アニメJust Because!を誤読する2

ななめのための。
前回に引きつづき、個人的に気づいたり、読み違えたりしていきたいと思います。今回は第二話、第三話です。



■第二話 Question


 前回の「夏目いんぞ」からの過去回想。階段を駆け下りていくも、ため息をついてしまう中学生の夏目。それをながめている泉。ふたりともすこしだけ頬を赤くしています。どうやらもうこのころから泉は夏目に懸想していたようです。夏目の視線の先には、女子(マネージャーでしょうか?)と相馬。

「うちの部なんか用?」とぶっきらぼうに呼びかける泉。「見てたから」「見てたの!?」と動揺する夏目。「違うから、なんでもないから!」その焦る姿に対し、相手には見せないものの、どこか不機嫌な表情になってしまう泉。その背中に夏目は「泉っ!言ったら、半殺しだから」と笑顔。回想終了。「半殺しはないよなあ」とこぼす泉。いまでも憶えていることが明かされます。


 北川勝利氏作曲(←優勝)のOPがはじめて挿入されます。湘南モノレール湘南深沢駅だそうです)のホーム。最初は四人。そして泉が入って五人。それぞれの視線の先が前後で変わっていますね。森川がだれも見ていないのがアレです(もしかしたら、ひとりだけ関西へ進学することがのちに語られますので、そういったことを示唆しているのかもしれませんが)。小宮はいちばん後ろに座り込み、だれともつながりを見せていないせいか、どこか孤独な印象を与えます。これからの彼/彼女たちの関係が変化していくことを予期しているかのようです。

 OPが終わり、本編へ。「今なら言える!」と告白を決意した相馬が走っていきます。すれ違う夏目。音楽室へ。「森川は」と訊ね、いないことを確認してからまた走り出していきます。森川、とちゃんと相馬が目的を持って口に出したのはこれがはじめてですね(前回は何気ない会話でした)。

 外。「泉」と呼ぶ夏目。「久しぶり。てか、なんでいるの?」「……どうも」と返事。泉はまだ彼女を夏目とわかっていないようです。樹がそのあいだに描かれているのは、まだふたりの認識が一致していないからでしょうか。


 そこに駆けつけた相馬が森川を見つけ、呼びかけます。「だから急いでたんだ」とため息。さきほどのすれ違った理由を察したようです。それを見た泉は目を見開き、「……夏目」とようやく気づきます。視線の先を追うとそこには相馬が。OP前にあった回想のリフレインにもなっています。

「俺さ、なんつーか、その」「うん」「森川に、言いたいことあるっつーか」からの「俺、明日ヒマなんだ!」と告白は失敗に終わります。

 明日の予定を訊ねられ、すこし困った様子の森川が泉と夏目のふたりに気がつきます。相馬に気づかれたことで、一瞬びくりとして、思わず顔を伏せてしまう夏目。とてもいじらしいですね。


 森川を見つけた乾がそこにやってきます。「なに、なんかあった?」といったん引いたカット。そのあと映像は切り替わり、写真部の部室へ。男子部員ふたりが帰ったのちも、小宮はひとり暗がりのなかで撮影した写真のチェックをしています。さきほどのにぎやかな五人とは対照的です。小宮≒観察者、といったところでしょうか。

 それぞれの日常風景へ。建物や家具などから家庭の様子がうかがえます。森川妹の言葉によれば「イブのイブなんだよ!」とのこと。察するに明日は12月23日です。弟たちがやってきます。「水族館いいなー」と持っているのはサメの人形。

 明けて23日。「行ってきます!」夏目の部屋にはたくさんの服が。お出かけあるあるです。お化粧だけでなく、マフラーや手袋、鞄まで。かなりコーデを悩んでいたことがうかがえます。彼女はほんとうにいじらしいですね。

 映像は切り替わって、泉と相馬のふたり。「そういや今日ってさ、急な用事で来られなくなかったほうがよかったやつ?」「ふつーに来ていいやつだよ。いきなりふたりは緊張すんべ」そののち、泉は筋肉痛で腕が上がらないことが示されます。運動はかなりしていなかったようですね。話題は森川について。「トランペット吹くの見てたら、気になって」そういうものですよね。

