだぜ」前回に続いて寒さに関する発言が出ています。
「おふねひきしたい」という言葉がハモるまなかと紡。(思った以上に痛えや……)と深刻な光。特に気にしていない紡は「海も地上も総出でやってたころみたいなの、やれませんか」と本来のおふねひきをやりたいようです。しかし難しいのではないかと考える先生の発言で表情を曇らせるまなか。それに気づいた光は「やろう」。紡を鴛大師のまとめ役に、光が汐鹿生まとめ役に。うれしそうにまなかは「すごいね」。答える光。
「絶対叶えてやるよ、おふねひき」
「うん」
(……お前と紡と願いを)
サヤマートの前で署名運動。「なんかすごいね、光」「あいつ、なんであんなに」「もやもや晴らしの全力疾走ってとこじゃない」その言葉だけで表情が沈むのが比良平ちさきです。ちさきですね。あかりと至も協力してくれています。「なんか、地上に海のきみたちが手に手を取って……ってなんだか他人事に思えなくて」と至。鏡映しのように、ふたりの関係に光は紡とまなかを見ています。
しかし光の父、灯は「駄目だ」。集めた署名を見せた説得にも通じません。しまいには「俺に頼るのか?」「じゃあ協力なんか要らねえ!」。今回のつらいポイント、理解のない親描写です。
翌日。陸側である漁協のほうは話を受け入れてもらえたようです。光も父親の説得には失敗しましたが、青年会には話が通りました。「見てろ、やりとげてやる」とつぶやく光。静かに目をそらすちさき。ちさきですよ。
頑張っている光を見て違和感を持つまなか。「きっと変わろうとしてるんじゃないかな」とちさき。それを聞いて必死になるまなか。「変わるんだって決めて、ひたすら頑張ってる人を止めることなんか、きっと海神様だってできないよ」
鴛大師の漁協。話し合いの場。光の父もやってきます。友好的な雰囲気。「よし、じゃはじめてくれ」「え、もうはじまってますが」「違う、あんたらの謝罪を聞くって言っているんだよ」その言葉から因縁のつけ合いがはじまります。
仲裁しようとする光。しかし「ガキは黙ってろ」。ほんとうにこういう大人は見たくないですね。画面も暗い。あかりと至もやってきますが事態は収拾しません。腕で払われる光。おじょしさまが倒れ、首が折れてしまいます。「気が済んだか」よくこんな台詞が出てきますね。
喫茶トライアングル。灯とあかり。「海の人間と地上の人間は、どうしたって相容れねえんだ」といわれ、気づくあかり。
「ずっと、なんか違うって思ってたのよ。それがいま、はっきりわかった。あたしはね、あたしと至さんの話をしてるの。なのに、父さんはいつも、海と地上の話にすり替えてるんだ。昔、母さんに聞いたことがあるんだ。どうして父さんと結婚したのか。母さん言ってた。理由なんて簡単で、ただふつうに父さんのこと好きだから結婚したんだって。それ聞いて、あたしうれしかった。だから思わず聞いちゃったんだ。もし、父さんが陸の人だったら、って。そしたら母さん、笑ってたよ。それでも、きっと父さんと一緒になってたわよって」
「あたし、美海ちゃんの母親になります」と宣言。
シーンは変わって、荷物をまとめているあかり。「出ていくのか?」と光。「うん、ごめんね光」「謝んなくていい、俺も出ていくから」
揺らぎが大きくなる御霊火。「お世話になりました」とうろこ様に告げるあかり。海村を出ていこうとするふたりですが、うろこ様が邪魔をします。「やれるだけのことはせんとな」「守らねばならんのよ。あの方の裔(すえ)を」うろこ様にも役割や目的があるようです。あの方、というと最初に生贄になった女の人でしょうか(海神様ならそのまま海神様と呼ぶでしょうし)。とはいえ明確ではないですね。
鏡に映ったふたりを見て、耐えられなくなった灯がそれを止めるよう頭を下げます。「後生です。どうか」。妨害は止みますが「本当にいいのか?」
というわけで複雑な表情の灯でエンディングです。彼にも色々と思うところがあるのですが、それはまだわかりません。うろこ様の言葉もなにを意図したものかはわかりません。今回は話が進むというよりは頓挫し、逃避していくところが多かったようです。種は蒔いているようですが、見ているぶんにはストレスが多いところです。
とはいえ、光が他者の恋愛を積極的に取り持とうとしているのは大きな変化ともいえます。果たして光は恋のキューピッドになれるのか? ちさきは? ちさきは大丈夫なのか?(大丈夫ではない)閉塞的な話題に終始した今回ですが、次回は解放的になります。ほんとうに?(ほんとうに)
第8話 たゆたう想いのさき
前回のあと、地上に出てきたあかりと光。至と美海が迎えにきてオープニング。
至の家で夕食を摂る4人。光が使おうとした湯呑みはみをりのものだったようです。寝室で横になっている光と美海。台所で話すあかりと至。「あたしね、海に戻れなくてもいいの」というあかりに対し、「ちゃんと、結婚しよう」と答える至。3話で答えられなかったのがようやくここにきて言葉になりました。それを聞いている光と美海。
深夜。胞衣を塩水で濡らす光。「ママも、よくそうしてた」と美海。それから美海はあかりの結婚が反対されていたことに触れ、自分も上手く接することができなかったのを後悔します。アバンで迎えにきたとき、父の背に隠れようとしてしまったのはまだ向き合い切れていなかったということですね。それからプレゼントをしようと考えます。
