雑記

タイトルのレトリックはいかに密造されたか

downyの好きなアルバムは、と訊かれたら『無題』と答えるのが無難ですね。というわけで、昨年末に読み散らした『タイトルとの魔力』という本がなかなか考えさせる内容に思えたので、メモ代わりにつらつらと書いていきたいと思います。タイトルの魔力―作品・…

摂取(に失敗した)記録

今年も残すところわずかばかりとなりましたが、すこしずつちいさな感覚をなくしてしまったことを、酢昆布のようにかみしめていきたいと思います。あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)作者: テッド・チャン,公手成幸,浅倉久志,古沢嘉通,嶋田洋一出版社/メー…

アニメJust Because!を誤読する5

今回も誤りつづけていきたいと思います。よろしくお願いします。ようやく折り返してからの7、8話です。彼/彼女らのこじらせはとどまるところを知りません。 [Blu-ray]" title="Just Because! 第4巻 [Blu-ray]">Just Because! 第4巻 [Blu-ray]出版社/メー…

アニメJust Because!を誤読する4

引きつづき、また過ちをおかしていきたいと思います。今回は第五話、第六話。年を越して、みんな気まずい雰囲気からのスタートです。頑張るぞい。 [Blu-ray]" title="Just Because! 第3巻 [Blu-ray]">Just Because! 第3巻 [Blu-ray]出版社/メーカー: NBCユニ…

アニメJust Because!を誤読する3

それでは前回に引きつづいて、読み違えていきたいと思います。今回は物語がゆっくりと動き出す第四話です。ブン回していきましょう。 [Blu-ray]" title="Just Because! 第2巻 [Blu-ray]">Just Because! 第2巻 [Blu-ray]出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エ…

アニメJust Because!を誤読する2

[Blu-ray]" title="Just Because! 第1巻 [Blu-ray]">Just Because! 第1巻 [Blu-ray]出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン発売日: 2017/12/22メディア: Blu-rayこの商品を含むブログ (7件) を見るななめのための。 前回に引きつづき…

アニメJust Because!を誤読する1

TVアニメ『Just Because!』は現在絶賛放送中、脚本・構成をライトノベル作家の鴨志田一、キャラクターデザインを比村奇石が担当する作品です。原作者による小説版(メインキャラクターのふたりを視点としたもの)も発売されており「あいつを好きな君の横顔が…

どんぐりを拾うように、

この一年ほど、須賀敦子の文章に手を伸ばしていることが多くなった。 作家としての須賀敦子をはじめて意識したのは、kindleのセールで割引されていたときだったと記憶している。内容紹介を見てなぜか書評集と勘違いし、そのため肩肘の張っていないタイトルと…

推理小説に内面化された世界の終わり、ドン・キホーテの憂鬱

※このブログ記事は、二〇一七年、某所にておこなわれた読書会のレジュメを改稿したものです。ヒーロー!作者: 白岩玄出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/03/16メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 白岩玄という作家をご存知だろうか。…

TVアニメ『アイカツ!』入門講義:第0夜

そこは小さな、といっても、大学生がふだん授業を受けるために使われるのに比べては、という意味でだが、狭い部屋だった。 場所は半地下といった趣で、地上階と同じ高さに顔を出している磨り硝子の窓からは、うすぼんやりとした光が差し込んでいる。白、とい…

寂しいネットで拾遺する―ミステリ漫画落ち穂拾い―

ミステリマガジン2017年7月号*1の特集のミステリ漫画50選があまりにも選出意図がわからず書店で戸惑ってしまった(『最終兵器彼女』や『ガンスリンガーガール』を紹介するのはちょっといかがなものかと思った)ので、自分の本棚から目についたミステリの漫画…

2016年度殺し文句大賞授賞式

「ほんとうの言葉は、いったん空になった船を見つけて、もう一度借りたときに生まれるのだ。」と『その姿の消し方』でつづったのは堀江敏幸であるのだけれど、自分はそのようなことばとの関わりを結べていないどころか、須賀敦子のように一トンもの塩をなめ…

ある労働と背表紙の話

唐突ではあるけれど、自分にはおよそ一年間にわたって、大型書店のいちアルバイターとして仕事をさせていただいた経験がある。もちろん比較的責任のすくないアルバイト戦士*1とはいえ労働であることに変わりはなく、作業がルーチン化していくにつれて自然と…

告知です。

2017年1月22日に「京都市勧業館みやこめっせ」にておこなわれる第1回文学フリマ京都に参加します。 サークル名は「関西ミステリ連合OB会」。 場所は「あ-13〜14」。頒布する冊子は以下の通りとなります。 自分は先日アップロードしました、認知…

続・認知物語論からミステリを考える

認知物語論から推理小説の探偵を考えてみる - ななめのための。のつづきです。というより自分がここ数年考えてきたことをとりあえずまとめてみないか、という打診をいただきましたので、とりあえず書いてみました。 上記のリンクの部分もまとめていますので…