 みんなで水族館へ。森川ツインズもいっしょに。昨夜の描写でもあったサメの話でツインズとは会話できるようになったものの、目当ての森川にはなかなか近づくことができずにいる相馬。それを見て「なにやってんだか……」とつぶやいてしまう夏目。

 そういうわけで見ていられない夏目は「写真撮らない?」と助け船を出してあげます。この社会的口実で外堀埋めちゃおう作戦によって、ふたりは物理的にも距離が近づいたようです。写真を撮る前と後、両方とも夏目から見えている風景というのが殺しにきています。加えてツーショットをわざわざ隠れて撮ってあげている夏目(きっとあとで送ってあげるのでしょう)。
 好きなひとが喜ぶならとりあえずなにかしてあげたくなってしまう健気さといいますか不器用さいいますか。後ろでは泉が夏目から視線をそらして「なにやってんだか……」。さすがに彼も見るのがつらいレベルのいじらしさです(といっても夏目から向けられたシングルショットに顔をそむけているっぽい泉くんも泉くんですが)。


 そのあとスマホを見た夏目は「やばっ」といい、泉の後ろに隠れます。夏目は泉の手を引いて、はぐれるようにクラゲゾーンへ(新江ノ島水族館では屈指のデートスポットですね、泉くんに50のダメージです)。「最近わたし、受験で遊びの誘い、全部断ってるから」と、どうやら彼氏と遊びに来ていたクラスメイトとはちあわせするのを避けたかったようです。「昨日もカラオケ断ったし……」と彼女は人間関係を気にするタイプのようです。不器用ともいいますか、クラスではそういう立ち位置なのでしょう。


 そこから泉の受験先について。「推薦もらってる」「……どこ?」「上叡大学」。のちのちの話から推測できますが、おそらくモデルは上智大学でしょう。
 合流を促すメッセージが届くも「せっかく、森川さんと一緒なんだし」(…)「泉は行けば?」「いいよ、筋肉痛だし」からの夏目「なにそれ、関係ないじゃん」と皮肉っぽい笑顔です(せっかく夏目さんと一緒になれた泉くんに100のダメージですね、自分なら胃がよじれて死んでいるところです)。

 ようやく外に出て合流。ライトアップされたシーキャンドルをスマホで写真に撮っています。「LINEに送ればいっか」「おれ、瑛太のしか知らないけど……」とこぼす相馬に「じゃあ、交換しよ」と夏目が提案します。ここでも助け船が出航していますね、どこまでも夏目さんはいじらしいですね(その様子を横で見ているっぽい泉くんもほんとうに泉くんですね)。「えのすい」のLINEグループがつくられたことで、ようやく全員がまとまった印象です。


 それぞれの帰宅風景へ。「昔の話だよな……」とつぶやく泉。冒頭の回想をまたひとりでしているようです。夏目からの個別LINE。相変わらず物騒な発言ですが、でもそういうのやぶさかではない感じが泉くんですね。そこに「っしゃー! なぞの転校生!(🄫眉村卓)」と小宮が泉を発見し「……人違いです」といったところで、2話はおしまいです。



■第三話 Andante
サブタイトルは音楽でよく使われている「歩くような速さで」ですね。

 鎌倉の風景を撮っているも、なかなか思うようにいかない小宮が泉をスーパー前で見つけたところで三話の開始です。これまで登場していなかったぶんを補うかのようにひたすら自分の都合を伝えている感じが相手を気にせず自分の目的一直線な性格をよく表しています。背負っている鞄はアネロっぽいですね、ここ数年で人気になったデザインです。

 夏目の部屋。小宮からの着信で、相馬の名前が出た瞬間に警戒モードに入るの面白いですね(そして写真部廃部阻止が理由だとわかり弛緩する)。手には相変わらず消しゴム。「いいなあ……一生懸命で」小宮に比べて、目標を見出せない自分に悩んでいるようです。


 コンビニでサメの食玩をチェックする相馬。いっぽう森川家では洗濯物を干しているところ。ハンマーヘッドシャークマン。森川ツインズの好物を憶えている相馬のマメさがうかがえます。