翌朝。なぜか外に出ていた美海。まなか、ちさき、要と合流すると女子ふたりはおめかししているようです。「町って聞いたから……やっぱり……」「へ、変かな……」照れる光。数年ぶりのラブコメ描写に涙が止まらない*1。あったけぇな……。切符の値段がわからない光。あるあるですね。
電車に乗る6人。なにげない会話シーンですが、視線が語るものが多いですね。紡にうれしそうに反応するまなか。それを見て「頼りにしてっから」と光。そこから目をそらすちさき。無干渉の要。いまいちわかっていないのは美海です。
都市部へ。町の意匠が青いですね。ブルーを基調としたデザインは汐鹿生と鴛大師特有のものではなかったようです。この世界そのものの傾向なのかもしれませんね。胞衣を持つ人間のための水場などもあるそうです。ちょっとだけしゅんとした表情の美海。
アクセサリーを探す美海たち。エクスペンシブ。エレベーターでは人数が多く、光とちさきで別行動に。あかりの話からまなかの恋愛の話へ。「いつか、いつかまなかも」とこぼしたちさきに対し、「地上に行っちまうかもな」光。
「まだわかんないけど、もしそうなったらおれ、あいつを応援してやる」
「え? それってどうして? 光はいつだって、まなかを守ろうってあんなに頑張って」
「お、お前なに言ってんだよ」
「光、ずっと好きでしょ。まなかのこと」
爆弾が投下されましたね。ようやくラブコメっぽくなってきました。
先に店を物色している美海たち。しかしお目当てのものは見つかりません。紡を見ているまなか。「あいつのこと、まなかはどう思ってるの?」と要。
「紡くんはね、わたしに気づけないものが見えてるの。それがたくさんすごいなって、そう思う。うん、そう思ってる」
「そっか。まなか、はっきり言えるようになったね」
まなかの変化を要も言葉にしています。やはり紡との対話(6話)が契機になっていいるようです。
いっぽう、エレベーターで気まずい光とちさき。「あー、だっせ」と光。「でも俺、応援してやるって、諦めるって決めたから」
「でもいろんなまなか見てきて。あかりのこともあってさ。だったら俺はまなかのこと、笑顔にしてやりてえって、そう思った」
「でも、だからって、光の気持ちはなしにしなくてもいいと思う。光は、ずっと変わらないでいいじゃない。光が決めたことなら、わたしは応援したい。だけど、光はそのままでいいって思う」
こちらも6話からの積み重ねが生んでいる言葉ですね。変化する光。変わってほしくないちさき。「お前ってほんといいやつだな。ありがとな」と光。わかっていません。「違うよ」けれどもそこでつよがってみせるちさき。本心は語りません。
やはり貝殻のペンダントがほしい美海。小遣い前借り12か月ぶん。さすがに至も困惑します。「大好きな海の、貝殻のがいい」とこぼします。4話の「海が大好き」とつながっている台詞です。
町の雑貨店を探し回る美海たち。次の店に向かうところで光が倒れます。すぐさまペットボトルの水をかける美海。朝出ていたのは海の水を取ってくるためだったようです。「塩水あります」の看板のとき、ちょっと残念そうな顔をしたのもそういう理由からだったことがわかります。プレゼント探しを再開する6人。
しかし見つからず、帰りの電車。昔、魚の鱗をおじいさんにプレゼントしたことを紡が話します。
夜。帰りの遅い美海を心配するあかりと至。汚れた6人。手作りのペンダント。
「美海の好きをね、あかちゃんにあげたくて」と美海。5話のときもそうでしたが、自分の好きを相手に伝えることが彼女のほんとうにしたいこと、素の部分なのでしょう。また美海の言葉は6話での紡の台詞とも重なっています。おじいさんにプレゼントをした理由としても読めますね*2。そして、好きという感情とどう向き合っていくか、とは『凪のあすから』のテーマでもあります。
騒ぐ6人を見て、「わたし、ちゃんとしたい。一緒にいるだけじゃない。ちゃんと」
とあかり。今回の話の序盤で触れられた「ちゃんと、結婚しよう」にかかっています。こちらも好きという感情に対してどう向き合うかの回答のひとつです。反対に回答の出せていないちさきは、それを聞いて表情が曇ります。ほんとうに曇るのが似合う子ですね。現状維持とは好きという感情に向き合わないことでもあります。
そして雪が降り出してエンディングです。ぬくみ雪。雪が降ってうれしい*3。夏に雪が降るアニメは傑作*4。端的にいって異常と思える状況なのですが、美海がはしゃいでること、幻想的な雰囲気になっていることであまりそれを感じさせないのがいいですね。
さて、今回はそれぞれのキャラクターが好きとどう向き合っていくかを描いた話でした。光は変わるし、まなかも変わりつつある。 まただれかに特別な好意を向けていないかのように見える紡もおじいちゃんにプレゼントしたことが語られました。こうしてだれもが好きに絡んでいくのが『凪のあすから』です。
これから物語はどんどん彼/彼女らを取り巻く世界≒セカイ*5に向かって動き出します。何が起こっていくのかを見届けていきましょう。
続く。