認知物語論から推理小説の探偵を考えてみる

たまたま図書館で見つけた本がなかなか興味ぶかい内容だったので自分なりにまとめつつ、書いていきたいと思います。残念ながら自分は専門家ではないので、タームの使い方には間違いがある可能性がある点は留意していただけるとありがたいです。認知物語論キ…

リアル脱出ゲームと本格ミステリは相性が悪いのかについて思ったこと

きっかけは、もう二か月ほど前になりますが、ミステリ研のOB会にてリアル脱出ゲームの問題を試しにやってみたことです。挑戦したのは、「ある飛行機からの脱出」と「ある使徒からの脱出」。両方とも脱出ならず。5人が挑戦し、だいたい7割くらい回答してタ…

映画『永い言い訳』”The Long Excuse”(ネタバレ)感想メモなど

先日『映画 聲の形』を観、バケモノじみたカットの連続に打ちのめされてからというもの、ひと月ちかく劇場に足を運べなかったのですが、いい加減リハビリをしなくてはと思い。 映画 聲の形 オリジナル・サウンドトラック a shape of light[形態A]アーティス…

ポメラDM100を買いました

7月末ごろに長年使っていたPCがクラッシュしてしまったので、ポメラを買ってぽちぽち原稿を書くことにしています。なのでだいたいひと月くらい使用しています。この文章は買い換えた新しいPC(タワー本体のみ壊れたのでモニタは流用)で書いていますが。キン…

由々しき事態は死を数えろ

ゆゆ式 (1) (まんがタイムKRコミックス)作者: 三上小又出版社/メーカー: 芳文社発売日: 2009/03/26メディア: コミック購入: 5人 クリック: 62回この商品を含むブログ (95件) を見る『ゆゆ式』は『まんがタイムきらら』にて連載されている、三上小又による情…

e-novels評論作品がKindle化しつつあることについて

今更感どころか、多くの読者が忘れきっていたe-novels*1の作品が最近になって活発にKindle化している。理由は皆目わからない。 正直なところ、小説作品についてはある程度が書籍になっているため、わざわざ短編単位でダウンロードして読む必要があるとは思え…

「盗まれた手紙」をさがしています

だいぶ前に引っ越しをしていたのですが、ようやく最近になって身辺が落ち着き(ダンボール箱に入ったままの本たちの処理がある程度終わり)、読みたいテーマに沿って本を比較的手に取れるようになってきたので再開します。黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編…

『エンダーのゲーム』と歪なジュブナイル的物語

エンダーのゲーム (ハヤカワ文庫 SF (746))作者: オースン・スコット・カード,Orson Scott Card,野口幸夫出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1987/11/01メディア: 文庫購入: 12人 クリック: 168回この商品を含むブログ (148件) を見る たとえシスの暗黒卿ダー…

『最後の一撃』あるいは最後から二番目の一撃

注意:エラリイ・クイーン『最後の一撃』の真相に一部触れている部分があります。 摂取記録は月イチだと書かなくなることがわかったので、今後は読み次第、ちまちま書いていくことにします。最後の一撃 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-14)作者: エラリイ・クイー…

道尾秀介「モルグ街の奇術」の記述についての研究

注意:道尾秀介「モルグ街の奇術」、エドガー・アラン・ポー「モルグ街の殺人」の真相に一部触れている部分があります。花と流れ星 (幻冬舎文庫)作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2012/04/12メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ …

伏線回収と認知のあり方とか初期クイーン作品のロジックが嫌われる理由とかいまいちよくわからない印象論が先行する理由とかを考える

鮮やかなロジックなどと言われるときに想像されるのはエラリー・クイーンの国名シリーズなのだけれど、実際本格ミステリを読んでいて、論理の運用それ自体に鮮やかさを感じられるかといえば微妙なところなのではないかと思うときがある。なぜなら論理は突き…

河添太一『謎解きドリル』問題解説

注意:以下の作品のネタバレがあります。 謎解きドリル(1) (ガンガンコミックスONLINE)作者: 河添太一出版社/メーカー: スクウェア・エニックス発売日: 2014/09/22メディア: コミックこの商品を含むブログを見る謎解きドリル(2) (ガンガンコミックスONLINE)…

Beyond the Brilliant Future! について思ったこと

『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』が傑作であったということは先月の摂取記録にも書いたが、ネットで調べてみるとキャラクターについての感想や言及は多いものの、細かい演出についてはあまりほかの人が言及していないように感じた。ので、全体の…

土曜日の夜は寝つけない

小森収『土曜日の子ども』を読んだのはもう数ケ月も前のことで、それについての感想は前に書いたのだけれど*1、どうやら自分の思っている感想とは違う見方が大半だったことを最近よく実感している。ただ人と話していくつか意見を共有していくうちに、そうし…

SOW小説と叙述トリック

以下の文章は、叙述トリックとSF小説は似ているか、ミステリにSF的な面白さを導入できないか、という浅知恵に基づいて書いたものです。 けっして体系的に読めているわけではないものの、ミステリはその構造上、登場人物の整理をしてからでないと事件を起こし…