 乾が森川家を訪れます。階段にまとめて縛られている楽譜に怪訝な表情。「この楽譜いいの」「もう使わないから」森川が推薦をとった大学には、吹奏楽部はないとのこと。壁には賞状を持った森川の写真。中心にいるから部長だったようです。森川の周囲には女子、男子たちは比較的外側にいるというのが(部内の力関係が伝わってきて)いいですね。

 進路の話はつづきますが、いったん俯瞰からのカットが入ります。乾は陸上をつづける。一話の廊下の会話が改めて整理されていますね。壁にはトランペットのポスター、コンポ、メトロノーム。カバーがかけられているのは椅子の形状からして電子ピアノでしょうか。彼女が音楽に囲まれて育ってきたのがわかります。夏目の部屋は整理されていましたがこれといった特徴はないことや、相馬の家が団地で父が亡くなっていること、泉の部屋がまだ開けられていないダンボールばかりであること(積み重ねてきたものがなにもないこと)、小宮の部屋は描かれず、散らかった部室が出てくるのみ(男子部員によって支えられている場所のようです)など、今回は各キャラクターのバックグラウンドが部屋や小物などで説明される回のようです。

 車のバック音が外から聞こえます。さらに空からの俯瞰カット。荷物の運びおろしをしているようです。ツインズが外に出ているので、両親でしょうか(正確にはわかりません)。「わたしは、いずれ、家の仕事を手伝うことになるから」と、これまでの生活や打ち込んできたものを、進学とともに捨てようとしている彼女の考えが伝えられています。

 コンビニで合流したのち、散歩する泉と相馬。地域の野球場が見えてきます。フェンスに近づきながら「懐かしいな、ここ」(…)「陽斗の大暴投、拾いに行くの大変だった」「黙って変化球投げてくるやつに言われたくねえ」「あのころからそうだったな、お前」と話しています。中学時代は校庭で部活動をしていたようですし、もしかしたらふたりは少年野球でチームだったのかもしれませんね(もしくは休日に練習をしてたのかもしれません、どちらにせよ仲の良いふたりです)。
「陽斗は? 就職してなにすんの」「あれ、おれが働くとこ」遠くに見える職場は工場のようです。いっぽう泉は「一般推薦で早めに受験終わらせたかっただけ」「よくわかんねーけど、ガリ勉か?」「向こうじゃ部活やらなかったし、バイトもしてなかったし、勉強くらいできないと、ナメられるし……」となにかに打ち込むことがなかったことが語られます。


 彼らのバックボーンがだいたい説明されたのち、いったん雨がやみます。同時に夏目からのLINE。「そっちは進展してんのか」と相馬が軽い調子で言います。これまでつづいてきた俯瞰カットではなく上向きに。晴れた空。ふたりの頭上をモノレールが走り抜けていくのは「進展」とパラレルになっている描写でしょうか(この考えについてはあまり自信がありませんが)。そしてふたりはそれぞれの道へと分かれていきます。


 ファミレスで写真の応募を依頼する小宮。泉と夏目のかみあった会話に「ふたりってつきあってんの?」「つきあってません」(顔をすこし伏せる泉くんに200のダメージです)。苦々しい表情をする泉を見た小宮は「ふーん」とどうやらこの瞬間に色々と察したようです。写真部なだけあって観察眼がある彼女は、受験や卒業を控えた三年組に対して二年生ですし、一歩引いて状況を見ているキャラクターのようです。

冒頭とおなじく泉を小宮が見つけたスーパー前。犬の苦手を克服したいので手伝ってほしいという相馬を助ける方法に困る泉。そこに小宮が登場します。午前中もそこから夏目に連絡していたようですし、おそらく帰宅ルートと考えて待ち伏せしていたのでしょう。

 自習室の夏目「人の気もしらないで……」とため息。「わたしなにやってんだろう……」と消しゴムとノートが映ります。ノートに書かれた英語は「I'll see you sometime」「Time flies like an arrow」「be sensitive to」「naive」と大学受験にしてはちょっと初歩レベルな英語ですが、彼女の内面を代弁していますね。ペンと消しゴムに隠れている訳は「走」「経営」「(立?)候補する」と思われますから、おそらくは「run」でしょう。というわけで立ち止まっている夏目さんでエンディングです。



 需要があるのかどうかまったくわかりませんが、今後も読み違えていきたいと思います。


アニメJust Because!を誤読する3 - ななめのための。